■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」12/27
(2)「スタートレック」~ホロデッキ
『宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは人類初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船USS・エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。(「スタートレック」テレビシリーズ 1966年 より引用)
「スタートレック(原題:Star Trek)」は、この冒頭のナレーションとともに、1966年にテレビシリーズの放送を開始した。2000年代に入ってもテレビシリーズや映画の制作が続けられ、2013年にはシリーズ12作目の映画が公開されている人気シリーズである。日本でも1969年から「宇宙大作戦」のタイトルで最初のテレビシリーズの放送がスタートしている。
スタートレックシリーズで描かれるのは、おおむね22~24世紀の未来である。超高速航行技術を開発した地球人は、作中の架空の異星人であるバルカン人などいくつかの種族と惑星連邦という組織を形成しており、様々な異星人と交流しながら、銀河系の未開拓領域の
探索を進めている。
スタートレックシリーズではホロデッキと呼ばれる架空の装置が登場している。ホロデッキ自体は数メートル四方の立方体の部屋のことで、ホログラム映像、遠景を表現するために使われる映像、ホログラム映像に実体を持たせるフォースビームなどが組み合わされて使われており、現実とほとんど変わらない仮想現実の世界を作りだす。
2010年にマイクロソフトがXbox360用の周辺機器として発売したキネクトは、プレーヤーのジェスチャーや音声認識によって直観的なゲームプレイを可能にした。筐体に光学カメラや赤外線センサーを複数内蔵しており、プレーヤーの動きを検知して、コントローラーを使うことなくゲームを操作できるキネクトの技術は、発売と同時にその可能性が各所から注目された。
その後、マイクロソフトには様々な企業や団体からの活用の相談が寄せられ、2012年にはソフトウェア開発キットを公開、Kinect for Windowsを発売しており、現在は様々な企業、団体がキネクトのモーションセンサーを活用した新しいアプリケーションが開発しており、医療や障害者支援、介護といった分野から、衣料販売やエンタテインメントの分野まで、当初の想定を超えて創造的に活用されている。
アメリカのNorthrop Grumman 社は、「Virtual Immersive Portable Environment(VIPE)Holodeck」というシステムを開発している。VIPE Holodeckは、360度のバーチャル訓練システムである。360度の画面には兵士たちが戦場で直面する状況が映し出され、キネクトを組み込んだナビゲーション・センサーを使うことで、没入型の環境において、這う、歩く、走る、止まる、ジャンプする、横に動くといった動作に対応する。また、軍の訓練だけでなく、銃撃事件や人質事件に対する警察や災害時の救援隊の訓練にこの装置を活用する方向も探られている。
こうした技術には前項までに触れた技術が組み合わさることもあるだろう。前出したNICTの大井主任研究員によれば、ホロデッキのような装置に対しホログラフィの技術は親和性が高いという。他にも立体映像を出す技術はあるが、ホログラム以外の立体映像はディスプレイ面の周辺に映像を出しても、30センチ離れると映像がぼけてしまい、ディスプレイ面の1メートル奥に映像を出そうとすると光が分散してうまく像が結ばなくなってしまう。
また、ホロデッキの中に登場するものは、「スタートレック」の設定上では、前出のフォースビームにより実体化されている。現実の物をそこに出現させることは難しいが、実体の感覚を得る技術としてテレイグジスタンスの活用は有効になるだろう。
「スタートレック」のホロデッキはまだ実現していないが、そこに向かった歩みは確実に進んでいる。
(2)「スタートレック」~ホロデッキ
『宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは人類初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船USS・エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。(「スタートレック」テレビシリーズ 1966年 より引用)
「スタートレック(原題:Star Trek)」は、この冒頭のナレーションとともに、1966年にテレビシリーズの放送を開始した。2000年代に入ってもテレビシリーズや映画の制作が続けられ、2013年にはシリーズ12作目の映画が公開されている人気シリーズである。日本でも1969年から「宇宙大作戦」のタイトルで最初のテレビシリーズの放送がスタートしている。
スタートレックシリーズで描かれるのは、おおむね22~24世紀の未来である。超高速航行技術を開発した地球人は、作中の架空の異星人であるバルカン人などいくつかの種族と惑星連邦という組織を形成しており、様々な異星人と交流しながら、銀河系の未開拓領域の
探索を進めている。
スタートレックシリーズではホロデッキと呼ばれる架空の装置が登場している。ホロデッキ自体は数メートル四方の立方体の部屋のことで、ホログラム映像、遠景を表現するために使われる映像、ホログラム映像に実体を持たせるフォースビームなどが組み合わされて使われており、現実とほとんど変わらない仮想現実の世界を作りだす。
2010年にマイクロソフトがXbox360用の周辺機器として発売したキネクトは、プレーヤーのジェスチャーや音声認識によって直観的なゲームプレイを可能にした。筐体に光学カメラや赤外線センサーを複数内蔵しており、プレーヤーの動きを検知して、コントローラーを使うことなくゲームを操作できるキネクトの技術は、発売と同時にその可能性が各所から注目された。
その後、マイクロソフトには様々な企業や団体からの活用の相談が寄せられ、2012年にはソフトウェア開発キットを公開、Kinect for Windowsを発売しており、現在は様々な企業、団体がキネクトのモーションセンサーを活用した新しいアプリケーションが開発しており、医療や障害者支援、介護といった分野から、衣料販売やエンタテインメントの分野まで、当初の想定を超えて創造的に活用されている。
アメリカのNorthrop Grumman 社は、「Virtual Immersive Portable Environment(VIPE)Holodeck」というシステムを開発している。VIPE Holodeckは、360度のバーチャル訓練システムである。360度の画面には兵士たちが戦場で直面する状況が映し出され、キネクトを組み込んだナビゲーション・センサーを使うことで、没入型の環境において、這う、歩く、走る、止まる、ジャンプする、横に動くといった動作に対応する。また、軍の訓練だけでなく、銃撃事件や人質事件に対する警察や災害時の救援隊の訓練にこの装置を活用する方向も探られている。
こうした技術には前項までに触れた技術が組み合わさることもあるだろう。前出したNICTの大井主任研究員によれば、ホロデッキのような装置に対しホログラフィの技術は親和性が高いという。他にも立体映像を出す技術はあるが、ホログラム以外の立体映像はディスプレイ面の周辺に映像を出しても、30センチ離れると映像がぼけてしまい、ディスプレイ面の1メートル奥に映像を出そうとすると光が分散してうまく像が結ばなくなってしまう。
また、ホロデッキの中に登場するものは、「スタートレック」の設定上では、前出のフォースビームにより実体化されている。現実の物をそこに出現させることは難しいが、実体の感覚を得る技術としてテレイグジスタンスの活用は有効になるだろう。
「スタートレック」のホロデッキはまだ実現していないが、そこに向かった歩みは確実に進んでいる。