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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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CiP2017

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■CiP2017

 ポップ&テック特区CiPは本年度、1)インフラと2)ハブの整備に注力します。 
 これまで進めてきたアーティストコモンズ、デジタルサイネージなどのプロジェクトをベースとして維持・拡張しつつ、1)ポップ&テック特区を形成するインフラの整備(ファンド設立、特区アクション、超学校デザイン、CiP放送局)と、2)内外のポップ&テック拠点をつなぐハブ・プラットフォーム機能の整備(東京拠点、国内拠点、海外拠点、新技術拠点)とを進めます。
 これを整えれば、2020年開業時には、ちょいと魅力のある磁場ができあがると考えます。

1 インフラ

ファンド設立
 起業支援策として、CiPとしてのファンド設立を具体化させます。

特区アクション
 国家戦略特区を活用するアクションを起こします。まずは竹芝地域のプロジェクションマッピングやサイネージに関する特区構想の実現を期します。

超学校デザイン
 大学や研究機関の枠を超えた次世代の教育・研究のモデル「超学校」のデザインを作り、中核を担う組織の誘致を図ります。

CiP放送局
 情報発信を担う「CiP放送局」をデザインします。Vlow周波数帯を使った通信・放送融合実験も併せて準備します。


2 ハブ・プラットフォーム

東京ポップ&テック地区ハブ
 都内拠点との連携を進め、東京の面的なポップ&テック化に寄与します。
 ・竹芝・浜松町・虎ノ門地域の複数の開発プロジェクト
 ・羽田空港跡地第1ゾーン整備事業
 ・渋谷クリエイティブタウンなど渋谷地域
 ・その他 今後再開発・整備が行われるポップ&テック関連事業

ポップ&テック列島ハブ
 国内都市・拠点・活動との連携を進め、列島の連携特区構想を進めます。
  ・京都:京都クロスメディアパーク、京都国際映画祭等
  ・大阪:大阪城公園クールジャパンパーク
  ・沖縄:沖縄国際映画祭等
  ・その他 福岡、札幌など同種の拠点構想を持つ地域との連携

海外連携強化
 海外との連携を強化します。
   ・五大陸のオタク研究者を結ぶ総本山「世界オタク研究所」設立
   ・スタンフォード大学誘致の具体化
   ・韓国、マレーシアとの連携内容強化
   ・台湾、スペイン、フランス等 新たな連携拠点の開拓

新技術交差点
 テック系の連携先を拡張し、コミュニティの交流を促します。
  ・4K8K(映像配信高度化機構)
  ・5G (国内・海外の通信キャリア研究機関)
  ・VR (LAVAL VIRTUAL等)

  ・AI  (理研、NICT、産総研等)

オタク国際シンポを開いてみた。

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■オタク国際シンポを開いてみた。

 ポップテック特区のCiP協議会と、国際オタクイベント協会が共同で「日本コンテンツ愛好家に関する国際研究シンポジウム」~国際化するオタク文化とコンテンツ産業の振興~を開催しました。経産省に支援をいただきました。ありがとうございます。

 王向華(香港大学副教授)、出口弘(東京工業大学大学院教授)古市雅子(北京大学准教授)、植田益朗(アニプレックス コーポレートアドバイザー)内田治宏(マーザ・アニメーションプラネット執行役員)の各氏からまずはお話をいただきました。

 王さんは、日本のコンテンツ産業はマーケットは大きいが、生産者はそんなに儲からず、海賊版の方が儲かると言います。そして、海外にコンテンツ産業を持っていくには異文化翻訳が必要であること強調されました。

 古市さんによれば、中国では90年代にテレビが普及し、セーラームーン、スラムダンクなど日本のアニメが人気を博したが、2000年以降、ネットにシフト。海賊版ではなく、日本のクリエイターにお金を落としたいと考えている人は多いとのことです。

 出口さんは、マンガは非日常的物語から日常の物語へと変化してきていると言います。90年代はアンハッピー物語ばかりだったが、2000年前後を境に全てハッピーエンドになったとも分析します。

 植田さんからはアニプレックスの海外展開について説明いただきました。日本のテレビと同時期に海外でもネット・テレビ・パッケージ等を発信しているそうです。以前は現地任せだったパッケージ販売も、今は自分たちでネット販売しているとのこと。

 MARZA内田さんは産業としてのCG映像制作の可能性を強調。今後、医業などにも広がり、多くの産業につながると言います。しかし日本は映像制作支援制度が海外に比べ乏しく、CiPには産業としての底上げを期待するとのことです。

 これを受け、国際オタクイベント協会(IOEA)代表の佐藤一毅さんにもお入りいただき、ぼくが司会で短いディスカッションを行いました。

中村:IOEAが世界で提携しているオタク系イベントに来るファンの数って年間どれくらい?

佐藤:350万人くらいです。日本のコンテンツ好きな人、親日の人たちが集まります。

中村:そういうコンテンツはローカライズが大事。メディア環境が変わったことによる影響ってありますか?

王:自分でいろんなコンテンツを発信するようになったけど、やはり文化による違いがあります。日本はLINEが流行ってるけど中国・香港の人たちはやらないというメディアの違いも大事です。

中村:日本企業との共同制作が盛んになっていると聞きます。方向性は?

古市:今の中国は資本力があるので、中国がお金を出して日本のクリエイターが作るという体制ができています。が、中国のクリエイターたちも育ってきています。日本はこれから厳しくなっていくかもしれません。

中村:ところでウチの学生でも、日本人はオタクであることを恥ずかしがるが、留学生はむしろ誇っています。オタク文化って変化しているんでしょうか?

出口:オタクの自画像という意味では変わってきているかもしれません。今のオタクは自分たちでメディアを持っています。編集とかもできちゃう。

中村:アニメの国際展開について、Netflixなどが大きなプレイヤーになっていきます。これはピンチかチャンスか、どっちでしょう?

植田:基本的には今まで出てこれなかった人たちにもチャンスが訪れるということ。アニメ業界も、ものを作るアイデンティティや表現が変わる可能性もありますね。

中村:CiPをベースにした取組は具体的にはどんなことを考えていますか?

