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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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知財本部・映画振興会議 報告

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■知財本部・映画振興会議 報告

 知財本部・映画振興会議。アウトプットは3本柱となりました。

1 製作支援・資金調達
 制作領域へ資源配分すること。特に、企画開発支援、 製作費等中小制作会社や独立系の作り手への創作機会の付与の必要性が論議されました。技能系人材・プロデューサー人材の不足も指摘されました。 
 これを受け、中小を含む制作会社やクリエーターの作品作りへの挑戦を支援することとし、クールジャパン機構などを活用したリスクマネーの供給策を講じるととしました。また、「クールジャパン人材育成検討会」を設置、方策を講じることとしました。この会議にはぼくも参加します。

2 海外展開
 中国を中心としたアジアのマーケットへの進出支援、アニメーション分野への重点支援が議論されました。
 措置として、海外市場における各種規制への対応、国際共同製作を促すため協定の交渉、中小制作会社等の海外展開促進に向けた資金調達法の検証などが挙げられました。


3 ロケ支援
 道路使用・消防の観点からの許認可手続等の円滑化、予見可能性の確保の必要性(警察・消防等規制当局を交えたマニュアルの策定)などが求められました。
 これを受け、内閣府が「ロケ撮影の環境改善に係る官民連絡会議」を設置し、マニュアル策定などの対策に乗り出すこととしました。

 実は私、この座長を引き受けるに当たり、映画という特定ジャンルが補助金ほしいよ話を咲かせる構図になることを恐れていました。しかし杞憂。インフラや制度を整えること、海外との交渉など政府がすべき仕事に議論は集中していきました。

 本委員会は3点においてチャレンジングな会議でした。

1)知財本部でコンテンツの総合政策が議論されるようになって10年以上だが、総合表現である映画に光りを当てて戦略を考えたのは初めてだったこと。

2)映画産業オールキャストで、これまでにない重たい面々だったこと。

3)映像産業のネット・スマホシフトや海外からの波が強く、映画産業を取り巻く環境が大きく動く時期だったこと。特にこの点は「映画とは何か」を問い直すものであり、政策のスコープもブレる可能性がありました。

 典型は吉本興業「火花」です。ネットフリックスが資金を出して製作し、まず世界190か国にネット配信。そしてそれがNHK地上波でオンエアされる。その10話は日本映画なのか、何なのか。コンテンツの種類も、流通メディアも、ビジネスモデルも、ウィンドウ戦略も変わっていく時期です。

 そのような中で、重要な政策の整理ができたと考えます。人材育成やロケ誘致等は新たに会議が設けられるなど議論が続きますが、それも含め、政府には実行を求めます。アクションです。


 われわれ委員としても政府と連携しつつ、激励しつつ、前に進むよう、努めたいと考えます。

水上に浮かぶメキシコシティ

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■水上に浮かぶメキシコシティ

 アステカの首都テノチティトランは、テスココ湖上に浮かぶ都市だった。


 コルテスが破壊し、その上に建てたのが人口2000万人の大都会、メキシコシティ。
 空気が薄い。大事に、大事に、息をしよう。
(初訪問の写真日記です。)



 マリアナはこうして毎日、一本ずつタバコを売る。前歯の抜けたルイスがからかう。あっち行けと無言で目配せをする。物乞いのフリーダは、死んだように眠る幼子を片腕に抱えて地べたに座り、堂々とこちらに皿を突き上げてくる。
(本稿、名前はみなぼくの空想である。)


 ディエゴは今日もダビッドの靴を磨く。それほどまでに靴を磨く需要があるのだろうか。日本では戦争孤児の仕事だった。敗戦後の日本にもそんな需要があったのだろうか。あるいはみんなで所得を分け合う互助装置だったのだろうか。


 調子外れの手風琴。ハンドルを回すだけなのに、どうしてグディはこう微笑ましくもヘタなのか。あふれるように道に立ち並ぶ警官どもの笛は、喉を患う鳥のように、びゅうびゅうと品がない。横でジャージの観光客がびゅうびゅうとキスを貪っている。



 メキシコ国立自治大学は、1920年代からの壁画運動の名残をとどめる世界遺産である。


 壁画は消滅したアステカ文明、スペインの暴虐、アメリカとの闘い、内紛に次ぐ内紛、それら全てを伝えようとする表象。「絵」で表す文化が強く根付いている。


 地下鉄やバスの駅もシンボルやマークで示される。ピクトグラムが発達している。この国は、日本と並び、エモティコン文化でリードできるのかもしれない。


 なぜなら、どうやらそれは、うんとむかしからそうだったから。



 ぶかぶかの防弾チョッキを着けた新人警官のカルロスは、右手に棍棒と盾を抱きながら、左手であわただしくハンバーガーを口に運ぶ。無口で前を向く。あくまで職務中であるが、気合を入れるつもりはみられない。横ではフランシスコがパチもんのポケモンを売るが、問題視されてはいない。


 メトロの出口でダビッドが売る日本のマンガは正規版のようだ。ホセとマリアとマルセロが怒鳴りながら通行人にメモサイズのビラを押し付けてくる。受け取ってみたが、どれもメガネ屋の宣伝で、怒鳴り効果はなさそうだ。


 道端の鉄板で、練ったとうもろこし粉を丸く敷き、トルティーヤを焼くマヤ。手際よく野菜や肉片をくるんで脇で食べているサンドラ。黒い髪、黒い目。こちらの視線を射抜いてくる。首が短く、いかり肩の中に顔がめりこんでいる。アステカ戦士の末裔であろう。


 1968年、メキシコ五輪。ぼくは小学2年生だった。サッカーが銅を取り、君原健二が銀を取った。このスタジアムを走った。


 メキシコ五輪、担任の大塚静江先生は授業そこのけでテレビ観戦を許した。自分が見たかったんだろう。走り幅跳び、ビーモンが2240mの高地を活かし、8m90を達成。飛んだ後、号泣するシーンを覚えている。以後破られていない超人の記録。義足の超人が破るしかないのではないか。


 メキシコ五輪といえば「アニマル1」である。ゆ~く~ぞアニマルワン、メキシコ目指し、バババババンと日の丸上げるまで。東一郎の驚異的な技に憧れた。だが五輪のレスリングは覚えていない。
 この街は、ミル・マスカラス色が強い。


 メキシコ人の名前はさほど浮かばない。だが、ぼくの好きな映画監督の5指に入るルイス・ブニュエルがいる。それで十分だ。スペインを追われこの地に渡り、数々の奇作を遺してこの地で逝った。そういえばトロツキーもソ連に追われてここに渡り、ここで逝ったんだった。死に場、なのかな。


 いや、ボクサーなら次々に人名が浮かぶ。何せ世界ボクシング評議会WBCの本部はこの街にあるのだ。7-80年代を彩るカルロス・サラテ(66勝63KO)、サルバドール・サンチェス(自動車事故で23歳で死んだメキシコの大場)、フリオ・セサール・チャベス(デビュー以来90戦無敗)らの伝説。


 メキシコ人と日本人とは、体格・階級が似ているせいか、死闘の歴史でもある。
 ビセンテ・サルディバルvs柴田国明、ルーベン・オリバレスvs金沢和良、ルペ・ピントールvs村田英次郎。歴史的な試合を、ありがとう。



 ミゲル・カントvs大熊正二、レネ・アルレドンドvs浜田剛史、ルペ・マデラvs渡嘉敷勝男、ヒルベルト・ローマンvs渡辺二郎、リカルド・ロペスvs大橋秀行、フェルナンド・モンティエルvs長谷川穂積・・・。過去のタイトルマッチのおかげでぼくはメキシコの国歌を口ずさめる。


 ゴミ入れのような大きい黒ビニール袋をたくさんぶらさげたダニエルは、浦和の槙野の髪型を真似している。頭に重いバケツを乗せた小太りのホルヘ。50個はあろうか、サラゴサが両手で卵を大切そうに抱きかかえている。痩せたミゲルが荷車を引いて横を抜き去る。


 歩道と車道の境目を黄色いペンキで塗りながら、アントニオが何やらつぶやいている。頭上には、電信柱の配線をいじるフェルナンド。脇の建物ではファンが木材の足場で壁にセメントを塗りたくっている。


 ぼくの前回のメキシコ訪問は17年前。コスメル島だった。観光用の潜水艦、円窓の外では緑がかった青い珊瑚に深い青の小魚がじゃれていた。上空でギラギラ音をたてている太陽が、100フィートの真っ青な海水の空間に、抜けるように白い青の光を差し込んでいた。おびただしい青のパノラマだった。


 今回は内陸の高地。露天が続く町並みは低く、カリフォルニアやテキサスを思わせる。もともとどちらもメキシコだったのだから当然だ。
(チキンのチョコレートソース)


 だが、当時ぼくはこう書き残している。「路地には屋根のない板張りの民家が並んでいますが雨の夜はどうしているのでしょう。行き交う自転車にはブレーキがついていませんがどう止まるのでしょう。八百屋さんではサボテンが売られていますがどう調理するのでしょう。」
(サボテンサラダ)


父子とおぼしき二人が体より大きい布袋を背負い汗みずくで這うように歩いていきます、袋には馬の置物がたくさん詰まっていますが、あれだけ売っていくらになるのでしょう。彼らはみな無口で、その目は一様に鋭く、まっすぐ前を見やり、その先には何があるのでしょう。」
(イカ墨のタコ)


