■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」10/27
(5)「火星の人」~21世紀のロビンソン・クルーソー
「火星の人(原題:The Martian)」は、アメリカの作家アンディ・ウィアーの処女長編小説である。「火星の人」の執筆は2009年に始められ、ウィアー自身のウェブサイトから1章ずつ無償で公開された。その後、読者からまとめて読みたいという声が寄せられるようになり、Kindle版を最低価格の99セントで売り出したところ、発売3か月で3万5,000ダウンロードを記録し、SF部門のトップ5に入る。
さらに2013年にオーディオブック版をダウンロード方式で販売開始、2014年に紙書籍版をハードカバーで刊行、紙書籍版もニューヨークタイムズのベストセラーリスト上位に進出し、その後、20世紀フォックスが映画化権のオプションを獲得、現在はリドリー・スコット監督により、マット・デイモン主演による映画化が進められている。
主人公は火星探索隊の宇宙飛行士である。彼、マーク・ワトニーは、有人火星探査が開始されて3度目のミッションに参加して火星に着陸したが、6日後に起こった大砂嵐が原因で、ミッションは中止を余儀なくされる。さらに火星を離脱する寸前、折れたアンテナがマークを直撃、残されたクルーはマークが死亡したものと判断し、火星を後にする。しかし、マークは奇跡的に生きていた。
「火星の人」は、地球から遠く離れた不毛の地に独り取り残された主人公マークのサバイバルを、マークが記録用に残すログと、NASAとのメールのやりとりを中心に描いている。その内容から“火星のロビンソン・クルーソー”と称されることもある。
1719年にダニエル・デフォーが描いたロビンソン・クルーソーは、無人島に漂着して孤独の日々を過ごした。後に従僕フライデーとの出会いはあるが、彼が救出されるまで28年の歳月を要したという。しかし、300年後に描かれた「火星の人」において、およそ8千万キロ離れた火星に取り残されたマークは孤独ではなかった。
火星基地の被害状況を確認するために、基地に向けられた衛星映像をモニタリングしていた衛星コントロール担当が、開かれていないはずのテントが開かれてきちんと並べられ、砂嵐で砂が積もっているはずの太陽電池がきれいになっていることを発見したのである。その後、マークは以前の探検隊が残した機材を使って地球との通信を回復する。
火星の有人探査に関しては、ここ数年、民間による取り組みが大きな盛り上がりを見せている。宇宙ロケット製造会社スペースXやテスラのCEOを務めるアメリカの起業家イーロン・マスクは、2026年までに火星移住計画の準備ができることを公表している。また、オランダの民間非営利団体マーズ・ワンは火星移住計画を発表し、20,000人の応募者から選抜された100人の候補者を発表している。火星移住の一部始終(移住者の選考過程から実際の火星生活まで)をリアリティーショーとしてテレビ放送し、その放映権収入で10年後の火星移住の費用を賄うという計画だ。
アメリカのSF作家キム・スタンリー・ロビンソンが、1992~1996年に発表した火星三部作の第1作「レッド・マーズ(原題:Red Mars)」は、2027年に火星への最初の移民団が地球を飛び立つところから始まっている。現実の火星移住計画が予定通り実現できるかどうかは今後を見守るしかないが、少なくとも現時点においてはSFで描かれたものと同じタイミングで実現する計画が進められているということになる。
<参考文献>
1.アンディ・ウィアー(著)・小野田和子(訳)(2014)「火星の人」
2.円谷プロダクション監修(2013)「決定版ウルトラマンシリーズFILE」
3.デアゴスティーニ・ジャパン(2011)「ジェリー・アンダーソンSF特撮DVDコレクション」
4.デアゴスティーニ・ジャパン(2013)「週刊マクロス・クロニクル新訂版」
(5)「火星の人」~21世紀のロビンソン・クルーソー
「火星の人(原題:The Martian)」は、アメリカの作家アンディ・ウィアーの処女長編小説である。「火星の人」の執筆は2009年に始められ、ウィアー自身のウェブサイトから1章ずつ無償で公開された。その後、読者からまとめて読みたいという声が寄せられるようになり、Kindle版を最低価格の99セントで売り出したところ、発売3か月で3万5,000ダウンロードを記録し、SF部門のトップ5に入る。
さらに2013年にオーディオブック版をダウンロード方式で販売開始、2014年に紙書籍版をハードカバーで刊行、紙書籍版もニューヨークタイムズのベストセラーリスト上位に進出し、その後、20世紀フォックスが映画化権のオプションを獲得、現在はリドリー・スコット監督により、マット・デイモン主演による映画化が進められている。
主人公は火星探索隊の宇宙飛行士である。彼、マーク・ワトニーは、有人火星探査が開始されて3度目のミッションに参加して火星に着陸したが、6日後に起こった大砂嵐が原因で、ミッションは中止を余儀なくされる。さらに火星を離脱する寸前、折れたアンテナがマークを直撃、残されたクルーはマークが死亡したものと判断し、火星を後にする。しかし、マークは奇跡的に生きていた。
「火星の人」は、地球から遠く離れた不毛の地に独り取り残された主人公マークのサバイバルを、マークが記録用に残すログと、NASAとのメールのやりとりを中心に描いている。その内容から“火星のロビンソン・クルーソー”と称されることもある。
1719年にダニエル・デフォーが描いたロビンソン・クルーソーは、無人島に漂着して孤独の日々を過ごした。後に従僕フライデーとの出会いはあるが、彼が救出されるまで28年の歳月を要したという。しかし、300年後に描かれた「火星の人」において、およそ8千万キロ離れた火星に取り残されたマークは孤独ではなかった。
火星基地の被害状況を確認するために、基地に向けられた衛星映像をモニタリングしていた衛星コントロール担当が、開かれていないはずのテントが開かれてきちんと並べられ、砂嵐で砂が積もっているはずの太陽電池がきれいになっていることを発見したのである。その後、マークは以前の探検隊が残した機材を使って地球との通信を回復する。
火星の有人探査に関しては、ここ数年、民間による取り組みが大きな盛り上がりを見せている。宇宙ロケット製造会社スペースXやテスラのCEOを務めるアメリカの起業家イーロン・マスクは、2026年までに火星移住計画の準備ができることを公表している。また、オランダの民間非営利団体マーズ・ワンは火星移住計画を発表し、20,000人の応募者から選抜された100人の候補者を発表している。火星移住の一部始終(移住者の選考過程から実際の火星生活まで)をリアリティーショーとしてテレビ放送し、その放映権収入で10年後の火星移住の費用を賄うという計画だ。
アメリカのSF作家キム・スタンリー・ロビンソンが、1992~1996年に発表した火星三部作の第1作「レッド・マーズ(原題:Red Mars)」は、2027年に火星への最初の移民団が地球を飛び立つところから始まっている。現実の火星移住計画が予定通り実現できるかどうかは今後を見守るしかないが、少なくとも現時点においてはSFで描かれたものと同じタイミングで実現する計画が進められているということになる。
<参考文献>
1.アンディ・ウィアー(著)・小野田和子(訳)(2014)「火星の人」
2.円谷プロダクション監修(2013)「決定版ウルトラマンシリーズFILE」
3.デアゴスティーニ・ジャパン(2011)「ジェリー・アンダーソンSF特撮DVDコレクション」
4.デアゴスティーニ・ジャパン(2013)「週刊マクロス・クロニクル新訂版」