内田:他業種との交流を進めたいと思っている。

中村:日本はポップとテックの融合領域がスゴい。再融合をやりたいですね。テクノロジー・オタクを生んでいきましょう。  

最後にメッセージをいただきました。

王 :東アジアでの日本コンテンツに関する基盤作りを頑張ってほしい。

古市:日本政府に是非、国を挙げたコンテンツ支援を行ってほしい。

出口:ビジネスと文化の共存関係がきちんとできればいい。

植田:新しいことにチャレンジしていく環境作りに力を入れたい。

内田:日本コンテンツで稼ぎ、それを還元していくというサイクルが作れるよう頑張りたい。

佐藤:文化というものは相互作用するのでオタク文化の世界をどんどん広めていきたい。
 オタク文化のような日本文化が絶え間なく続いていけるよう努めたい。


 うけたまわりました。ありがとうございました。

「躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア」

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■「躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア」

角川歴彦さん著「躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア」。
AppleGoogleAmazon、そしてNetflixを軸とする米メディア大再編と、通信・放送融合から地デジに至る日本の構造変化と限界。ぼくの名前も登場する、ドキドキする本です。読み解いてみます。
はぼくのコメントです。)


2012年、Googleがスマホ、PCTV、タブレットの4スクリーン戦略を立てた話が導入部にあります。

ぼくはタブレットよりサイネージがピースたるべきと考えます。
 スマホ(屋外・プル)、PC(屋内・プル)、TV(屋内・プッシュ)、サイネージ(屋外・プッシュ)だからです。
 メディア戦略を立てる上での分類法が間違っていたんじゃないかなぁGoogleは。


2006年1月ラスベガスのCESGooleAppleMSAmazonのギャング4が配信を宣言したという記述。

ぼくもそれが配信の世界化と通信放送融合の号砲だったと見ます。
 日本は当時ライブドア-フジサンケイ、楽天-TBSの攻防直後で動きが止み、NHKオンデマンドでテレビ番組の配信がスタートするまでに3年かかりました。この3年は大きかった。


AT&Tとタイム・ワーナーの合併に対し、NTTがエスタブリッシュの地位を占める日本では、そうしたダイナミックな動きが見られないという指摘。

逆に言えば、NTTは今後もキープレイヤーになります。その動きによって、構図は大きく変わるでしょう。


1985年のNTT法が強い規制色を持つことも説いています。

実はNTTは縛られていることの旨味も知りつつ、うまく王者として君臨しています。
 しかし150年続いた電話網がAll IPに移行する中、自身が変わるべきことも承知しています。
 NTT法撤廃はいつ来るのか。その時の姿はどうなる。通信政策の最終課題と考えます。


1996年、孫正義さんがマードックとテレ朝に出資した話。

当時、孫さんをぼくが初めて郵政省の幹部に引き合わせました。
 その際、役所側からハッパをかけられ、孫さんが目を白黒させたことがありました。
 結局、孫さんはTVを捨てネットにのめり込みました。
 ホリエモンや三木谷さんがTVを攻める10年前のことです。

 その頃のことを書いたぼくの2000年1月の証言です。怒涛の日々でした。
「前略、高田昭義様」


1994年、江川晃正放送行政局長によるテレビのデジタル化爆弾発言。
 以後16年の地デジ化は総務省の長期戦略。

マルチメディア時代、最後のタブーを破る官僚の発言でした。
 アナログの岩盤を破るのはデジタル技術という必然であり、早晩そうなる。
 戦略というより、乗らざるを得なかったのです。


●通信・放送融合などのタブーについてぼくの証言も使われています。

通信・放送融合も地デジも岩盤だった、あのころ。
「追悼マルチメディアと浜野保樹さん」


●総務省+NTTNHKが光ファイバーやモバイルなどの整備に果たした役割はほめられるべきで、日本のイノベーションは官主導だという認識。

確かに官はインフラと基盤技術は得意です。
 上位レイヤが不得手です。
 ただ、任天堂やソニーのように世界を制したものもある。
 やれなくはありません。


●総務省の3局は通信・放送融合に適合する態勢という視点。

郵政省から総務省に移行させるのがぼくの現役最後の仕事でした。
 しかし通信・放送・政策の3局が総務省では2局に減りました。
 基盤・流通・政策の横割り3局に直したのは菅総務大臣です。


2006年のいわゆる竹中懇・松原懇は所期の成果を残せなかったという評。

懇談会はNTTNHKの規制も扱いましたが、本質は融合推進でした。
 結果、10本以上あった通信・放送タテ割りの法律を横割り4本まで減らし大幅に規制緩和。世界先端の制度になりました。
 それをまだ民間が活かせていない、ということです。


2013年、パナソニックVIERAのネット表示TVに放送局が反発しCMを拒否した。
 2015年Netflixが上陸した際にはパナソニック、東芝、ソニーがTV局の了解を求めずリモコンにNetflixボタンをつけた。

地殻変動を体感させる事件です。


●放送業界にも動画配信の動きが現れた。
 NTVIIJNHKの取組と並び、関西のTV局が集まる「大阪ちゃんねる」にも注目。

吉本興業とNTTぷららがTV局のプラットフォームを提供している点が重要です。
 この分野は東京より大阪のほうが暴れやすい。radikoの立ち上げと同様の構図です。


リオはオリンピック年として初めてTVが売れず前年割れを見せた。
 2020年はピークアウトか。
 4K8K、3D、VR+4スクリーンとパブリックビューイングが進む。

→2020は、映像が茶の間からスマホファーストとパブリックビューイングに移行する。
 それをチャンスとみるか、ピンチとみるか。


●知財を持つ側よりブランド、ネットワーク、プラットフォームを持つ側が勝つという伊藤穰一さんの見方。

ゲームのモデルが変わったということですね。
 著作権を守るほど市場が遠ざかる、というケースもある。
 それを踏まえてゲームに参加しませんと。



 85年の通信自由化、90年代のマルチメディアブーム、2000年代の通信・放送融合、2010年代の4スクリーン。
 そして2020年を迎えます。
 大きな断層を重ねながら、陸続きのメディア変動の歴史でした。
 技術があり、ビジネス戦略があり、政策があって、今があります。

 本書が映し出すポイントはいずれもぼくが重要局面と考えているもので、史観を共有します。
 ではアクションとして何をするのか。
 角川さんはまだパリパリの現役で、前進を続けています。

 ぼくも手を打ち続けたいです。

シェアリングサービスはどうなるの?