 17年、さほど変わりあるまい。当時、目についたインターネットカフェの看板はなく、携帯電話の加入を勧誘する看板は、スマホのCMに変わっている。その程度だ。
 それにしても、この高地では、やけに酔う。
(マルガリータ大)


 初めての街では必ず郵便局に立ち寄る。イエス誕生時に拝んだ「東方の三賢人」を讃える子どもの催しが開かれていた。
 マルセロもチコもクラウディアもモニカも、みんなすこやかに。

知財本部はピコ太郎を残せるか

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■知財本部はピコ太郎を残せるか

知財本部コンテンツ会議。
1)映画振興、2)デジタルアーカイブ連携、3)模倣品・海賊版対策、4)海外展開促進、5)産業基盤強化。これらテーマについて、方向性を整理しました。

1)映画振興検討会議はこれまで報告のとおり、1)製作支援・資金調達、2)海外展開、3)ロケ支援の3本柱。クールジャパン人材育成検討、海外展開の資金調達方法の検証、ロケ撮影官民連絡会議などにつなげていきます。

迫本委員が映画の国家戦略上の位置づけを初めて整理したと評価する一方、相澤委員は政投銀などが大ロットで投資するような環境が必要と指摘。川上委員は、日本コンテンツは個人依存であり、先端の開発手法を取り入れるのが不得手と指摘しました。コンテンツの「研究開発」が次のテーマになりそうです。

2)デジタルアーカイブ連携は関係省庁等連絡会・実務者協議会を開いて検討。博物館、図書館、研究機関、企業・官公庁など各アーカイブ機関のメタデータ等を整備、オープン化して共有するためのガイドラインを作成してもらいました。

瀬尾委員がアーカイブの社会的な効能やインフラ性を示し、推進目的を明確化すべきと指摘する一方、野坂委員は個別のアーカイブよりも、横断・つなぎの役割が大事と指摘しました。井内局長は供給サイドから需要サイドに視座をシフトさせることを表明しました。

喜連川委員は、オープンデータのアーカイブが必要であり、特に研究データのボリュームが大きいことを指摘しました。そしてこれを維持するビジネスモデルをどう作るかという問題を提起しました。

3)模倣品・海賊版対策。ネット被害は2012年に急増し増加傾向。CODAによると、2014年度の映画・アニメ・放送・音楽・マンガの海外収入1234億円に対し、海賊版の被害額は2888億円。文化審議会でリーチサイト対策、経産省でオンライン広告対策、総務省で放送コンテンツ流通対策等を検討中。

中国対策として、経産省を主体とした官民合同協議、日中警察協議、日中著作権協議など各省庁で中国政府に働きかけているが、ハイレベルでの政府間協議と並び、関係省庁・機関がヨコ連携する対応が必要。
これは是非アウトプットを出したいです。

経産省の海賊版対策としては、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)を通じ、中国の主要な動画投稿サイトとの間でネット上の著作権保護の覚書を締結。CODAの削除要請に対してはほぼ100%の削除実施に成功しているとのこと。

これに対し野間委員は、いたちごっこであり対応コストが大きいことを強調。野坂委員はスピードの向上を訴えました。伊丹委員は利用マインドの醸成を、竹宮委員はユーザ教育対策を唱えました。

川上委員は「サイトブロッキング」が有効としつつ、日本人が海外経由で違法DLすることが深刻であり、若い世代の間にコンテンツにカネを払わない文化が培われることが問題と指摘しました。

斎藤委員は、音楽の被害は国内で起きていると呼応し、サイトブロッキングなど踏み込んだ手段が必要であり、さもないと海外進出エネルギーも削がれると指摘。相澤委員は域外適用、通商交渉、企業広告CSR、資金決済等の対応策を示唆しました。

4)海外展開促進対策としては、J-LOP事業により、5623件が採択され、海外売上は1918億円増加したとのこと。総務省は海外展開促進策の補正予算で、事業費8.4億円で、85.7億円の経済波及効果があったとのことです。

5)著作権制度の対策として、文化審議会の法制・基本問題小委が中間とりまとめ。
柔軟な權利制限規定、教育情報化の推進等に方向付けを行いました。ぼくはこちらの小委にも参加していましたが、問題は、文科省が著作権改正法案を国会に提出できるかどうか、です。がんばって。

喜連川委員は、「オボカタ問題をクリアする」「子どもが病気でも勉強できる」という分かりやすい問題設定が大事だと指摘したうえで、著作権制度改正によってこれらに取り組んでいる政府の姿勢を評価しました。

今回のまとめとして、1)2)は国家戦略上の位置づけの明確化と研究開発やビジネスモデルの重要性、3)スピードアップと対策の強化、4)5)法整備を含むアクションの必要性が指摘されたので、それらを知財計画2017に反映させるべく整理する、としました。


なお、事務局が準備する現案にはコンテンツに関するさまざまな固有名詞が登場しています。政府・知財計画は関係省庁の調整・同意のもと政権として発するものであり、その調整は毎年、歯列を極めるのですが、今回、「君の名は。」の名前を書き残すのは当然として、「ピコ太郎」が残せるかどうかがポイントかと存じます。

知財計画2017、(だいたい)整いました。

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■知財計画2017、(だいたい)整いました。

知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会、産業財産権分野・コンテンツ分野合同会合。知財計画2017に向けた最終会合です。第4次産業革命の基礎となる知財システムの構築、データ・AIの利活用促進、コンテンツの海外展開促進と産業基盤の強化、映画産業の振興、デジタルアーカイブの構築。方向が定まりました。

データ・AIの利活用促進については新情報財委員会で激論を繰り返したので、親会ではさほど突っ込みはありませんでした。ベンチャーはデータが使えないのでオープンデータの仕組みを(奥山委員)、公的データの活用促進を(林委員)といった確認がされた程度です。

コンテンツについては多くの意見が提出されました。海外展開については、音楽業界は活発化しており、アニソンのデータベース作りに着手した(斉藤委員)、放送も順調であるが人材育成も兼ねて地方のクリエイター助成を望む(重村委員)といったコメント。

しかし海賊版対策は「いたちごっごが続いている」(野間委員)状況で、リーチサイト対策(斉藤委員)、サイトブロッキング(林委員、宮川委員)を求める声がありました。川上委員は、違法DL対策はサイトブロッキングしかなく、世界的にも導入が進んでいることを力説しました。

アーカイブに関しては、分野横断的な利活用の効用を具体的に見せるべき(木田委員)、効果がわかりにくいがAI時代のインフラであり、AIデータも集積すべき(瀬尾委員)という意見がありました。

迫本委員は、省庁タテ割りと単年度予算というネックを打破すべきと主張。内山委員は、知財戦略の成果は現れてきているので、食べられるエコシステムといった次のアジェンダを考える時期、とコメント。いずれも賛同します。2020年に向けてどうとらえるか(野坂委員)、新アジェンダの設定時期です。

宮河委員が、キャラとお菓子の合体がコンテンツと非コンテンツの連携のはしりで、日本独特のビジネス。マーチャンダイジングがあるから海賊版も作られる。小学校からコンテンツに親しませるなどの長期的な取組が大事、と指摘。ですね、施策の長期・短期を意識せねば。

喜連川委員:問題を指摘しても議論に2年かかっている。未来の変化に早く気づく仕組みを国に導入し、政策をリアクティブからプロアクティブにすべし。何が起きるかウォッチする体制を作るべし。・・そうですね、こういう大きな構えが次のアジェンダなのかもしれません。

閉会にあたりぼくもコメントしました。

「コンテンツ分野は今回、映画タスクフォースを組んだりして新しい論点に挑むとともに、海外展開やインフラ整備の施策も厚みを増しました。

特に今回は「新情報財」としてデータやAIの利活用促進策に挑戦しました。昨年度はAIのコンテンツについて議論したが、今回は産業財産権と合体して審議。著作権と産業財産権の関係者が1テーマで一緒に戦略を練るという、今後の知財戦略のモデルとなる枠組みができました。


そこで2点。重要なのはこうしてできあがる計画を実行すること。政府が実行していくことを、委員としてチェックしていくとともに、その成果を対外的にプレイアップしたい。もう一点は、2020年に向けた次のアジェンダを作りたい。引き続きよろしくお願いします。」

メキシコの子ども博「パパローテ」

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■メキシコの子ども博「パパローテ」
 とうとうやって来た、子ども博物館「パパローテ」。科学技術とアートの天国です。


 1993年開園、24,000㎡、300のインタラクティブ展示。
 いやぁ、Popです。


 ぼくらが2002年にNPO「CANVAS」を作る際、調査団を派遣しました。創ること、表現すること、Popたること。刺激を受けました。でもぼくは調査には行けず、訪問は宿題としていました。


 お台場の科学未来館を作る時も、東京にキッザニアを作る時も、相談に預かったぼくはパパローテの話をしましたが、実物は初めて。しかも2016年改装とあり、ずいぶん新しい風情です。


