■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」11/27
3.仮想現実技術
(1)「味ラジオ」~ラジオから放送される仮想現実
図日本においてもこれまで数多くのSF小説が生み出されてきた。その中にショートショートSFというジャンルがある。掌編とも言われ、短編小説の中でも特に短いものを指して言うが、星新一はそのジャンルを世に知らしめた代表的な作家である。
「味ラジオ」は星新一が1967年に、「妄想銀行」という短編集の中に収録して発表したショートショートSF作品である。「味ラジオ」に描かれた世界では、ラジオから“味”が放送されており、歯の内部に収まった受信機でその味を受信している。無味のガムやパンを口にすることでラジオから放送されているさまざまな味が口の中に広がる。人々は口の中に常に美味しい味が広がっていることが当たり前で過ごしており、放送が不調をきたした際に混乱が起こってしまう。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感の情報通信技術については10年以上前から取組が始まっている。ロボットを通して触感まで伝達できる“テレイグジスタンス”(Telexistence)”という技術が開発されている。
東京大学名誉教授の舘暲教授が率いる開発チームは、圧覚、低周波振動覚、高周波振動覚、皮膚伸び覚、冷覚、温覚、痛覚という7種類の感覚を組み合わせることにより、すべての触感を再現する“触原色原理”というコンセプトを応用して、遠くのものを本当に触っているかのような感覚を得ることに成功した。携帯電話やインターネットの登場で、情報は自由に行き来するようになったが、触感はその場に行かなければ感じることができない。それを変えるのが“テレイグジスタンス”である。
舘教授のチームは、布や紙に触れた際の細やかな感触を伝えられる遠隔操作ロボットシステム“TELESAR V(テレサファイブ)”を開発している。ヘルメット型、ベスト型、手袋型の各装置を身に着けた操縦者の身体の動きをそっくりそのまま模倣し、その動作によって得られた情報を感覚としてセンサーで操縦者に伝える。操縦者はロボットが物体に触れた際の“すべすべしている”、“ざらついている”、“熱い”、“冷たい”といった感覚を自分が触っているかのように感じることができる。
ロボットの目はカメラになっており、見た3D映像を操縦者が装着した頭部搭載型ディスプレイ(HMD)に映し出すことで、あたかも操縦者がロボットと一体化したような感覚を得ることも可能である。また、マイクでロボットの周囲の音を拾うこと、スピーカーから操縦者の声をロボットの周辺にいる人に伝えることも可能だ。
こうした技術は、遠隔コミュニケーションの他、遠隔医療や遠隔介護、極限環境下での遠隔作業など様々な分野への展開が期待されている。さらに開発が進めば、世界の色々な場所にあるロボットとつながって、時間や距離の制約を超えた感覚を味わうことも可能になると考えられる。
3.仮想現実技術
(1)「味ラジオ」~ラジオから放送される仮想現実
図日本においてもこれまで数多くのSF小説が生み出されてきた。その中にショートショートSFというジャンルがある。掌編とも言われ、短編小説の中でも特に短いものを指して言うが、星新一はそのジャンルを世に知らしめた代表的な作家である。
「味ラジオ」は星新一が1967年に、「妄想銀行」という短編集の中に収録して発表したショートショートSF作品である。「味ラジオ」に描かれた世界では、ラジオから“味”が放送されており、歯の内部に収まった受信機でその味を受信している。無味のガムやパンを口にすることでラジオから放送されているさまざまな味が口の中に広がる。人々は口の中に常に美味しい味が広がっていることが当たり前で過ごしており、放送が不調をきたした際に混乱が起こってしまう。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感の情報通信技術については10年以上前から取組が始まっている。ロボットを通して触感まで伝達できる“テレイグジスタンス”(Telexistence)”という技術が開発されている。
東京大学名誉教授の舘暲教授が率いる開発チームは、圧覚、低周波振動覚、高周波振動覚、皮膚伸び覚、冷覚、温覚、痛覚という7種類の感覚を組み合わせることにより、すべての触感を再現する“触原色原理”というコンセプトを応用して、遠くのものを本当に触っているかのような感覚を得ることに成功した。携帯電話やインターネットの登場で、情報は自由に行き来するようになったが、触感はその場に行かなければ感じることができない。それを変えるのが“テレイグジスタンス”である。
舘教授のチームは、布や紙に触れた際の細やかな感触を伝えられる遠隔操作ロボットシステム“TELESAR V(テレサファイブ)”を開発している。ヘルメット型、ベスト型、手袋型の各装置を身に着けた操縦者の身体の動きをそっくりそのまま模倣し、その動作によって得られた情報を感覚としてセンサーで操縦者に伝える。操縦者はロボットが物体に触れた際の“すべすべしている”、“ざらついている”、“熱い”、“冷たい”といった感覚を自分が触っているかのように感じることができる。
ロボットの目はカメラになっており、見た3D映像を操縦者が装着した頭部搭載型ディスプレイ(HMD)に映し出すことで、あたかも操縦者がロボットと一体化したような感覚を得ることも可能である。また、マイクでロボットの周囲の音を拾うこと、スピーカーから操縦者の声をロボットの周辺にいる人に伝えることも可能だ。
こうした技術は、遠隔コミュニケーションの他、遠隔医療や遠隔介護、極限環境下での遠隔作業など様々な分野への展開が期待されている。さらに開発が進めば、世界の色々な場所にあるロボットとつながって、時間や距離の制約を超えた感覚を味わうことも可能になると考えられる。