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■シェアリングサービスはどうなるの?

先日、NHKからシェアリングサービスの取材を受けました。
オンエアされた部分はちょびっとなので、当日答えたことを書き出しておきます。


Q1 シェアリングサービス普及・拡大の背景は?

若者のライフスタイルの変化と、ITの普及、この2点です。

1020代の世代は経済成長を知りません。
モノを買うこと、所有することへの欲求、それによる差別化への欲求は低く、コストをかけずみんなで盛り上がることが得意です。
欲しいときに欲しいものをちょっとだけみんなで。

そんなライフスタイルをスマホとソーシャルメディアが実現します。
人の持ちものが手のひらで共有できて、その相手の評判もみんながソーシャルで共有する。
みんなが参加してみんなで楽しむインフラが整いました。



Q2 シェアリングサービスは産業を広げるか?

拡大が期待されます。
政府の白書では、世界の市場規模は2013年で150億ドル、2025年には3350億ドル。
国内市場は2014年度233億円、2018年度に462億円、という推計が紹介されています。

UberAirbnbのように、クルマや家など「大きいモノ」のシェアが注目されています。
大きいモノの有効活用はわかりやすい。
それはタクシーやホテルなどプロの仕事を奪う面もあるが、すき間を埋める新事業を産む面の方が大きいでしょう。

ただ、どのサービスが定着するかは地域の事情にもよります。
Uberが生まれたのは米西海岸の交通事情が悪くタクシーもつかまらないから。
日本の都市のような便利な場所では、求められるサービスも異なるでしょう。

例えば日本が抱える課題、介護などの高齢者対応や子育て支援などに強いニーズがあり、それに応える自治体サービスなどが考えられます。
シェアリングサービスは地域性が強く、それぞれのコミュニティに合ったサービスが開発されていくと思います。

シェアできるのはモノだけではありません。
ぼくはあまりモノを持っていませんが、時間を持っています。
これを提供することはできる。
時間や能力という、誰もが持っているものをうまくシェアできる仕組みができると、サービスが広がるんじゃないでしょうか。



Q3 課題は?

「不安」を解消することです。
政府の白書では、日本は諸外国と比較して利用意向が低い。
民泊は中国84%、米国55%、日本32%。自家用車は中国86%、米国54%、日本31%。
利用したくない理由として「事故やトラブル時の対応に不安がある」が特に多い。

これまで日本のサービスは「プロ」が提供し、その水準や安全性を法律などでお上が確保していたのに、シェアリングサービスは「アマチュア」が提供し、お上ではなく提供者と利用者の信頼と評判で成り立つ仕組み。
使う側が賢くならなければいけません。

「評判」を共有するシステムは、レストランの点数やネットオークションなどで馴染みになりました。
シェアリングサービスも同様に、みんなの評価が命綱になります。


Q4 規制や制度はどうなる?

これまでのようなプロを規制するタテ割りの「業法」ではなく、みんながいろんなサービスを生み、そして安心に使える仕組みが求められます。
政府は民間の主体性を重んじて官民連携で環境を整える「共同規制」を進める方針です。

民間が自主ルールを設け、それに従ってサービス内容や主体を「見える化」します。
その水準を認証する仕組みも民間主導で整えます。
政府はこれを手助けする、という仕組み。
従来の「これやっちゃダメ」的な「業法」とはスタンスがまるで違います。

そして政府は、よい取組を見せるサービスや自治体を推奨すると言っています。
叱ってへこますこれまでのやり方と違い、「ほめてのばす」行政です。
シェアリングはITがもたらした新しいサービス。
それを円滑に広げるのに適した手法です。

シェアリングサービスはITをベースにした新しい社会的な仕組みです。
不安もあればトラブルも生じます。
それが広がるには、みんなの「慣れ」が必要で、時間もかかる。

時間をかけて、みんなで育てよう、ということです。

教育情報化☓リテラシー

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■教育情報化リテラシー

デジタル教科書教材協議会DiTTシンポ「みんなで考えよう!情報リテラシー教育」を開催しました。

登壇者は総務省、電気通信事業者協会、ソフトバンク、ヤフー、ニフティ、DeNALINE、安心ネットづくり促進協議会(安心協)、マルチメディア振興センター、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)、インターネットコンテンツ審査監視機構、全国携帯電話販売代理店協会。

青少年のネット安心・安全対策に関わる行政、通信キャリア、プロバイダー、SNS、ケータイ販売、公益法人などオールキャストです。ここまで一堂に会したことはなかったでしょう。

ネット安全安心対策、いわばネットの「影」対策は、2008年ごろから本格化し、安心協やEMAが設立されました。ぼくは安心協を設立する際の世話人であり、EMAも理事を務めています。通信・プロバイダー・SNSにとっての大きな課題となり、法律、フィルタリング、リテラシー教育という、規制、技術、教育の3本柱からなる対策が立てられました。

一方、DiTTが推進する教育情報化はデジタルの「光」を担当し、2010年から本格化。教材会社やメーカーが中心となって、端末配備、ネット整備、教材開発のこれまた3本柱からなる推進策を講じてきました。

その後、影も光も変化がありました。当初ガラケーを念頭に置いていたネット安心安全対策はスマホが中心課題となりました。教育情報化はPCからタブレットに主役が移りました。家庭でも学校でも、個人が持つフラットなネット端末をどう使うのか、という共通テーマになってきたわけです。