 デジタル技術をどう投入するか。古くて新しいテーマですが、軽々と乗り越えています。デジタルとアナログのバランスがいいんですよね。


 子ども向けの施設やイベントは、仕事上、これまであちこちで見てきました。あちこちです。


 NYC、ボストン、サンフランシスコ、サンノゼ、オースティン。
 パリ、リヨン、ル・アーブル、アヌシー、モナコ。
 ロンドン、マンチェスター、リバプール、ダブリン。
 ミラノ、ローマ、ボローニャ、シシリア、ジェノバ。
 ミュンヘン、フランクフルト。


 バルセロナ、マドリード、ビルバオ、リスボン、ポルト、ドブロクニク、北キプロス、オスロ、 モスクワ。
 シンガポール、台北、ソウル、コルカタ、バンコク、北京、上海、香港、マカオ、イスカンダル。


 渋谷、青山、四谷、上野、台場、浅草、品川、汐留、赤坂。
 那覇、長崎、松山、高松、山口、松江、広島、大阪、京都、富山、金沢、名古屋、静岡、横浜、 水戸、仙台、青森、札幌。


 あちこち見てきました。そのどこにも勝る。いいなぁ、ここ。


 展示の説明は要りますまい。ごく簡単に雰囲気を共有しておきます。
 アニメ制作。


 テレビ局スタジオ・番組制作。


 ロボット制作。


 ミシンで刺繍。


 とっても遠いけど、また来たいな。

アニメ、マンガのインバウンド市場

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アニメ、マンガのインバウンド市場

 アニメビジネス・パートナーズフォーラムABPFのシンポ「アニメ、マンガのインバウンド市場」@赤坂。
 サンライズ宮河社長、日本アニメーション石川社長(日本動画協会理事長)、アニプレックス植田会長、TokyoOtakuMode坂入さん、ビリビリ安倍さん、秋葉原観光推進協会泉さん、JETRO北川さんと。ぼくが司会です。

 ABPFはアニメ業界と他の業界とのマッチングを進め、アウトバウンド(対外進出)・インバウンド(海外からの購買増加)の双方を広げる動画協会の試みで、デジタル特区CiPも協力しています。

 政府は訪日外国人2000万人を2000年に4000万人に倍増させる方針です。現在、旅行消費額は3.5兆円。それを8兆円に拡大するという鼻息。アニメ・マンガはそこにどう乗るか。これがテーマです。

 現在、アニメ・マンガ・キャラクターは売上314億円で、旅行客の13%が買っています。とはいえ全体消費の1/100。ファッションの1/10の規模にすぎません。うち中国人の消費は96億円で、1/3を占めています。これをどう読みましょうか。

 泉さんは、秋葉原が家電の街からポップカルチャーの街に変化し、外国人の目当てもポップカルチャーに移行しているが、外国人向けビジネス、つまりインバウンドの本格化まだはこれからとみます。

 ビジネスを提供する宮河さん、植田さん、石川さんともに、アニメ・マンガのアウトバウンドには力を入れていて、成果を上げているが、インバウンドはこれからとのこと。期待しましょう。

 ガンプラの4割が海外向けで、インバウンド消費を含めると、全体の5割が外人による消費だそうです。アウトバウンドで海外に売るほど、国内でも外国人が買うという構図。アウトバウンドとインバウンドは地続き一体なんですね。

(ところで宮河さんは、ラブライブ!のライブビューイングを中国、シンガポール、タイ、オーストラリアなど30館でやったんですって。ラブライブ!サンシャイン!!は北米を攻めるんですって。)

 石川さんによれば、ちびまる子ちゃんの海外向け人気商品には、こたつ、乳酸飲料、ランドセル、フェイスパックなんてものがあるんですと。へぇ~。海外需要は海外に聞かないとわかりませんね・・・

 中国で日本のアニメ・マンガを紹介するビリビリの安倍さんは、中国人観光客はリピーターが増えて団体客から個人客に移っていること、日本でしか変えないものを追求すること、「体験型」旅行を欲していることを指摘します。このあたりにヒントがありそうです。


 ポップカルチャーの海外人気が定着し、アウトバウンド展開に業界は努力を続けてきましたが、インバウンドがこれから大きなチャンスということで一致するようです。他産業の状況をみると、アニメ・マンガにも潜在力がありそうです。今後ABPFの場でそのチャンスを深掘りしてみようと思います。よろしく。

サンノゼ、2つの子ども博

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■サンノゼ、2つの子ども博
 Children's Discovery Museum of San Jose サンノゼ子ども博物館。
 1990年開園。スティーブ・ウォズニアックの寄付で始まったんですってよ!


 設計はメキシコのリカルド・レゴレッタ。学ぶ、探る、作る、その要素はふんだんに盛り込まれています。


 交通、市場、しごと。仕事を学び、世間を学びます。展示物はみなインタラクティブ。


 定番。ボールを飛ばす、投げる、転がす。
 メキシコのパパローテほどポップじゃない。けど楽しい。


 定番。水と戯れる。シャボン玉を作る。
 名古屋の科学館やパリのラ・ヴィレットほど科学じゃない。けど楽しい。


 新定番。タンジブル・ビット。どこもデジタルが増えています。
 とはいえサンフランシスコのZEUMほどデジタルじゃない。けど楽しい。


 定番。工作。男の子向け。
 バルセロナのCosmoCaixaほどデザインされていない。けど楽しい。


 定番。人形作り。女の子向け。
 楽しさ、豊かさではNYCやボストンの子ども博物館とどっこいかな。


 定番。男女混成のおままごと。
 にしてもウォズがこういうのを作るってのは、いいね。成功した起業者の社会貢献は、こうだよね。日本のIT起業家よ、みなさんもぜひこういうの作ってください!





 続いて。
 同じくサンノゼのThe Tech Museum。シリコンバレーの子どもたちの未来を担う気概。ずいぶん久しぶりに訪れました。


 ここの建設もサンノゼ子ども博物館と同じメキシコのリカルド・レゴレッタ。航空、宇宙、物理など昔ながらのテックコーナー健在。


 アナログな工作WSも盛んに開かれています。これは以前訪れた時にも見た光景。


 そしてここはシリコンバレー。デジタルものがうんと充実していました。みんなの顔を合成するシステム。


 デジタルでお絵かき、デザインをして、シェア。


 Google Mapのでっかい版。モナコの水族館にもあったシステム。これみんなで世界を駆け巡って遊ぶとけっこう盛り上がります。


 ジェットコースターのコースを端末のCADでデザインして(左)そのコースを大画面で体験する(右)。よく考えられています。


 インターネットを作る、という展示。ルーター、サーバー、回線等を組み合わせてネットワークを構築するもの。シリコンバレーですねぇ。


 パケットを引き出して、マルウェアを検知して、対策を施すというセキュリティ学習。シリコンバレーですねぇ。


 新しくできた「バイオデザインラボ」では、きのこの菌床を作るワークショップが開かれていました。ITからバイオへ。


 ヘルスケアに力が込められていました。しかも健康とITの結合。一人ひとり頭部にデバイスをつけて、ポーズやバランスなどを測り、データを取っていきます。


 等身大の人体をいじると、内蔵だったり骨格だったり循環器だったりになったりして、キャー杉田玄白さーんってなります。


 コンピュータの歴史展示に、iMacやプレステと並んで100ドルパソコンが紹介されていて、うれしい。この構想をMITで発表してもう16年になります。ぼくが前回訪れたころです。

 シリコンバレーの企業群が支援するTech。日本にもほしいなぁ。

100年時代の人生設計、できるかな?

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■100年時代の人生設計、できるかな?

 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著「LIFE SHIFT」。ロンドン・ビジネススクールの教授による平均寿命100歳時代を乗り切る指南書。邦題「100年時代の人生戦略」。ぼくは資産管理やら資金計画やら家族計画やらは不得手につき、ITIoTAIとの関わりに絞って読み取ることにしました。

 今後、中小企業の連携エコシステムでの労働、シェアリングエコノミー、仕事と余暇のブレンド、都市への集中、スマートシティの需要増が進むといいます。はい、それらはIT化やスマート化で引き起こされること。医療などの進化で寿命が100歳に延びることと特段の関わりはありますまい。たまたま時期が一緒なのです。

 でも時期が重なると、時間の使い方が問題となります。1930年、ケインズは経済が豊かになれば余暇時間が増え、それをどう使うかが人類の課題になると指摘しました。その後、余暇は増えましたが、人は「時間貧乏」を感じています。高賃金の人ほど長く働く傾向があります。

 本書に2点、同意します。まず、IoTAIは新雇用を生むものであり、ロボットが生産を担うことを歓迎するという論旨。そう思います。

 ただそこで、人が優位性を持つ仕事をすることを本書は示唆します。ぼくは人が優位性を持つのは「暇つぶし」だと考えます。ロボットは暇つぶしは苦手でしょう。暇なら電源切っとけ、いう話で。ケインズが課題だと考えたことこそが優位性を持つ。

 そんな素敵な時代の問題は、富の集中・偏在でしょう。生産よりも分配が問題になると考えます。ベーシックインカムは重要なテーマたり得ます。

 もう一つの同意は、「資産」が経済的なものより友人関係や知識が重要になるとする点。これも100歳時代というより、ITやソーシャルメディアの影響です。特に人的つながり=ソーシャルで得られるものが知識=ITで得られるものより力を発揮すると考えます。

 知識=スキル・能力は、資産=経済価値という目的を得るための手段です。それを得るための手段は教育からITへと変わりつつあります。一方、今後は、友人関係=信用・評価を軸に、経済価値をシェアして生きていく方向に進むでしょう。

