■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」19/27
(3)「機動戦士ガンダム」~兵器としてのモビルスーツ
正確に言えば、ガンダムはロボットではない。操縦席に人間が乗り込み操縦する“モビルスーツ(MS)”である。
元々ロボットはテレビアニメにおける人気ジャンルで、「鉄腕アトム」に次いで国産連続テレビアニメシリーズの2番目の作品として放送された「鉄人28号」は、リモコン操縦の大型ロボットだった。両作品の後もロボットものアニメの制作は続き、1972年に放送を開始した「マジンガーZ」で、ダイキャストを素材とした「超合金ロボット」が商品化されると、「超合金ブーム」が起こり、これ以後、玩具会社をメインスポンサーとしたロボットアニメが大量に制作される。
「機動戦士ガンダム」は、そうした玩具会社が提供するロボットアニメのひとつとして企画が開始された。しかし、主人公の人間的、社会的成長に軸を置き、戦争を背景とした人間ドラマを描くとともに、ロボットではなくモビルスーツという兵器として扱った設定がティーンエージャーを中心に幅広い共感を呼んだ。初回シリーズこそ予定話数を消化することなく打ち切られたが、再放送や映画化により人気を拡大し、2015年までに17作のテレビシリーズと14作の劇場用映画や14作のOVAが制作されるなど、日本を代表するアニメシリーズのひとつとなっている。
ガンダムのような大型のモビルスーツ(MS)あるいはロボットの必然性に関しては、これまでも様々な場所で語られてきたが、その多くが否定的意見である。もともと作中でも大型のMSによる戦闘の必然性を担保するために、“ミノフスキー粒子”というレーダーが機能しなくなる架空物質が設定されており、他にも安定性、操作性、大型ロボットの二足歩行への疑問、素材などの面からその必要性は否定され続けてきた。
一方で、ガンダムを思わせる装着型のパワードスーツの開発がここ数年話題を集めている。サイバーダイン社は、生体電位信号を感知して装着者の動きを補助するHALを開発し、レンタルによる実用を開始している。スケルトニクス社が開発した動作拡大型スーツスケルトニクスは高さ2.5m、腕を広げた幅は3.5mの大きさで、ガンダムやエヴァンゲリオンを思わせるデザインだ。同社は変形して自動車のように移動できる形態になる動作可変型スーツの研究も進めている。アクティブリンク社が開発するパワーローダーは、装着型のパワードスーツで、重量物の運搬のような高負荷の作業をアシストするとして実用化を目指している。
さらに本家のガンダムにも新しい動きが始まっている。2009年に東京お台場に18メートルの実物大立像が設置されたが、現在では18メートル実物大ガンダムを動かすことを目的とした“ガンダムGLOBALCHALLENGE”というプロジェクトが始まっている。ガンダムシリーズを制作するサンライズを中心として設立された一般社団法人が主催しており、2019年に動かすことを目標に、世界中から幅広くアイデアを募集し、さまざまな意見や智慧、技術を取り入れながらプロジェクトが進められていく予定である。
18メートルの実物大ガンダムが動くには、技術の開発の他に様々な規制緩和が必要との話も聞くが、動く姿が見られることを期待したい。
(3)「機動戦士ガンダム」~兵器としてのモビルスーツ
正確に言えば、ガンダムはロボットではない。操縦席に人間が乗り込み操縦する“モビルスーツ(MS)”である。
元々ロボットはテレビアニメにおける人気ジャンルで、「鉄腕アトム」に次いで国産連続テレビアニメシリーズの2番目の作品として放送された「鉄人28号」は、リモコン操縦の大型ロボットだった。両作品の後もロボットものアニメの制作は続き、1972年に放送を開始した「マジンガーZ」で、ダイキャストを素材とした「超合金ロボット」が商品化されると、「超合金ブーム」が起こり、これ以後、玩具会社をメインスポンサーとしたロボットアニメが大量に制作される。
「機動戦士ガンダム」は、そうした玩具会社が提供するロボットアニメのひとつとして企画が開始された。しかし、主人公の人間的、社会的成長に軸を置き、戦争を背景とした人間ドラマを描くとともに、ロボットではなくモビルスーツという兵器として扱った設定がティーンエージャーを中心に幅広い共感を呼んだ。初回シリーズこそ予定話数を消化することなく打ち切られたが、再放送や映画化により人気を拡大し、2015年までに17作のテレビシリーズと14作の劇場用映画や14作のOVAが制作されるなど、日本を代表するアニメシリーズのひとつとなっている。
ガンダムのような大型のモビルスーツ(MS)あるいはロボットの必然性に関しては、これまでも様々な場所で語られてきたが、その多くが否定的意見である。もともと作中でも大型のMSによる戦闘の必然性を担保するために、“ミノフスキー粒子”というレーダーが機能しなくなる架空物質が設定されており、他にも安定性、操作性、大型ロボットの二足歩行への疑問、素材などの面からその必要性は否定され続けてきた。
一方で、ガンダムを思わせる装着型のパワードスーツの開発がここ数年話題を集めている。サイバーダイン社は、生体電位信号を感知して装着者の動きを補助するHALを開発し、レンタルによる実用を開始している。スケルトニクス社が開発した動作拡大型スーツスケルトニクスは高さ2.5m、腕を広げた幅は3.5mの大きさで、ガンダムやエヴァンゲリオンを思わせるデザインだ。同社は変形して自動車のように移動できる形態になる動作可変型スーツの研究も進めている。アクティブリンク社が開発するパワーローダーは、装着型のパワードスーツで、重量物の運搬のような高負荷の作業をアシストするとして実用化を目指している。
さらに本家のガンダムにも新しい動きが始まっている。2009年に東京お台場に18メートルの実物大立像が設置されたが、現在では18メートル実物大ガンダムを動かすことを目的とした“ガンダムGLOBALCHALLENGE”というプロジェクトが始まっている。ガンダムシリーズを制作するサンライズを中心として設立された一般社団法人が主催しており、2019年に動かすことを目標に、世界中から幅広くアイデアを募集し、さまざまな意見や智慧、技術を取り入れながらプロジェクトが進められていく予定である。
18メートルの実物大ガンダムが動くには、技術の開発の他に様々な規制緩和が必要との話も聞くが、動く姿が見られることを期待したい。