そして2016年、双方に動きがありました。安全安心は総務省にタスクフォースが組まれ、新しい対策を講ずることになりました。ぼくが座長を務めました。教育情報化はデジタル教科書の正規化が政府方針となり、プログラミング教育の必修化も決まりました。

家庭でも学校でも、いよいよ一人一台オールネット利用の時代。使わせるのか使わせないのか、という議論は終わり、どう使わせて何をすべきか、という段階に突入しました。光も影も一体として対策を講ずべきです。それを話し合ってもらいました。

総務省・湯本消費者行政課長は、1)普及啓発:リテラシー教育の教材開発や現場連携、2)フィルタリング改善:サービスの名称統一など、3)体制整備:関係団体の連携など が大事だと説きます。この行政、総務省はきちんと動かしているとぼくは見ています。

ソフトバンク、マルチメディア振興センター(eネットキャラバン)からは、子どもたちのリテラシーは進化しており、今や問題なのは「大人」のほうだという指摘がありました。大人が後れている。これに対しニフティは、大人の疑問に子どもが応える取組をしているそうです。

EMAなどから、「学校」の後れを指摘する声も相次ぎました。子どもはわかっているが、先生がわかっていないので、対応が進まない。家庭との差がありすぎる。いじめ問題も、先生がLINEを使っていないので対応策がわからない、という実態です。

これに対し、ケータイ販売店の団体である全国携帯電話販売代理店協会(全携協)は、全国8500店のうち5222店を「あんしんショップ」に認定し、ショップ店員を学校に派遣するなどして地域としての対策に乗り出しているそうです。これは期待できます。

今後、教育情報化が進展しますが、学校の先生方に期待しすぎるのも厳しいですね。民間企業とも連携して進めましょう。その前に、文科省は人事メールが流れて混乱し、大事な情報は紙で、なんて言い出す始末で、まずはそこから改めてもらわないと・・・。

締めにぼくがコメントしました。

「この問題に取り組むみなさんのご努力により、10年前の不安はかなり解消しました。敬意を表します。しかし、環境は変化しました。当時LINEはありませんでした。子どもは前に進みますが、大人や先生の問題が浮上しています。


一方、全携協のような新プレイヤーも登場しています。この場に集まったみなさんと、教育情報化を推進するみなさんが連携すれば、かなり厚い対策が打てます。ネットの光と影を共に引き受けて、ITを安全・安心して豊かに使いこなす環境を整えましょう。」

ハウステンボスに来てみた。

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■ハウステンボスに来てみた。
ハウステンボス@佐世保。
ロボット、VR、ゲーム、プロジェクション、ドローン・・・いま見たいものが全部ギュッと詰まった場所だってんで、見学。ええ、ええ、おしごとですもの。


日本ドローン協会のジャパン・ドローン・チャンピオンシップが開催中。大変な熱気とすさまじいスピード競争でした。


ハウステンボでは障害物のある特設会場を一周するタイムトライアルに挑むドローンレーサーの体験コースも設けています。


超人スポーツ「HADO」のアトラクション3種に挑みました。リアルモンスターバトル、ダンジョンオブダークネス、サモナーバトル。商用化された超スポ。すばらしい。
超スポを商用化し、ビジネスにし、産業にしたい。そして世界の人に楽しんでもらいたい。


子どもでも吉田沙保里さんに勝てるスポーツを開発したい、という超スポの当初目標は、昨年のKMDフォーラム、慶應義塾大学のステージで、6歳児が吉田さんにHADOで挑み、勝利を収めた時点で結実しました。
ぼくはこの日、ボロクソに負けました。


ゲームミュージアム。パックマン、ソニック、トロたちが出迎えてくれます。
歴代の家庭用ゲーム機60種、ゲームソフトのアーカイブもあります。


知財本部の場で、久夛良木健さんがゲームのアーカイブを構築すべきと主張し、実現方策を議論したことがありました。国の政策にまではなりませんでしたが、このような形で実現しているんですね。東京にも作りたいな。


ところで迫りくるゾンビを撃ち殺すこの非道で恐ろしいゲーム、2人で協力して撃ち続けていると、仲良くなるんです。


釣りアドベンチャー。520インチの巨大スクリーンの中で泳ぎ回る巨大魚たちをサオ型コントローラーで釣る。24人同時プレイの得点競技。
魚が食いつくと震えてリールが重たくなり、それを必死で巻き上げる。腕が痛くなります。


釣果。


ロボット館。DMM、タカラトミー、グローリー、三信電気、デンソー、日立マクセル、JiNSなどのロボット大集合。ロボット大国ニッポンの面目。
ロボットの格闘競技大会や、搭乗型ロボットを操縦する対戦なども用意されています。


とはいえ映像ものアトラクションがかなりスベっておりまして、ほほえましく目こぼししておりましたら、巨大プロジェクションマッピング「太鼓の達人」対戦。アンパンマンのテーマがテーマパークに響きます。なんでやねん的で大笑い。


「変なレストラン」。
バーテンは「ダニール」。手ぎわ悪くお酒を作ってくれます。


お好み焼きを焼く「アンドリュー」。焼かれたお好み焼きはビュフェに並びます。


ソフトクリームを作るのは「やすかわ君」。安川電機製なのですな。ベタですな。九州の会社だから許す。


「変なホテル」。


チェックインはこいつらが担当。ポーターロボットやそうじロボットも活躍。まぁ体のいいセルフサービスということなのですが。


部屋の中にいるチューリーちゃんが明かりをつけたり消したり朝起こしてくれたりするんだが、あんまり賢くないんで、結局手動に。

今度来るまでにもうちょっと成長しているかな。Alexaに置き換わってるかな。

第9回 沖縄国際映画祭「島ぜんぶでおーきな祭」

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■第9回 沖縄国際映画祭「島ぜんぶでおーきな祭」


沖縄国際映画祭。第9回です。小学1年生だった子が中学3年生になります。もう大人です。弟分の京都国際映画祭は10月で4回。この沖縄の熱気を持ち込みたい。クソ熱いイベントにしましょう。乾杯。