 ただ、本書は、人脈や人間関係や評判を「生産要素」と見ており、知識と同様の「手段」ととらえています。ぼくは、人間関係=ソーシャルは手段ではなく、目的となると考えます。

 実は知識を軸とした資産を目的に据えるよりも、人間関係や評判を人生の目的に据えるというのは、むかしみんなそうしていたことじゃないかと思います。技術によってつながりが強まることと、暇になること、寿命が伸びることで、近代を脱してむかしに戻るということでしょうか。

 本書によれば、1880年代のアメリカでは、80歳の人の半分が仕事をしていたんですって。100歳時代にもそうなると思います。これまたむかしに戻るということでしょうか。

 今後は人生の一貫性や経済の成長というものが予見できなくなる、とも説きます。これも別に100歳時代とは関係ないんですが、これからの人は不安定な状況がより長い人生で続くことを覚悟しろということです。大人が説かなくても、若い世代は、柔軟でテキトーに生きることに長けているように見えますがね。

 成長して安定する予見可能性なんてのは、ビジネススクール教授職のような(そしてぼくのような)限られた先進国の、一時期の世代にしか適用できなかったもんなんじゃないですか。ぼくが生まれた55年前の日本は結構安定した成長が予見できましたが、そのまた55年前の世代なんて日露戦争直後生まれで、震災と恐慌と事変と戦争と敗戦と復興の人生ですぜ。

 変革に対応するには自己意識が重要で、それを支えるのは教育であるとして、オンライン教育MOOCsの意義を本書は説きます。これにも同意します。ただここで大切なのは、教育という提供側の行為ではなく、学習という利用側の意欲です。学習意欲を支える環境を整備しましょう。

「既存の教育機関はMOOCsとの競争に負けないための対応に追われる」という指摘は、著者の危機感の現れです。正しい危機感であると同時に、どこかMOOCsが勝利する状況を期待しているようにも見えます。ぼくはMOOCsをはじめとするIT教育が根こそぎ学習環境を覆すことを期待しています。


 日本版の序文に、日本がいち早く長寿化・高齢社会を達成し、先駆的モデルとなることを指摘しています。期待に応えたいものです。

加計問題の成果とは?

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■加計問題の成果とは?

加計問題、ようやく議論が正常に向かっているようです。
ぼくは本件は岩盤規制が本質という立場です。政権の強引な手法が問題だという人も多いけど、それだけ無茶に「行政をゆがめ」ても獣医学部50年の岩盤は1個しか砕けない、ということです。

メディアでは、政権の横暴や不透明さを叩く声が多い一方、特区で改革を進める側の声も報じられるようになりました。
あの八田達夫先生が「原則をまげたのは、むしろ獣医師会」と発言しているのは、大人しゅうしといたけどええかげんにせえよ岩盤、という知識層のメッセージと受け取りました。
「特区民間議員獣医学部1校限定は獣医師会の要望」

国家戦略特区を利用した規制緩和の全国展開を推進する。それが本筋です。
岩盤とは何か、誰が守っているのか、それを打破する政策とは何か、が共有されるようになってきました。
「地方創生相特区利用の規制緩和全国展開の考え」

先立って駒崎弘樹さんが「加計学園問題、国家戦略特区が悪いのではない」と意見表明をしていましたが、そちらの方向に議論が傾き始めたと思います。

「国家戦略特区・福岡市の市長民進党の特区停止法案に「耳を疑った」」とする声も、響いてきているように感じます。



ずっとぼくは岩盤規制を砕く側に身を置いてきました。85年の通信自由化は公社独占という巨大な岩盤を崩し、参入規制を解く仕事でした。通信は岩盤ではなくなりました。同じく放送も岩盤でしたが、衛星やCATVの参入、通信・放送融合の進展などを通じ、岩盤ではなくなっていきました。

でも岩盤はあちこちに残ります。農水、運輸、医療、そして今回の教育。もちろん文科省にも改革を進める官僚はたくさんいます。ぼくも彼らと教育情報化という改革に力を入れてきました。科学技術や著作権・知財を担当するみなさんも進歩派です。

岩盤の攻防は、難しい。規制を強化するよりも、緩和するほうが難しいことが多いのです。民間の既得権があるからです。それが岩盤です。民民調整の問題です。今回も、獣医師会が岩盤をなし、そこからの政治的な意を受けて、文科省・農水省・厚労省が壁となってきたと報じられています。

流出した文書からも、攻める側も守る側も、政も官も汗だくになって、怒鳴ったり握ったりして調整しているさまが読み取れます。それでギリギリたどりついた答えが、これまで手を挙げてきた加計一つだけ認めて手を打つ、ということだったのでしょう。

今回の騒動で、岩盤「維持」に戻ってしまうことだけは困ります。ぼくは今、Pop&Techの国家戦略特区を東京に作り、電波、ロボット、ドローン、サイネージ、起業、ビザなど各種規制緩和ができるよう仕込んでいるところです。首相のお友だちではありませんが、実現したい。



文科省「大学の設置認可制度に関するQ&A」という冊子には実にいいことが書いてあります。

以前は大学設置を規制していた。
「しかし近年は社会の多様なニーズに柔軟に対応し、自由な競争により大学が発展していくことが必要との考えから、どのような分野・地域であっても、大学設置基準等の法制を満たしていれば設置することができるようになりました。」
「地域や分野に制限はなく、社会のニーズを踏まえて設置することが可能です。」
これが文科省のやりたいことです。大筋で、いい行政です。

ところが、その下に、
全体として過剰を招かないためなどの理由から、医師・歯科医師・獣医師・船舶職員の4分野については、引き続き抑制することとなっています。」
とだけ、しれっと断りがあります。あからさまに理屈が立っていません。
教員、看護師、薬剤師、保育士、航空・・似たような分野はいろいろありますが、この4分野だけ。これが岩盤です。

これは実は文科省がやりたいことではありますまい。厚労・農水などの政治プレッシャーで残されている。その点、文科省もお気の毒なのです。

獣医学部を増やすこと、措置を特区から全国に広げることに対し、需給バランスが云々と批判する声も聞きます。かつて通信分野の参入規制を緩めることに対して立ち向かったのと同じ理屈。なつかしいです。この2030年で多くの分野でそうした規制が緩和・撤廃されていき、結果、一部の分野に岩盤が残っています。それを残す正当性は、岩盤側に挙証責任があります。



官邸の指示があったのか。忖度があったのか。文書が本物か。友人へのえこひいきか。メディアが論じてきたどの疑問も、ぼくには本質とは思えません。役所の文書管理や情報の共有方法に問題があるとは思います(機密っぽい情報を「取扱厳重注意」表示もなく、責任者不明のまま共有する管理が外交や国防で行われたらゾッとします)が、それも本件の本質ではない。

総じて言えば本件は、

1. 岩盤規制を叩くことと、岩盤を温存すること、どちらに理があるのか。

2. 政権主導で官僚を抑えて進める近年の方法と、政権の意向に関わらず官僚が行政を進める過去の方法と、どちらが妥当か。

を問いかけるものであり、それを考える機会を提供してくれた騒動です。

多くのメディアは「反岩盤を叩く=反政権」の構図で論じてきました。野党はそれでいいんですけど、メディアとしては、その結果が岩盤擁護に向かっていいんだろうかとぼくは懸念していました。ただ、これがじっくり報じられることによって、岩盤なるものがどういうものか、それが共有されることにつながったのではないかと思います。


ぼくの希望としては、この騒動の結果、1.岩盤を叩くことの意味が再認識され、2.昔のような官僚の専横でなく、政官のいいバランスが得られるようになることをもって、成果となればいいと考えております。

リヴィング・スルー・ザ・キューバ

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■リヴィング・スルー・ザ・キューバ
 街のどこにいても、ボンゴ、コンガ、トランペット、サックスが聞こえてくる。ヴェンダース「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」でキューバが「発見」されて20年になる。が、足を運んだのは初めてだ。ライ・クーダーのように音楽の邪魔をしたりせず、楽しむ。


 XTCの最高傑作アルバム、Black Seaをウォークマンに入れて、ロンドンで“Towers of London”を聴いたのが81年。もっとよく聴いた“Living through another Cuba”こそ現地で聴かなきゃ、と思ってから36年経っていた。


 歌とギターはすぐ「ぴんから兄弟」だと判別できるが、ギター、フルート、ベース、マラカス、ボンゴの編成はラブユー東京「黒沢明とロス・プリモス」、森とんかつ泉にんにくカーこんにゃく「ブルー・コメッツ」、どちらが近いか、などとかつての奴隷・家畜市場で考える。


 ハバナにも宮川左近ショウがいる。
 男同士でいたって色気はないけれど。しっかりやりましょ時間まで。


 広場で突然はじまった女子ルンバに、手拍子したいと思えど、カウベルは3+3+2の8拍子で、隣のコンガは3拍子、だから24拍で1節か、その横のコンガはひたすら三連符を打ち、乗せるヴォーカルは何拍子かもわからない。入り込めない土着がある。


 のたうつドラムに、ためにためるトランペット。キューバのド演歌。
 打楽器5人にベース1人(リーダー)。ホーン3人にピアノ1人。歌5人にダンス2人。計17名、システムとデザインと営業。いい構成の企業である。


