■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」18/27
(2)「ドラえもん」~大切な友達
22世紀の世界からやってきたネコ型ロボットのドラえもんが生まれたきっかけについて、作者の藤子・F・不二雄はこう語っていた。
まんがというものを分解してみますと、結局は小さな断片の寄せ集めなんですね。例えば「ドラえもん」です。未来の世界のネコ型ロボットというものは、かつて存在しなかったものです。ところが、これをひとつひとつの部品に分解してみますと、まず“未来”。これは、ひとつの既成概念です。それから“ロボット”これもチェコスロバキアの劇作家で小説家のカレル・チャペックがその作品の中で創造して以来、もう誰もが知っている周知の断片ですね。それからネコもそのへんにウロウロしているわけです。これら、3つの断片を寄せ集めることによって、「ドラえもん」というそれまでなかったものができてくる。(小学館ドラえもんルーム編「藤子・F・不二雄の発想術」2014年より引用)
未来、ロボット、ネコという組み合わせから生まれたドラえもんは、勉強も運動もさえない小学生のび太を助けることで、成人後ののび太の不運のせいで困っているのび太の子孫たちの生活を少しでも楽にすることをミッションとして22世紀の未来から送り込まれた。
しかし、人間と同等に喜怒哀楽を表現する感情回路がついたドラえもんとのび太は、生活をともにしていくことで、一緒にイタズラをし、ともに喜び、悲しみ、怒り、感動の時を共有する、無二の親友となっていく。
日本のアニメで描かれるロボットは大きく2つの典型に分かれている。ひとつはドラえもんのように人間の掛け替えのない友人として描かれるもの、もうひとつはガンダムのような大型の戦うロボットである。そして現実の世界でも人間の友達としてのロボットは開発されてきた。
SONYが1999年から2006年まで発売していたAIBOはそうしたロボットの先駆けと言える。ユーザーとのコミュニケーションを介して成長するように設計されており、しゃべることはできないが、自律的な行動ができるロボットとして大きな注目を浴びた。
さらに最近では人型の小型ロボットが人気を集めている。デアゴスティーニ・ジャパンが手掛ける週刊分冊シリーズからは人型の小型ロボットRobi(ロビ)が生まれている。雑誌の付録として順次提供されるパーツを組み立てていくと約1年半でRobiは完成する。Robiのキットを付録とした週刊ロビは、2013年に刊行され大ヒットを記録、2014年、2015年にも再刊行されている。最新のRobiは、約250の言語に対応し、日常の様々なシチュエーションで会話を楽しむことができる。
ソフトバンクが2015 年6 月に発売したPepper(ペッパー)は、人とコミュニケーションをとることを主目的に開発された人型ロボットである。周囲の状況を把握し、人の表情と声のトーンを分析して感情を推定するという。PepperにはクラウドAIが使われており、1 台1 台が学んだ知識をクラウド上に蓄積し、他のロボットと共有することで加速度的にAIを進化させるという。さらにアプリをダウンロードすることで、新たな機能を追加することも可能だとされている。
Pepperのようにインターネットとつながったロボットは、現在スマートロボットとして注目を集めている。インターネットは人と人をつなぐコミュニケーションの幅を大きく広げてきたが、その枠を超えてあらゆるモノとモノをつなぐIoT(Internet of Things)という考え方が急速に広がっており、ウェアラブルデバイスやスマートフォン、自動車、ドローン、ロボットといったマシンがインターネットを通してつながり、これらが連携することで生まれる新しい社会の姿が期待されている。海外、特にGoogleなどの米国企業はこうした“つながったロボット”に高い関心を示しており、ロボット関連企業の買収の動きが早まっている。
感情を持つ人工知能を搭載したロボットはまだ開発されていない。ドラえもんとのび太のような関係をロボットと持てるかどうかは未知数である。しかし、人間とロボットのコミュニケーションが増えれば、人の感情データも集めやすくなり、人工知能の開発にも有効に作用すると思われる。