昨年までのメモはこちらに。
2016年


今年のスローガン、「この島は、ときに、世界より大きい。」
いつもながら、うまい。


トータルテンボスの不倫ネタ、「政務官より扱いがデカかった」というボケがおもろかったのと、ゆりやんレトリィバァがデビュー時やせてたことを知ったのとが、この日の収穫でした。


業務連絡;文枝師匠が「慶應も落研がんばっとるやん」とのこと。おおきに。


業務連絡:きよし師匠がお越しになり、那覇、晴れました。おおきに。



シンポ「エンタメ人材育成」。ガレッジセールさんと司会を務めました。沖縄にエンタメ人材を育てる学校を作ろう。登壇者は少年ジャンプ伝説の編集長堀江信彦さん、ドラマ火花の古賀プロデューサ、琉球大学下地教授、ラブライブ!サンシャイン!!長崎プロデューサ、メディア研究者志村一隆博士。


みなさんのメッセージ、ポイントは4つ。
1)マンガ、アニメ、音楽、映像、各ジャンルはつながっている。
2)ネットで世界とつながっている。
3)「つくる」ことが大事。
4)沖縄なら、できる。
その方向で学校を作りましょう。


必要な人材とは。
1)0から1を産む人、
2)感性と人間力、
3)コミュニケーション力、
4)個性、
5)デジタル力。
ぼくらが受けてきた教育とは違うことが求められていますね、ゴリさん川田さん?


ゴリさんのメッセージ「沖縄はエンタメ人材の宝庫だがハングリーさが不足している。実家があるからだ。実家を出よう!」ですって。


よしもと美術館@那覇国際通り。数多くのよしもと芸人のアート作品を展示。ジミー大西さん、
鉄拳さんだけじゃない、才能の宝庫。お笑いの世界を作るクリエイターはみなアーティストです。
(鉄拳さんの海外進出を手伝おうと思っています。)


銀シャリの鰻さん「いろいろな生物のつかみ方」。
舞台とは別の、味があります。


野性爆弾くっきーさんは、やはり天才です。



KMDフォーラムでキッズワークショップをしてくださったもう中学生さんは、もともと段ボールアート芸なんですよね。


バッファロー吾郎の竹若さん、DIYで有名ですが、高校の後輩で、大学に行かずにNSCに入ったエリートなのです。


映画祭は全島で開かれます。
ここはライカムでもお~きな祭会場。
2年前、北中城村にオープンしたイオンモールで、ペッパー君にギャグを言わせるプログラミング教室を開催。野性爆弾さんらによる成果発表会が開かれてま~す。


レッドカーペットは、1000人以上が歩きました。世界最大のレッドカーペットだそうです。
今回、動員数33万人。おーきな祭になりました。


今回の映画祭には国連関係者がたくさん来ました。「持続可能な開発目標(SDGs)」をよしもと芸人たちが世界に発信するんですと。
国連はん、よしもとの使い方、わかってはる。
(アジア住みます芸人と国連の行進!)


クリエイターズファクトリーという若手育成策や地元CMコンペなど、若手にチャンスを与え、作らせ、育てる。このイベントは、インフラでもあります。


来年は4月19日ー22日。第10回となります。
そしてその前に、10月には京都国際映画祭です。

みなさんも、秋は京都へ、おこしやす。

元祖・出島に来てみた。

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■元祖・出島に来てみた。

 元祖・出島に降り立ちました。
 中学で習いました。鎖国していたころ、ここがオランダ貿易を一手に引き受けていたことを。ここが西洋との情報とアカデミズムの窓口であり、日本もここから世界に発信していたことを。

 Pop'n Tech特区CiPは21世紀の出島になります。
 東京・港区竹芝にデジタルの出島を作ろうとしていまして、その手本を習いに来た次第です。

「21世紀の出島 国家戦略特区として禁じられた遊びを奏でます。」

 電波特区、技適特区、著作権特区、サイネージ特区、ドローン特区、ロボット特区、超人スポーツ特区、レバ刺し特区、いろんな提案をいただいています。
 各地で導入された特区を全てここでも導入する「二番煎じ特区」がいいとぼくは考えています。特区の総合商社や~

 枝豆を注文するとアマゾンがドローンで運んでくる。有機ELを壁や道路に印刷する。孫泰蔵さんが提唱する、未来を見据えて規制緩和する「フラッグシップタウン」。やりたい。

「孫泰蔵さんの構想に乗った!」


出島はこの20年、復元事業を進めていて、48棟のうち16棟までが復元されたそうです。この夏には、長崎と出島を結んでいた橋も復元するとか。1634年に作られ、1859年に役目を終え、1945年に原爆を受けた出島の完全復刻は、2050年が目されているとか。大仕事です。

 Pop'n Tech特区CiPも建設の真っ最中です。2020年、東京オリンピック・パラリンピック直前に完成する予定です。元祖・出島のように、情報とアカデミズムの交差点になろうと考えます。

「シリコンバレーとハリウッドの日本版融合 デジタル×コンテンツのクラスターを形成します。」

 元祖・出島のように、ヤバい街になりたい。

「コスプレが集いロボットが飛び交う基地 クールジャパンとIoTの発信拠点となります。」

 元祖・出島のように、隣接する海に向かって世界に発信したい。

「海と空の窓口 東京湾・島しょと羽田空港、その立地を活かします。」

出島の総面積は1.5ha。これは竹芝CiPの面積と同じです。
集積特区の広さとしては、昔も今もそれくらいのまとまりがいいということでしょう。
ただCiPの場合は空中に高層ビルを建てますので体積はかなり異なります。

 そこでは新しい産業を生み出したい。元祖・出島にうごめいたオランダ商人のように。

「新産業創出の永久機関 技術、デザイン、教育、ビジネスを結合します。」

 新しい研究教育も生み出したい。元祖・出島が蘭学の発信地だったように。

「国際的大学と未来の幼稚園 次世代研究と創作系教育の基盤を整えます。」


元祖・出島の賑わいはどうだったんでしょう。当時の絵を見る限り、楽しそうじゃないですか。楽しくやりましょう。

「毎日がワークショップコレクション 創作フェア、ハッカソン、マーケットの常設会場です。」


ところで元祖・出島には、素敵なデジタルサイネージがたくさんありました。


オランダ行きたくなってきたな・・・

(と思い、それから思い立ち、オランダ行ってきました。それはまた別途。)