 街はデング熱の消毒をしているから、あまり出歩くなと通りすがりのオヤジに叱られた。だけど、テレビじゃ革命広場で兵士たちがカンテラ右手に行進しているし、黄と黒のボーダーの服でミツバチに扮した子どもたちがキューバ国旗を振りながら続いている。みんなカストロの遺影に向かって出歩いているよ。


 内務省の壁はチェ・ゲバラの肖像で、隣の情報通信省はカミーロ・シエンフエゴス。ここはまだ革命の中に生きている。だが、カストロが死に、アメリカとの国交回復が進むと、たちどころに変化してしまうのではないか。


 戦後日本が一夜で親米に反転したように。フェリーニのローマで、現代の空気に触れた古代絵画が消え失せたように。少女が悪女にメタモルフォーゼするように。
 だからその前に、ハバナを網膜に焼いておきたい。


 骨の髄までシボレーで。轟音と黒煙はヒドいがサスペンションは悪くない。キャデラックも、ビュイックも、フォードも。1950年代の丸いアメ車や東欧の四角いクルマは、いずれ入れ替わってしまうんだろう。


 それはよそ者の身勝手なノスタルジー。彼らにとってはレトロではなく、大切にしている実用なのだから。鎖国の江戸文化が美しいのは、西欧や明治の視線に過ぎまい。


 ほぼ何も売ってないマーケット、配給制のパン。開発が進む新旧市街から一つ路地を入ればすぐ廃墟が続き、そこに住まう人たちにとって、ぼくのノスタルジーや網膜など間違いでしかなく、だけど老人も子どもも、オラ、オラとにこやかに声をかけてくる、その屈託のなさに戸惑う。


 かつて西欧人はここをジパングと読んだ。ここにとっても日本にとっても身勝手な命名だ。
 スペイン、イギリス、アメリカに支配されてからの革命をなし得た彼らは、社会主義同志が脱落する中もしたたかに生きざまを貫いている。


 かくいう日本だって手練の社会主義であり、相対的に「まし」だと思っているだけで、ここんとこ格差社会を修正しにかかっているアメリカだってイギリスだって、似たようなものではないか。
(むかし支倉常長さんが来たらしい)


 水を買うのに一苦労する。カネを引き出すにも長蛇の列。
 だけど郵便局には誰もいない。局員も。
 まかせとけ、ぼくが店番をしてあげる。かつて郵便局で社会主義のかたがたと働いていたからねぼくは。


 キューバはこれからどうありたいのだろう。
 甘くないモヒート、ぼくがいつも赤坂の居酒屋で飲んでる黒糖焼酎の炭酸割りと同じだが、それを飲りながらヘミングウェイが「老人と海」を書いた穏やかな眺めは変わらない。


 「カードはあと10年したら使えるよ」とウィンクしながら給仕が言う。そこまで遠くはあるまい。だが彼にとってそれはジョークではなく、日々の変化とはそれほどゆったりとしたものだった。


 革命記念式典を流す国営テレビの隣には、TVeRaiCNNBBCCCTVでさえもお構いなしにチャンネルを据える。25年前に東側がガラガラと崩れたことも知っているはずだ。


 しかしアメ車には飽きるわ。50年代の英仏伊モデルが走り回る特区、間を取って日本にできないか。軽井沢でどうです?井口典夫先生。


 さてもネットには難儀する。観光客が難民と化している。現地の通信会社はローミング対象でなく、遅すぎる上にパケ死必至なので、みな公園のwifiを探し求める。


 1時間2クック(200円)のカードを買って、書かれたIDとパスを入力すれば使える、とガイドにはある。
 実態は異なる。まず、カードが買えない。売り場の列が進まない。売り切れている。路上のマリファナ売りっぽい兄ちゃんから、4クックで買う。あるだけくれい。


 wifiスポットはレアアイテムが出現するポケモンGoスポットのように人だかりがしている。だが、つながったりつながらなかったりするので、祈る。人が少ない朝や夜を狙うと、電波が切れていたりする。祈る。つながったら切れぬことを祈りつつ用事を済ませる。


 道端に風呂敷をしいてあぐらでPCをいじっていると、場を仕切る権限がなさそうな兄ちゃんに「立て」と命じられ、反論の仕方がわからず従う。駅のホームに立ってMac Book Airを片手で操作する普段の訓練がハバナの路上で役立つ。



 普段、起き抜けに、LINE、メール、twitterfacebook、それからNewspicksSmartnewsnikkeiなどをひとしきりチェックする1時間ぐらいの作業を、ここでは5分ぐらいで済まさなければいけない。考えず処理していく。日頃の仕事がいかに非効率なのかを痛感する。


 自分の退化を2点感じた。まずかつては「つないでいた」。2000年ごろには、どこでもどうにかこうにかつないでしのいでいた。ダイヤルアップにしろ有線LANにしろ、物理的につなぎこんだ。


 バーモント州の山奥では屋外から電話線を部屋まで引っ張って強引につないだ。東ベルリンでは壁の異様な形の電話ソケットをいじって無理やりつないだ。ケーブルやコネクタを何種類も持ち歩いていた。各地のプロバイダの番号をたくさんメモしていた。モロッコでPCのLANが飛んだ時はカードを調達してしのいだ。今や手も足も出ない。


 もう一つは、「なくてすます」ということ。「いつでも」つながることがうれしかった頃は、まだネットがなくてもすます余裕があった。「いつも」つながっている時代になったとたん、つながらない余裕がなくなった。


 それはtwitterLINEで常時連絡を取るということだけではない。地図も天気もクラウドの世話になっていて、自分がどこにいるかが切れる不安は案外大きい。スタンドアロンで読み物書き物をすればいいと思えど、ブツは非ローカルのクラウドにあり、調べ物や参照もできない。これは退化である。


 「ショーシャンクの空に」のじいさんがやせた風の二人が寄ってきて、そっくりだ!コリアの!ダンスの!と喜ぶ。Psyに似ているというのだな。西側のテレビで知ったのだな。それでこっちが喜ぶとお思いか。よかろうありがたく受け取っておく。


 ネットが普及すれば、ピコ太郎も知れ渡ることになろう。早くそうなってもらいたい。そっくりだ!ヤパンの!PPAPの! と喜ばれたところで、こっちが喜ぶとは限らぬが。

知財計画2017、(ホントに)整いました。

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■知財計画2017、(ホントに)整いました。

首相官邸にて、首相以下全閣僚出席のもと知財本部会合が開かれ、知財計画2017が決定されました。
ぼくは委員会の座長として出席しました。

ぼくの冒頭コメント:
 映画やテレビ番組などの海外展開は成果が現れ始めました。
 リオ五輪の閉会式で総理がスーパーマリオに扮した、そのメッセージも世界に伝わりました。
 2020年に向けてクールジャパンの発信を強めるべきです。
 そしてそれらコンテンツは、AIIoTなどの新技術と組み合わせる戦略を立てる段階にあります。
 今回とりまとめたAIやデータの知財システムの政策と、政府が同時に進めているIT戦略とを、車の両輪として回していくことをお願い致します。


知財計画2017、コンテンツ関連は、第4次産業革命への対応と、コンテンツ力の強化の2本柱。
具体項目は以下のとおりです。

I.第4次産業革命(Society5.0)の基盤となる知財システムの構築
1.データ・人工知能(AI)の利活用促進による産業競争力強化に向けた知財制度の構築

 ①データ利活用促進のための知財制度等の構築
  契約ガイドライン、データ取引市場、公正競争秩序の確保
 ②AIの作成・利活用促進のための知財制度の構築
  著作権制度、オープンデータ推進
 ③第四次産業革命の基盤となる著作権システムの構築
  権利制限規定、拡大集中許諾制度、教育情報化
など

2020年とその先の日本を輝かせるコンテンツ力の強化
1.コンテンツの海外展開促進と産業基盤の強化

 ①継続的なコンテンツ海外展開に向けた取組
 ②コンテンツと非コンテンツの連携強化
 ③クリエイターの創造環境整備
 ④新技術によるコンテンツ表現開発の促進
  ARVR、ドローン、AIなどを活用した制作支援
 ⑤模倣品・海賊版対策
  リーチサイト、サイトブロッキング等の対策
など

2.映画産業の振興
 ①映画産業の基盤強化のための取組
 ②海外展開の質的・量的拡大に向けた取組
 ③ロケーション支援の強化に向けた取組

3.デジタルアーカイブの構築
 ①アーカイブ間連携と利活用の促進
 ②分野ごとの取組の促進
 ③アーカイブ利活用に向けた基盤整備

AIやデータの活用促進策、コンテンツ海外展開や映画産業の振興に関してはこれまでメモしてきましたので略します。


2012年以来、知財計画には教育情報化の記載もあります。今年はデジタル教科書に関し、以下のとおり整理されました。著作権制度の対応がクローズアップされました。教科書・教材の著作権処理問題は民間の対応も促されるものであり、DiTTとしてもこの課題に取り組んでいきます。

「デジタル教科書の有する公共性等を考慮し、その学校教育制度上における位置付けを踏まえ、デジタル教科書についても、公表された著作物の掲載が必要な限度で認められるよう、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)」