(2)「ドラえもん」~大切な友達
22世紀の世界からやってきたネコ型ロボットのドラえもんが生まれたきっかけについて、作者の藤子・F・不二雄はこう語っていた。
まんがというものを分解してみますと、結局は小さな断片の寄せ集めなんですね。例えば「ドラえもん」です。未来の世界のネコ型ロボットというものは、かつて存在しなかったものです。ところが、これをひとつひとつの部品に分解してみますと、まず“未来”。これは、ひとつの既成概念です。それから“ロボット”これもチェコスロバキアの劇作家で小説家のカレル・チャペックがその作品の中で創造して以来、もう誰もが知っている周知の断片ですね。それからネコもそのへんにウロウロしているわけです。これら、3つの断片を寄せ集めることによって、「ドラえもん」というそれまでなかったものができてくる。(小学館ドラえもんルーム編「藤子・F・不二雄の発想術」2014年より引用)
未来、ロボット、ネコという組み合わせから生まれたドラえもんは、勉強も運動もさえない小学生のび太を助けることで、成人後ののび太の不運のせいで困っているのび太の子孫たちの生活を少しでも楽にすることをミッションとして22世紀の未来から送り込まれた。
しかし、人間と同等に喜怒哀楽を表現する感情回路がついたドラえもんとのび太は、生活をともにしていくことで、一緒にイタズラをし、ともに喜び、悲しみ、怒り、感動の時を共有する、無二の親友となっていく。
日本のアニメで描かれるロボットは大きく2つの典型に分かれている。ひとつはドラえもんのように人間の掛け替えのない友人として描かれるもの、もうひとつはガンダムのような大型の戦うロボットである。そして現実の世界でも人間の友達としてのロボットは開発されてきた。
SONYが1999年から2006年まで発売していたAIBOはそうしたロボットの先駆けと言える。ユーザーとのコミュニケーションを介して成長するように設計されており、しゃべることはできないが、自律的な行動ができるロボットとして大きな注目を浴びた。
さらに最近では人型の小型ロボットが人気を集めている。デアゴスティーニ・ジャパンが手掛ける週刊分冊シリーズからは人型の小型ロボットRobi(ロビ)が生まれている。雑誌の付録として順次提供されるパーツを組み立てていくと約1年半でRobiは完成する。Robiのキットを付録とした週刊ロビは、2013年に刊行され大ヒットを記録、2014年、2015年にも再刊行されている。最新のRobiは、約250の言語に対応し、日常の様々なシチュエーションで会話を楽しむことができる。
ソフトバンクが2015 年6 月に発売したPepper(ペッパー)は、人とコミュニケーションをとることを主目的に開発された人型ロボットである。周囲の状況を把握し、人の表情と声のトーンを分析して感情を推定するという。PepperにはクラウドAIが使われており、1 台1 台が学んだ知識をクラウド上に蓄積し、他のロボットと共有することで加速度的にAIを進化させるという。さらにアプリをダウンロードすることで、新たな機能を追加することも可能だとされている。
Pepperのようにインターネットとつながったロボットは、現在スマートロボットとして注目を集めている。インターネットは人と人をつなぐコミュニケーションの幅を大きく広げてきたが、その枠を超えてあらゆるモノとモノをつなぐIoT(Internet of Things)という考え方が急速に広がっており、ウェアラブルデバイスやスマートフォン、自動車、ドローン、ロボットといったマシンがインターネットを通してつながり、これらが連携することで生まれる新しい社会の姿が期待されている。海外、特にGoogleなどの米国企業はこうした“つながったロボット”に高い関心を示しており、ロボット関連企業の買収の動きが早まっている。
感情を持つ人工知能を搭載したロボットはまだ開発されていない。ドラえもんとのび太のような関係をロボットと持てるかどうかは未知数である。しかし、人間とロボットのコミュニケーションが増えれば、人の感情データも集めやすくなり、人工知能の開発にも有効に作用すると思われる。