世界最大のVRイベント「LAVAL VIRTUAL」

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■世界最大のVRイベント「LAVAL VIRTUAL」

フランス、LAVAL。パリからTGVで2時間、人口5万人の落ち着いたロワールの町。ノルマンディーとブルターニュの結節点。カマンベールの宝庫です。日本でもみかける「PRESIDENT」はここで作ってるそうで。


世界最大のバーチャルリアリティ大会「LAVAL VIRTUAL」に参加しました。この小さな町に、1万人の参加者が集います。8,000㎡の会場いっぱいに、240の出展者。20年続く、名門イベントです。


責任者(Director General)ローラン・クレティエンさんによれば、参加者の60%がフランスで、その多くが地元のかたがた、20%が欧州、残りはその他の国々から。地域と国際のバランスがいい具合です。一般参加日には、大勢の親子連れが押し寄せます。


自治体、スポンサー、研究者、ベンチャー企業、学生、そして一般参加者のバランスがいい。運営は非営利で、地元自治体、スポンサー、参加者の入場料からの収入でまかなう。公益と商業のバランスも勉強になります。


LAVAL市が運営し、スポンサーには国鉄、通信、電力、農林中金、通信などインフラ企業が並びます。VRという先端技術が町づくり行政に意味を持つだけでなく、多様な分野に溶け込むインフラという意識が見えます。


ジャック・シラク大統領時代に、この地域の知事も務めた産業大臣がデジタル技術での町おこしを図ったのがスタートだそうです。このイベントを開催するだけでなく、VR関連の企業や研究所、大学機関などを誘致し、それを育てていったといいます。


立ち上げに際しては日本の岐阜を参考にしたそうです。梶原知事時代のソフトピアジャパンやIAMASのことですね。今度は日本がLAVALを都市づくりの参考にしたい。ポップテック特区CiPとも連携できないか、相談を持ちかけてみます。(ここはアンリ・ルソーの生家だそうです。)


今回ぼくは、HADO、キャリオットをはじめとする超人スポーツで参加しました。


VR/ARHADO、大ウケ。ヨーロッパでも羽ばたいてもらいたい。ぜひよろしくお願いします。


超人スポーツはRevolutionコーナーにブースを構えました。コーナーのチェアを務める神奈川工科大学の白井暁彦先生に大変お世話になりました。


Revolutionコーナーは「トランスヒューマニズム++」がテーマ。スポーツのほか、医療、教育、育児、宇宙開発などVRの応用を示しました。ぼくもVRは拡張性が問われる段階だと考えます。その点、このコーナーで日本が高いプレゼンスを見せていたことに希望を抱きました。


ドローンサッカー。ドローンからボールの映像をプロジェクションするとともに、靴の位置をセンサーで測り、屋内外どこでもサッカーができる仕組み。ロシアから。


Table Tennis Trainer。ドイツから。MITメディアラボ石井教授のピンポンプラスを思わせる超スポ系だが、ラケットにタグがついていて、ユーザのプレイスタイルを分析し、トレーニングメニューを出すという。プレイするフランス人がみな卓球がヘタでいかんわ。ドイツ向きなのかのう。


Real Baby Real Family。育児体験VR、愛を伝えるVR。ユーザの顔から赤ちゃんの映像を作り、だっこしたりあやしたりミルクを与えたりゲップさせたりするうちに、愛情がわいていく。出生率向上に一役買うか?白井研究室の出展。ぼくも改めて子育て体験をしてみました。


Mixed Reality Surgical Navigation。患者のCTで血管・内蔵などの映像を作り、ホロレンズでその人体の中に入ってつまんだりする。映像は30分でできるので、低コストで外科手術に使えるシステム。
愛知工科大学板宮朋基先生の出展。


Mitsu Domoe。立命館大学大島登志一先生。小学校の生物の授業で、三種の別パラメータを持つ生物の生態系をシミュレートする実験器具+ディスプレイ。HMDをつけず、映像を共有する仕組みはますます重要になると考えます。


鳥や雲や、夢さえも、つかもうと、している。
LAVALの人々は、20年も前から、若者は物心ついたころからVRが身近にあり、ごく自然に使いこなそうとします。ステキ。


「ラストラビリンス」という日本の作品。囚われの少女を、HMDでバーチャル空間の中に入ったぼくが行動を共にして、助け出す。
ぼくも自然に使いこなそうと思って試したら、少女が無残にも殺される結末となり、想像以上にショックでした・・。


おおっと声が出る日本の往年のマニアックなゲーム機やゲームソフトが実機として触れる大きなコーナーもあり、ゲーム文化とVRとの地続きな関係を確かめるとともに、日本の果たすべき役割を改めて考える次第です。
(こういうコーナーは日本の展示会でこそ用意できませんとね・・。)


ローラン・クレティエン代表は地元紙に、過去最大のイベントとなって満足だが、来年はもっと会場を広げると話しています。拡大していきますね。


リ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)を喰らいつつ、LAVAL VIRTURLと超人スポーツのコラボ、LAVALとポップテック特区CiPのコラボとを考えることとします。ではまた。

京都。きらい、こわい、スキ。

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■京都。きらい、こわい、スキ。

 井上章一さん「京都ぎらい」。
 筆者の出身地、右京区・嵯峨がかつての都・洛中から外れた「洛外」であることに対する鬱屈がねっちゃらねっちゃら塗り込められています。

 ぼくも修学院や山科ていう京都の洛外出身です。この本には山科の男から見合い話が来て落胆する洛中の女性が登場しはります。ぼくも洛中の女をがっかりさせることがあったんかもしれませんけど身に覚えはありません。筆者ほどの被差別感を被ったこともおません。