なお、学校教育制度上の位置付けを踏まえ、とあるとおり、これはデジタル教科書は学校教育法等の改正が前提となっています。その改正もこれからのこと。制度の整備がしかるべく進むよう、後押ししてまいりたく存じます。


関係閣僚から発言がありました。
文科大臣:柔軟な權利制限など著作権システムを構築。小中学校からの知財教育を推進。
経産大臣:特許法・不正競争防止法などの改正を検討。コンテンツ海外展開を推進。
総務副大臣:放送コンテンツの海外展開を2020500億円に目標を引き上げ。

オッと思ったのは、農水大臣の「農業は知識産業。スマート農業など攻めの農業を推進する。」という発言。どうした農水省。いいぞ農水省。
金融は知識産業、という金融大臣の答弁を。医療は知識産業、という厚労大臣の答弁を。運輸は知識産業、という国交大臣の答弁を求む。

委員からも発言。
川上委員:AIの開発は若手に予算を回そう。
五神委員:データ活用の規制緩和を。
迫本委員:タテ割り・単年度予算の打破を。
竹宮委員:アーカイブ対応の強化を。


これを受け、安倍首相は「知財創造教育を推進する。コンテンツによるインバウンドを強化する。デジタル・アーカイブの工程表を作る。」としました。知財計画の実行、よろしく。

加計問題は岩盤官僚も乗った結果じゃないかと思えてきた。

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■加計問題は岩盤官僚も乗った結果じゃないかと思えてきた。

加計問題でまだ政権や内閣府を叩くメディアは岩盤の何たるかをわかってないなと思いつつ、文科省を叩く側も構図が読めていないと思うことがあります。本件は文科省だって被害者じゃないかと思うから。 

だって文科省は大学の設置を自由化する方向で政策を進めてきていて、獣医など4分野だけが岩盤として残っているわけで。だけどそれは文科省の意思じゃないですよね。

岩盤側の農水・厚労の官僚だって、好んで岩盤を擁護しているわけではありますまい。本心で岩盤を守りたいとしたら変態ですよ。あくまで業界やそれをバックとする政治からのプレッシャーで動いている。 

ぼくも現役のころ、岩盤を守ろうとする役人とずいぶん闘いましたが、いずれのケースも、担当する業界や議員との板挟みで苦しみ、落としどころを探るものでした。業界や議員の意向を汲んで行政を進めないと左遷ですから。

たいてい厄介な案件は官僚が議員から吊し上げを喰らいます。民間の支持者から押された議員は、それに対峙する民間との調整を自分ですることは滅多になく、間に立つ官僚を吊し上げて仕事したことにします。民民を調整して落とし所を探るのが官僚の役割です。

今回の件、そういう意味では、文科・農水・厚労省ともさほどの抵抗や理論武装をせず、あわわあわわとなぎ倒されたように見えます。それは、ひょっとすると、岩盤崩しの阻止にわざと汗をかかなかったんじゃないか、とも思えてくるのです。

政権の意向で岩盤を崩そうというんだから、乗っとけ、となったんじゃないか、という気もするわけです。岩盤側に立ち向かうのは政権であって、政権の強さをいいことに、板挟みを避けたんじゃないかと。

官僚の気持ちを忖度するとですね。

だって課長・審議官級の協議で決しているわけでしょ。役所がホントにもめたら事務次官同士の折衝を経て官房副長官裁定まで行きますもん。ぼくも現役のころ、そんな案件を2回担当したことがあります(いずれも相手は通産省でした)。

現に流出した文書からは、政権側の政務が岩盤側の政治家と調整するさまが読み取れます。本件、官僚はあまり実質的な役割を果たさず、政治vs政治でコトを進めたんじゃないかと。

とすれば、けっこうこの国の政治は機能してるとも読めるのでした。


全方位にチョ~好意的にうがちすぎですかね。ぼくは。

ニコニコ超会議2017

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■ニコニコ超会議2017

ニコニコ超会議@幕張。6回目。
ポップ&テック&参加型の、世界最重要イベント。
これまでもメモしてきました。
13年
14年
15年

昨年は来客がキャパ超えを見せる一方、工作系やアカデミックな色彩が薄まり、限界かな?と思われた超会議。
でも、またパワーアップ。
今年は、超・超人スポーツとして、初めて出展側に回りました。自分でやんなきゃね。


超・超人スポーツ。
ラスボス小林幸子さん、超柔道・篠原信一さん、超シンクロ・青木愛さんが参戦くださいました。


超・バブルジャンパーに篠原信一さんが挑戦するという。
そんなことしなくても超人なんですが。デカい。


超柔道・篠原vs上林博士。



超・対戦VR対戦HADO。超人どうしの闘い。ラスボス小林幸子さんはこの日のために対戦衣装を新調したという超スポぶり。



バーチャル上では小林さん側にラスボスが降りてきて圧勝でした。
ホッとしました。芸能界の秩序として。


超・ドローン、「ドボーン」by TBS。ドローンからの映像で場内の答えを探す早着陸クイズ。
さあて、これが新しいスポーツに育つかな。


超「ARMS」ブース。Nintendo SwitchのARMSは、超スポですよね。気になりすぎておりまして、ブース凸撃。いいね!



NTTはおかしな会社になりました。昨年に続き、超歌舞伎を出展。「花街詞合鏡」。伝統芸術(歌舞伎)と、世界に誇るポップ・キャラクター(初音ミク)と、先端技術(NTTのkirari)と、炎上型ユーザ参加(ニコ生)という、「これぞ日本」の凝縮イベント。よろずや!はつねや!電話屋!



昨年、安倍首相出席の官邸での会議で、これを2020東京大会のオープニングで、ポップ&テック伝統芸術の代表としてやりましょうという議論になりました。毎年進化を続け、実現しましょうよ。


NTTのウルトラフューチャーミュージアムも面白い。上下左右のアングルから違う視座で立体映像がみられる仕組みwith東北大学。このキャラ、「みかか」という。みかか、が何を表すか、ここに集う世代は知らないだろうな。


NTTのロボット大喜利。corevoがクラウドAIでお題にお答えするよ。


NTT☓ファナック。エッジコンピューティング、ロボットアーム。マッチョ。
攻めるね、NTT。


もう見て回る気力がないので、あとは目についたものだけ。
自民党はカレーでしたよ。党本部の会議に呼ばれると食わされるカレーですよ。
官僚だったころ、昼休みの部会を3件かけもちしてカレー3杯食った大臣をみて、ぼくは政治家にはなれないと思いましたよ。
そのかた早死にしましたが。


銀行もブース出してるのね。昨年のCEATECにもMUFJがフィンテックで出展してたもんね。
みずほはITAIの新会社を設立するというニュースもあるし。銀行がようやくフロントに立とうとしてますね。


このイベントはインフラ。

こういうことが毎日できるよう、ポップ&テック特区のCiPは場作りを進めます。

thinkC 10周年!

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■thinkC 10周年!

thinkC 10周年記念パーティー@神宮前スマートニュース。
福井健策さん宮台真司さんドミニク・チェンさん赤松健さんなどなどなど。

冒頭あいさつ申し上げました。

2006年のタイムマガジン、パーソン・オブ・ザ・イヤーは、表紙の鏡に映ったあなたの顔をPCが囲んでいて、左下に「You」とある。デジタルでパワーアップしたあなた、一人ひとりが情報を生産して発信して力を持つ社会。みんながデジタルになるWeb2.0が流行語になりました。

twitterができたのが2006年。iPhoneの登場はその翌年。thinkCが生まれたのは、スマホとSNSによるスマート革命、ソーシャル革命の前夜でした。thinkCはその到来を見越して、著作権をみんなのものにする運動でした。

しかし、みんなというのは、ユーザも、クリエイターも、業界も、みんなです。落としどころを見つけるのは難しい。だけど、みんなで考えるきっかけにはなりました。

みんなで考えていたら、TPPという、別のみんながやってきて、厄介なことになりました。すると今度はアメリカのみんなが、トランプさんを選びました。
また局面が変わります。引き続き、みんなで考えましょう。

同時にまた別の波が来ています。IoTとAIというやつです。AIが生む著作物や知財をどうするのか。福井さんらも参加する政府の委員会で、日本は世界に先駆けた議論を進めています。これまたthinkCのみなさんに相談を持ちかけることになるでしょう。

10年たって、話題は移れどネタは尽きません。
まだまだCをthinkしていくことになります。よろしくご指導のほどを。


写真おおきに。

データ流通にも競争政策を

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■データ流通にも競争政策を

日経新聞の経済教室に、大橋弘・東京大学教授が「新時代の競争政策()IT世界の寡占化課題に・データ囲い込み 対応急務」という記事を寄稿している。重要なポイントを突いているので、引用しつつコメントします。

「データの集積と利用の間に相乗効果が働くとき、その関係はネットワーク効果を持つという。ネットワーク効果が働くときには、データを集積できる勝者とそうでない敗者の間で明暗がはっきり分かれることから、市場は寡占化する。」

  ネットワーク効果は本来、交通や通信などの物理的な網が、ユーザが増えるほど価値を高めることを指していたが、それがITでは上位層のプラットフォームやアプリケーションに主体が移り、さらにはその上を流れる「データ」に主体が移ってきた。とても重要なポイントです。

「欧米の競争当局も近年、データ集積と寡占化について注目している。昨年にはドイツの連邦カルテル庁とフランスの競争当局が連名でリポートを発信し、米連邦取引委員会もビッグデータをテーマとする文書を発表している。」

