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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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3年ぶり、山鉾巡行

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 ■3年ぶり、山鉾巡行



869(貞観11)年から1150年続く祇園祭。

疫病退散を祈って始まったが、コロナという疫病のため山鉾巡行を2年休み。

3年ぶりに晴れやかに戻りました。

おかえりやす。

前祭の巡行から後祭の巡行まで続きます。

エンヤラヤー




山鉾は動く美術館と呼ばれます。

気になる美術品、見ていきましょ。

岩戸山。

屋根裏の金地著彩草花図。

明治の四条派日本画家、今尾景年作。

ウチの掛け軸も景年さんのもんでしてな。




先頭を行く長刀鉾と放下鉾。

千年の歴史で中断したんは、応仁の乱と太平洋戦争。

明治にコレラで3回延期したけど、中止はしたはりません。

深刻やったでしょう、ようふんばりました。

コロナで2回休み。世間の圧力が強なってるんですかね。

史上どう評価されますかね。




函谷鉾。

16世紀のベルギー産タペストリー(重要文化財)

やら目立つもん多いんですけど、

これもやはり軒裏の鶏鴉図。

今尾景年作です。




占出山としんがりの船鉾。

町ごとに山鉾があって、町ごとの自治組織が繰り出す。

神事というより、町衆の祭り。

参加型ですがな。

お上がどうあれ政治がどうあれ千年続いてきたんは、

民のサステナブルパワーどす。




月鉾。

一番重い。

屋根裏の金地彩色草花。

円山応挙。京都画壇の祖。

前懸、胴懸はインドやトルコの絨毯。




綾傘鉾と四条傘鉾。

宵山も巡行も動けへん人いきれ。

中村登監督「古都」も昭和の賑わう祭を描いてました。

ぼくが学生のころも祭り中このへんの喫茶店は時給3倍でした。

でも来年、落ち着いたらインバウンドさん戻ってきます。

こないして見られるん、最後かもしれんで。




孟宗山。

白地墨画竹林図。

竹内栖鳳。京都画壇の代表。

砂漠らくだ行。

平山郁夫。





霰天神山と山伏山。

テレビで何チャンネルもライブ中継してました。

けど伝えられないのは、音。

コンチキチンやエンヤラヤー。

だけでない、重たい山鉾の木車や縄が奏でるギシギシ。

運ぶ男衆の怒鳴り声。

アブラゼミもじゃあじゃあ騒がしおす。

汗みずく、リアルのライブだけの特典。




芦刈山。

獅子の凝視。

山口華楊。京都の日本画家。

胴懸の燕子花図は

尾形光琳原画。呉服屋の次男坊。





郭巨山と月鉾。

前懸、胴懸、見送。

山鉾を飾る品々は、ペルシャや中国、インドにトルコ、

京都が先端国際都市であり続けたことを誇示します。

けど明治以降、竹内栖鳳、山口華楊、今尾景年ら京都の画家のものも目立ちます。

クールジャパン。

いずれピカチュウやけいおん!

任天堂や京アニが登場しはるかもね。





蟷螂山。

ウチの町内の鉾がこれですねん。

友禅の上に乗ったカマキリが動きます。唯一の「からくり」です。

テクノロジーを見せたかったんですな。

Art & Tech.

この先導する上下衆、くじ外れて入れませんでした。

来年は狙うど!





菊水鉾。

祇園祭が始まったころ、都は全国66の駅使から馬で情報を得ていたそうです。

平安も情報社会やったんですな。

千年ごしのこのイベントの意味を世界に向けてうまいこと発信したいもんです。




ファッションにもご注目を。

上下の旦那衆に稚児さん。

年配の御婦人方が自然にまとうて道を往くとりどりの絽も美術工芸品。

よろしおすなぁ。





さて。

後祭の山鉾巡行は御池通から動きます。

役行者山、黒主山、しんがりは大船鉾。




今年のスターは鷹山。

応仁の乱以前より巡行してたんが、文政9年の大風雨で大破、それが196年ぶりに復帰です。

宵々山、宵山と三条新町にコンコンチキチンが鳴り響き、巡行では一番の人だかりでした。




北観音山。

1718世紀のインド絨毯、19世紀のペルシャ絨毯、そしてトルキスタン絨毯なんですと。




南観音山。

下水引は加山又造の「飛天奏楽」、見送も加山又造「龍王渡海図」。




鯉山。

16世紀のベルギー毛綴を裁断したもので、重要文化財。

左甚五郎作の大きな鯉もいてます。





八幡山。

朱塗鳥居の上に、小さいですけど、左甚五郎作の木彫胡粉彩色の鳩がいてます。

ウチの近所、六角新町界隈の玄関には、その鳩2羽が下がったはります。




浄妙山。

胴懸には長谷川等伯「柳橋水車図」。

後懸は長谷川等伯「楓図」。




役行者山と鈴鹿山。

男衆のエンヤラヤーもコンコンチキチンもよろしいが、宵山に女の子たちが御神体のそばで歌てくれる「おまもりはこれよりでます」わらべうたも耳によろし。






後祭(あとまつり)が済んで、まつりのあと。

 もう帰ろう、もう帰ってしまおう。

拓郎はそう歌たけど、近所なんで、そうでものうて、

 もう笑おう、もう笑ってしまおう。

のほうが合うてるかな。







祇園祭のあいだは、界隈の旧家がこないしてお宝を道から見えるようにしててくれはる。

動かへん美術館でもあります。

町ぜんたいが美術品を持ってて、年に一回ちょろっと出さはる。

都でんな。

おおきに、ありがとうございました。

また来年。何があってもやっとくれやっしゃ。


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