 それは元の(母の)実家が洛中の西陣で、平安京の大内裏、太閤さんの聚楽第の中やさかい、そこに心のよすがを求めていたからかもしれません。ところがこの本には、新町御池の人が「西陣ふぜいが生意気に」と言わはる場面もあります。こうなると今の御所以外はみな敗者いうことになります。おお、こわ。

 お寺さんの写真を使うのに納金が必要で、出版社は金銀苔石(金閣寺、銀閣寺、西芳寺、龍安寺)に一枚20万円を払うならわしがあるとされています。ぼくも同じ話を出版社のかたに聞いたことがあります。法的に争うてもお寺さんが勝つとは思えへんので使てまえばええんですが、お寺さんから「バチ当たる」言われたそうです。京都では法律よりバチのほうが怖い。おお、こわ。

 ほんでも、なんか、ちゃう。もっと芯の京都のこと、聞きたい。
 京都をネタにした本は無数にあります。
 これまでもいくつかメモしました。

◯梅棹忠夫の京都案内
 芸妓・舞妓は京都のブルジョワが金に糸目をつけずに念入りに育て上げた。
 市民はみんな比叡山にただのぼるためにのぼった。
 東京、大阪では「なんだ、学生か」とあしらわれても、京都へくれば「学生はん」。

◯梅棹忠夫先生の「京ことば」
 「してごらん」は「しとおみ」、「おいで」は「おいない」、「おくれ」は「おくない」。
 「おい、タバコくれ」といういいかたは、京都では絶対にありえない。
 「すんまへんけど、タバコおくれやす」となる。

◯松田道雄さんの京都追憶
 電車が日本で初めて走った町。初めて小学校ができた町。
 京の女は小便桶に「立ち小便」する。
 スカ屁した犯人を決めつける遊びがある。

◯加藤秀俊「メディアの発生」
 岡崎法勝寺にあった九重の塔は80m、義満が建てた相国寺の七重の塔は109m。
 現存する東寺五重塔は55m。
 南北朝~室町の京都は高層都市だった。


 これらは京都学派がお元気やったころの大御所による書で、60年安保前の文章もありますさかい、懐古に過ぎるかもしれません。その点、入江敦彦さんのシリーズは最近の空気を伝えてくれます。

 入江さんにお目にかかったことはありませんが、同い年で、同じあたりに生息していたようで、そやったそやったいうネタをようけ残したはるんです。「京都人だけが知っている」「やっぱり京都人だけが知っている」「イケズの構造」「怖いこわい京都」、2001年から07年までの4冊をまとめ斜め読みメモしてみまひょ。


 「河波忠兵衛はんのCM」(「墓のない人生は、はかない人生」)。寂しい「比叡山のお化け屋敷」(出口から入るとタダです)。深泥池の東、「狐坂のヘアピンカーブ」(入江さんの父上はクルマで下らはったそうですが、ぼくらはチャリで爆走してました)。あのころ、あのへんにおったもんにはピクピクくるネタです。

 出町柳「ふたば」の豆餅。「力餅食堂」や「大力食堂」の麺とメシ。そして一乗寺界隈の京都ラーメン、「天下一品」、「珍遊」、「天天有」。パッチギの街で、そんなんこってり食べて大きなりました。たこ焼きは「三個十円」でした。「人口密度に比べ数が異常に多い」銭湯都市で、夕方は岡八郎さん花紀京さんら京都花月のポスターが貼ってある風呂屋に通てました。

 街に出るようになりました。純喫茶「築地」ではバイトを断られました。ライブハウス「磔磔」には何度も出演させてもらいました。本屋都市を代表する河原町の「駸々堂書店」や「京都書院」は90年代にバタバタ倒れましたが、今も「恵文社一乗寺店」は「デザイン、建築、映画関係は他の書店を寄せつけない」ですし、「下鴨納涼古本まつり」は名作アニメ・四畳半神話大系の冒頭にも登場します。

 京都もんにはジュワっとくる固有名詞のパレードです。


 京都は、壊され続けてきました。平清盛木曽義仲源頼朝義経足利尊氏織田信長豊臣秀吉徳川家康新選組。「よそさん」から壊滅的な打撃を受けてきました。壊したり建てたりの1200年やったんどす。ずっと壊れてない奈良とは呼吸する息の濃さがちゃうんちゃうか、思います。

 「普請負け」いう言葉が出てきます。取り壊される家のたたりで、建て替えを機に没落していくこと。入江さんは、旅でよう帽子をなくさはるらしく、自分の身代りになってくれた感覚を持たはるそうです。ぼくも実家の普請負けを見てますし、モノなくした時に身代わりおおきに感を抱きます。

 こわれること、なくなること。消えること、終わること、死ぬこと。そないなこと、あんた平気やなぁ、冷たいなぁ、言われることあるんですが、その気構えが常や、いうんが京都人なんかもしれません。


 一方、「京都人だけが知っている」で、京都とロンドンとの親和性を説かはるんですが、確かにおっしゃるとおり、観光大使はデヴィッド・ボウイさんがよかったとは思いますけど、それはどうでっしゃろ。

 「イケズの構造」で、高慢、慇懃無礼、イヤミやとしてフランス人が京都人と似た嫌われ方をしていると指摘したはります。姉妹都市、パリのほうが似てるんと違いますかね。
 「そやねえ、そう思わはるんやったら、それでえんちゃう?」
 「こんな美味しいもん、勿体のうて食べられへんわ」
 「五百年もしたら値打ち出ますやろ」
 例示されてる、これぞ京都な物言いは、英語よりフランス語でしゃべったほうがイケズな気いしません?