  日本ではIT政策・知財政策としてデータの利活用促進がこの1年のテーマとなりましたが、競争政策上の議論はさほど聞こえません。

「欧米での議論では競争政策上の懸念として、既存事業者のデータ囲い込みにより、新規参入者の新たなサービス提供機会が奪われる可能性が指摘されている。こうしたデータの囲い込みは新たなイノベーション(技術革新)の芽を摘み、産業活性化を妨げかねない。」

  GoogleAppleはじめ巨大国際IT企業に対し、EUや欧州各国は税制や競争政策上の課題をつきつけているが、その論点がデータにも広がっている。これに比べ日本の当局は、米IT企業に対するスタンスは緩いです。国内企業に適用されるルールが海外勢にはスルーされるケースも散見されます。

「AI技術がBtoB(企業向けサービス)にも急速に浸透するようになり、ものづくりの世界でもデータ集積に対する競争政策上の懸念が生じている。」

  AIの重要性が急激に高まる中で、その利用力の決め手が「データ」であることが共通認識となってきました。いかに自らデータを確保・洗練し、いかに外部のデータを利用・共有できるかがポイントになっています。

「国民・消費者がBtoCで、自らのデータがどのように事業者間で共有・活用されているかを事実上把握できない懸念を踏まえれば、財やサービスと同様に、データに関しても所有や利用のあり方を明確にすべきだ。」

  政府のIT本部では、データの所有・利用・流通のためのインフラ整備が論じられており、知財本部ではデータの利活用を促進するための知財システムが議論されています。ぼくは後者の共同委員長を務め、この春ようやく政策合意にこぎつけました。

「企業が保有するパーソナル情報を個人に還元して管理を促す仕組みとして、個人が自らのデータを管理する「パーソナル・データ・ストア(PDS)」という考え方が生まれつつある。この概念をBtoBの世界にも拡張しつつ、データ所有・利用権を確立していくための議論を政府全体で始めるべきだろう。」

  PDSは個人が自ら管理するという点で重要な概念。「データ取引市場」の整備と合わせて、データ利用・流通のインフラとなります。このあたりがIT本部中心に議論されていることがらです。

「わが国の産業競争力を強化していくうえでも、安心・安全にデータが流通・活用される環境の整備が急務だ。特定の事業者が不当にデータを囲い込んだり、不公正な方法により競争をゆがめたりする事態に対して、競争当局が調査・摘発できる体制と専門性を確立する必要がある。」

  なるほど。IT政策としてのインフラ整備と、知財政策としての知財システム整備の両輪を回せ、という主張をぼくはしてきましたが、さらに競争政策としても管理すべきという状況にあるということですね。ぼくの活性化論は甘く、海外の強者に対する政策論が必要ということでしょう。

「こうした競争的な基盤が備わって初めて、昨年12月に施行された官民データ活用推進基本法や今年5月に全面施行される改正個人情報保護法の下でのデータ流通・利活用が、真の国民生活の利便性向上につながると考えられる。」


  ぼくが普及委員長を務めるオープンデータ推進団体「VLED」の今年の勝手表彰グランプリは「官民データ活用推進基本法」に授けられました。基本法の理念を具体化するよう、環境整備が求められます。関係者のみなさま、よろしく。

LIVE MUSIC HACKASONG

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■LIVE MUSIC HACKASONG

 このところデザインやテック系の学生から、商品やサービスのプロトタイプ作ってユーザ評価も良好という研究報告をよく受けるんですが、その研究の意味は何?と聞き返すことが多い。だって評価は良好に決まってるもん。タダで新しいモノ使わせてくれるなら。

 商品やサービスの評価は、その研究のスポンサーが投資に値するか、ユーザが購入するかですよね。前者はスポンサーに直接聞くべきだし、後者は潜在ユーザに「価格」を示して評価させないとリアリティーがない。研究としては成り立つのかもしれませんが。

 なにせちかごろ無料のものが多いから、価格を認識しないでユーザ調査したりするんですが、その場合、ではそのビジネスに誰が投資し、誰が広告を出稿してくれるのかが裏についてないとね。

 デザインにしろテックにしろ、それが実商品や実サービスを前提とする研究は、マーケットやビジネスを認識していないと、独りよがりになりがちです。ウチの大学院がマネジメントも柱にしているのはそういう意味です。

 さて、そんなことを考えつつ、ポップテック特区CiPビルボード「LIVE MUSIC HACKASONG」最終審査会。審査員長を務めました。会場のお客さまたちと一緒に、10組のプレゼンを審査しました。

 技術者やプログラマーが集中的にプログラムを制作するイベント、ハッカソン。普通は1日-2日で作り込みますが、今回は11月から3ヶ月かけて作りました。テーマは「ライブ体験の拡張」。Techを使ってPopをプロデュース。バーチャルでリアルを演出するものです。

 学生や起業家の卵たちが、プロのサービサーらとともに、商品やサービスのプロトタイプ作って、スポンサー候補のかたがたにプレゼンをします。学校や学会で、リスクを負わない相手に対してプレゼンするのとはわけが違います。ヒリヒリします。

 でも、エンタテイメントのイベントである点がこのハッカソンの特徴。楽しくやりました。

モデレーターは吉本興業カラテカの入江さんと、KMD佐藤千尋さん。電通ラボ東京、東芝、Napster、レコチョク様に技術提供をいただきました。審査会ライブはLINE LIVEで生中継しました。


ステージから投げキッスするとその先の客が持つウチワが光る。ライブの盛り上がりをスクリーンに示す。
音楽に合わせてドローンが飛ぶ。
Pepperがライブ360度映像をVR送信する。
アーティストの脳波データをステージで可視化する。
豊かなアイディアの実装がプレゼンされました。

優秀賞は3次元の自由な場所からライブ映像音声を再生するシステム。
最優秀賞はライブ映像の収録スイッチングを自動で行う装置。
いずれも即実用のレベル。乞うご出資!


出場者の中には慶應KMD、SFC、SDM、明治など学生もいれば、IT企業社員もいれば、ベンチャー起業家の姿もありました。純朴なテック系プレゼンの合間にはライブも。SETAさんと佐橋佳幸さんのデュオ、素敵。佐橋さん(松たか子さんの夫)、気さくなかたでした。


ぼくの総評:AR,VR、ドローン、ロボット、ウェアラブル、IoT、技術のおもちゃ箱でした。だけどやっぱりワクワクするのはライブ。ライブというリアルなポップと、バーチャルのテックを掛け合わせる新世界を2020年に向けて作ろう。参加型で。みんなで作ろう。またやりましょう。

[閲覧注意] いかーん、日本の若者は創造力を欲しとらん!!!

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[閲覧注意] いかーん、日本の若者は創造力を欲しとらん!!!

Adobe、日本の若年層(12-18歳)に関する衝撃的な調査発表。
あまりのことにつき、報告します。
「日本のZ世代は世界に比べて「創造的」ではない?」


「自分は創造的か」
47%、独44%、英37%、日8%。
日本の若者だけが自分を創造的だと思っていない。



「将来、何かを「作る」仕事をしている」
83%、英75%、独70%、日43%。
日本の若者だけが創造する仕事に就こうと思いっていない。



「創造性が求められる仕事や職業はたくさんある」
77%、英75%、独73%、日31%。
日本の若者だけが創造力に期待をしていない。



「将来に向けて準備ができている」
73%、独61%、英49%、日16%。
日本の若者だけが将来を向いていない。



「将来の職業におけるネット上の行動の重要性」
81%、英80%、独73%、日39%。
日本の若者だけがネットの力を重視していない。



「アクティブラーニングや実習・演習が効果的」
78%、英65%、独43%、日35%。
日本の若者は旧来の暗記型教育でよいと考えている。


総じて言えば、自分は創造的ではなく、創造する意思も可能性も見出していない。
ネットの力も重視しておらず、旧来の暗記型教育でよいと考える。
いか~ん!!!!

昨年のAdobeの国際調査で、世界から創造的と見られているのに自分はそう思っていない姿が浮き彫りにされショックを受けたところでした。
各国の大人に対する調査でした。
「創造的なんだけど創造的じゃない日本」

しかし今回のは、もっと暗澹たる気分になります。
次を担う若者層の認識であり、マンガ・アニメ・ゲームやネットでクリエイティビティを育んできた、ポジティブな自画像を描いている、と期待する層のことだからです。

19世紀までの農業社会=土地。
20世紀の工業社会=資源。
どちらも「持たざる国」の日本は、それを戦争に求め、敗れた。
21世紀の情報社会=創造力。
その「持てる国」になるにはどうする。
持つ「意思」と「教育」だと考えます。

どうすれば若年層に「創造」の意思と可能性を持たせられるか、考えません?

Adobe様に指摘されるまでもなく。

オープンデータVLED勝手表彰2017

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オープンデータVLED勝手表彰2017

 オープンデータVLED勝手表彰。各地のオープンデータ活動を勝手に表彰させていただきます。産官学連携による取組で、今回で5回目になります。

 いま政府はAIとIoTによる第4次産業革命に突き進んでいて、競争力の決め手はデータそのものだ、という共通認識が持たれるようになっています。ビッグデータをいかに利活用できる環境を整備するかが最重要の課題です。

 その中で、今回はこれまでとはずいぶん異なる主体が表彰されました。下記のラインナップです。


最優秀賞
官民データ活用推進基本法
各党議員(代表:平井たくや衆議院議員)

審査員の声:オープンデータ、ビッグデータによる価値創出を加速するエンジンとなる法律。政府データカタログ、政府標準利用規約2.0に次ぐ重要なマイルストーンが達成された。社会に対するオープンデータ推進の強い動機づけになる。今後この法律をもとに具体的な施策が続々と生まれることを期待する。

 平井議員は、議員立法で推し進めたこの法律がオープンデータを具体的に進めることになるだろうが、データを使えば国民生活が豊かになることを広く伝えていくことが大事だと指摘されました。それはわれわれVLEDが汗をかかなければなりません。宿題をいただきました。


優秀賞 4点

「ネ申 Excel問題」への取組
河野太郎衆議院議員

審査員の声:文科省の科研費申請に求められたExcel罫線のムダを排した議員の行動。長らく日本の生産性を落としてきた帳票の問題に政治家の立場から切り込んだ。使いやすいデータの提供のために避けて通れない課題であり、今後は他分野に対しても指摘していただきたい。

 これに対し河野議員は、役人に「やめとけ」とヒトコト言っただけのことだが、それで動くことがあれば他にもやるので教えて!とのこと。はい、いろいろ持ち込みます。



国税庁法人番号公表サイト及び法人インフォメーション
国税庁、経済産業省

審査員の声:ID・コード体系の管理と後悔は公的機関の役割そのものであり、これを機械可読な形式で提供するというお手本のようなサイト。法人番号の利用可能性は広く、有意義な社会インフラ。


厚生労働省によるNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のオープンデータ化
厚生労働省

審査員の声:47都道府県の個性の豊かさが日本の大きな魅力。ケガや病気の多さから見えてくる県民性を分析することで、地域の新しい宝や課題が発見できそう。


都道府県議会議事録横断検索「yonalog」及び地方議会議事録横断検索「議事ロックス」
Bitlet、小田恭央さん

審査員の声:地方議会の議事録というオープンデータを使ったうまい活用例。シンプルでわかりやすいサービスで、議会への関心アップに貢献した。



スポンサー賞
CiP協議会賞
ルヴァンカップ決勝(360°自由視点映像実証実験)
日本プロサッカーリーグ、キャノン
評:スポーツ観戦コンテンツの新たな可能性を示し、2020東京オリパラ大会に向けて、その応用が期待される。
副賞はクルン(360°歯ブラシ)。


融合研究所賞
除雪車情報のwebAPIによる公開と通れる雪道MAPの開発
会津若松市、トヨタIT開発センター、CODE for AIZU、会津大学、デザイニウム
評:雪国のニーズを反映し、データ保有者側とサービス開発者側がうまく連携、新たなサービスモデルを提示した。
副賞は伊達ウィスキーとシャーのマグカップ。(Data ShareをもじってDate とSharらしい)


ニューメディアリスク協会賞
神戸市・バルセロナ市連携World Data Viz Challenge 2016
神戸市
評:海外姉妹都市と連携したデータ活用ワークショップ開催は斬新で、データアカデミーなど神戸市その他の取組との相乗効果も期待でき、他都市の模範となる。


 ぼくのコメントです。

 勝手表彰の最優秀賞、1年目は鯖江市。2年目はオープンデータの地域連合。3年目は東京メトロ、公益企業。4年目は静岡市とトヨタ、自治体と民間企業のセットでした。
 そろそろ政府が取るかな、と思っていたら、立法府が当選。驚きましたが、順当です。優秀賞にも国会議員が入りました。
 想定を超えて広がりをみせるオープンデータ。法律や国会の後ろ盾も得て、新しい局面に入ったということでしょう。政産官学連携でオープンデータ大国の道を歩みましょう。

 受賞者のみなさまにはおめでとうと言うべきところ、毎年申し上げているが、これは勝手に表彰させていただいているので、受賞されたみなさま、受賞してくださってどうもありがとう。

ドローンレース@仙台その2、やってまいりました!

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■ドローンレース@仙台その2、やってまいりました!

JAPAN DRONE NATIONALS 2017
ソウルで開催される国際ドローンレース大会の日本代表選考会。
XEBIO ARENA仙台にて開催しました。
海外の男女トップパイロットも参戦しました。

昨年に続く第2回となります。
第一回の模様はこちらに。


FPVFirst Person View:一人称視点)のレース。
選手はパイロットと呼ばれます。
ドローンに取り付けられたカメラから送られるリアルタイム映像をHMDで見ながら操縦し、タイムを競います。
熟練になると100km以上の速さで飛ばします。


機体は最大330mm、プロペラは6インチ3枚、ラジコン向け電波を使用。
選手はアマチュア無線4級の資格が必要です。


主催の日本ドローンレース協会JDRAの小寺会長は「新しいスポーツだ」と言います。
電波を使い、デジタルの映像で、操縦する。
ITであり、VRであり、IoTなんです。


仙台市はドローンや自動走行に国家戦略特区として取り組むとのこと。
NTTdocomoや富士通などの民間スポンサーと自治体との連携で実現したイベントです。


小寺会長によれば、課題は2つ。
まず、電波。
日本ではアマ無線免許と開局申請が必要だが、韓国も中国も不要で、日本で国際大会を開催するのに難があるとのことです。
だから海外で行われる国際大会の予選のような位置づけになってしまうのですね。


もう一つは、資金。
パイロットの収入源を確保すること。
これは世界的な課題です。
有能な人たちがこの世界に憧れを持ってもらい、人材を育成・確保するには、おカネが回る仕組みが前提となります。
ライブイベント化と配信システムとでビジネス化したいです。


いずれもまさにeスポーツが直面しているのと同様、制度との調整とビジネス化の問題です。
役所との折衝や配信事業者との連携など、ぼくらが役に立てることもありそうです。
やりましょう。


ドローンはいずれ自動化・プログラム化が進み、監視や防災など公益の役に立つ場面も増えるでしょう。
でも人力パイロットの腕も問われ続けるはず。
ドローン教育の必要性も高まると思います。


そこで、会場脇で、おもちゃのようなドローンを使っての教育ワークショップも開かれていました。
エンタメ化、ビジネス化と並んで教育利用も考えていきたい。
ポップ&テック特区CiPとしても取り組みたいテーマです。



ところで、レースでは、世界No.1パイロットのショーン・テイラーさんが準々決勝で敗退の波乱。敗戦の弁を語る。さて優勝は誰の手に。

・・・85日、TBSGYAOにて。お楽しみに。

CiP2016

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■CiP2016 
 CiP協議会発足から2年、ポップ&テック特区として多くのプロジェクト・活動が動き出しています。基礎はできてきました。政府、海外等との連携策に見るべき進展がありました。昨年度の成果を報告しておきます。

1) 政府予算プロジェクト
 政府の予算を獲得してプロジェクトを遂行する案件が3つ実現しました。純民間の取組として始まったCIPの意義を国も認め、プロジェクトベースで産官学連携を行う仕組みができました。

アーティストコモンズ
 経済産業省の平成27年度補正予算「地域発コンテンツ海外流通基盤整備事業費補助金」の著作権の権利関係情報集約化事業(音楽分野)

デジタルサイネージ
 総務省平成28年度事業「IoTおもてなし環境実現に向けた地域実証に係る調査請負」(竹芝地区)

世界オタク研究所
 経済産業省平成28年度コンテンツ産業強化対策支援事業(世界のコンテンツ消費者に関する実態把握調査)


2) 海外連携
 海外の政府や研究機関との連携が進展しました。今後、人材育成や起業支援などの具体的な連携策を講じていきます。

韓国政府
 韓国政府コンテンツ振興院と起業支援等を内容とするMOUを調印しました。2017年3月15日、ソウルにて調印式を開きました。

マレーシア等研究機関
 マレーシア政府が進める開発構想「イスカンダル」で中心的な役割を果たしている「イマジニアリング研究所」及びセルビア・ノヴィサド大学、セルビア・ズレニャニン市とMOU締結作業を進めています。

スタンフォード大学
 2016年11月17日、スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのシン所長はじめ代表団を迎えたパーティーをCiPが竹芝で開催し、スタンフォード大学留学経験者を中心として50名超の参加がありました。


3) イベント構築
 CiP協議会理事との連携により、新種のイベント構築が進みました。街開き後の活動を形作るモデルとしていきます。

LIVE MUSIC HACKASONG
 理事会員のビルボードジャパンとCiP協議会が連携して約3か月にわたり、「ライブ体験の拡張」をテーマにアイディアソン、ハッカソンを実施しました。ビルボードライブ東京で開催した最終発表では計10チームが作り上げた技術を発表しました。

超人スポーツゲームズ
 内閣官房東京オリパラ推進本部「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査」の試行プロジェクトとして、東京タワーメディアスタジオにて第一回「超人スポーツゲームズ」を実施しました。

KMDフォーラム
 11月26日、慶應義塾大学にて行われたKMDフォーラムで、IT政策研究会、LIVE MUSIC HACKASONGのスピンオフイベントや、起業支援活動としてのビジネスコンテスト、キッズワークショップを開催しました。



 2017年度の方針は次回。
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