 ところで、その本のイラストを洛外の巨匠、ひさうちみちおさんが描いておられます。
「うんこさんか。それはな、おならとおしっこには「お」がついてるのにうんこには「お」がついてないので代わりに「さん」がついてるわけや」

 本文と関係ないこのイラスト会話が一番おもろかった、いうのも一種のイケズですか。

「「強すぎる自民党」の病理」

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■「「強すぎる自民党」の病理」
池田信夫さん著「「強すぎる自民党」の病理」。読むのに時間がかかりました。面白くて。
戦後の政治史観には同意する指摘が多々あり、ピックアップしつつコメントします。
◯は池田さんの指摘です。

◯自民党は一貫したポピュリズムの党であり、初期は農民の党だったが、公共事業・バラマキ福祉の利益誘導システムを作った。

  当初、官僚出身=イデオロギーvs党人=リアリズムという対立項があったが、後者が自民党の本質であり、その代表が田中角栄だと思います。
「田中角栄というシステム」

◯「農地改革と財閥解体で資本家がいなくなったため、個人の預金を低利で集めた銀行が資本を供給し、サラリーマン社長が経営する日本型資本主義が成立した」

  江戸時代から武士より農商に有利な「逆身分」社会構造だったと池田さんは言います。戦後さらにそれを逆進させた。その社会主義的な格差なき成長は、大蔵省がグランドデザインを描き、GHQに実行させたものです。

◯ドッジラインもシャウプ勧告も大蔵省がアメリカを利用した。軍と内務省がGHQに解体され、大蔵省が行政をコントロールした。

  コミック・モーニングに連載していた「疾風の勇人」が参考になります。

◯サラリーマンは労組でなく企業に帰属意識を持ち、企業一家として自民党の支持基盤となった。社会保障を拡大し、「社民の「福祉国家」という看板は、自民党に奪われてしまった」。

  これが自民党のリアリズム政治。地域に張り付いて、目の前の支持層を取り込んでいった蓄積が今の姿だと考えます。

◯小沢一郎「日本改造計画」は小さな政府を求めた。竹中平蔵ら当時の学問的コンセンサスだった。小さな政府は小泉ー竹中ラインが進めたが、小沢氏はその後迷走し、左派となり、大きな政府を目指した。安倍首相も大きな政府を目指している。

  日本改造計画、情報通信の部分はぼく執筆しました。当時は役所もその新構想に思いを寄せていたのです。それはおおむね実現しましたが、実現したのは小沢さんではありませんでした。今また大きな構想が求められています。

◯官邸主導は小泉政権が進めた。法案の起案~閣議に至る関係省庁+与党の調整スキームは、江戸時代から変わらないボトムアップの統治システム。

  ぼくの役人生活は、9割がたそうした「調整」でした。起案、省内調整、研究会、審議会、マスコミ対策、法制局、他省庁折衝、閣議、与党調整、野党対策。

◯小泉政権は竹中=飯島ラインの名人芸で政権運営したが、官邸主導を制度化できず、後に続かなかった。「家」の自律性が高く、強いリーダーは拒否されてしまう。

  小泉モデルは強いリーダー+参謀のセットでした。参謀はいても、「強いリーダー」が天下を取るのが日本は難しい。

◯民主党政権は命令しても官僚が動かなかった。政治主導の幻想で政策が実現しなかった。政治主導のコアとなる公務員制度に無関心で、天下りを禁止する方針を出していた。

  民主党政権はリアリティーよりイデオロギーが優先しました。官僚OBの若い政治家が理念を実現しようとしました。しかしその多くは課長補佐クラスから転身したかたがたで、往年の自民・官僚派が次官・局長級から上がってきたのに比べ、霞が関への重みが足りませんでした。

◯安倍一強の原因は、官邸主導を実現した政治的イノベーションにある。「菅義偉官房長官が官僚を「直接統治」するシステム。」内閣人事局を通して霞が関幹部の人事を握り、実質的な政治任用にしたこと。

  現政権は重い番頭モデル。中曽根政権の後藤田官房長官、小渕政権の野中官房長官を想起させます。
「ぼく目線で野中広務回顧録を読んでみた」

◯「財政を再建する方法は社会保障の抜本改革しかない」今のまま放置して財政が破綻すると、年金の大幅カットやハイパーインフレなどの「ハードランディング」は避けられない。「財政再建は厚労省の解体から始まる」。

  最後に一点だけ政策論。ぼくもこの分野が最重要の政治課題と考えますが、動かそうという気配がありません。次、日本に政治の季節が来るのは、この件が破裂するか、国際紛争に巻き込まれるか、いずれかだと思います。



次は池田さんのポスト安倍・ポスト平成の話を伺いたいです。

京都国際映画祭2016

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■京都国際映画祭2016
歴史と文化を備えながら、最先端への挑戦をやめることのない京都。日本の映画のふるさと京都。この地で開かれる京都国際映画祭、第3回。実行委員長を務めました。


映画祭でありますが、タダの映画祭ではありません。「映画もアートもその他もぜんぶ」。ぜんぶのお祭りです。今回のテーマは「京都上ル上ル」。
(パーティー司会はロザン+チャド・マレーン。)


京都の街もぜんぶ使います。オープニングは世界遺産・国宝、二条城。西本願寺、大覚寺、京都市役所、京都国立博物館、立誠小学校、能楽堂、藤井大丸、イオン、ぜんぶ。






今くるよ師匠、坂田利夫師匠らと記者会見。
(こちらの司会は藤井隆さん木村祐一さんでした。)


そして、このイベント、最大の特徴は、みんなに参加してもらうこと。映画のひとも、アートのひとも、行政も産業界も、学生はんも子どもらも、おおぜいの芸人さんも、みんなが参加して、みんなが作る祭りです。
(文枝師匠、きよし師匠、篠田正浩監督、名取裕子さん、内田裕也さんらと乾杯)

「『京都国際映画祭』が開幕 世界遺産・二条城でオープニングセレモニー」

「京都国際映画祭2016が二条城で開幕!アンバサダー名取裕子「世界中に注目してほしい」

「京都国際映画祭が開幕」

「篠田正浩氏「こんなに京都に縁があるとは」」

「小津安二郎の本邦初公開作品も!京都国際映画祭が開幕」

「ジャイアント馬場さん、京都市役所前に」

慶應の学生はけしからん!とぼくはロケンローラーにめっちゃ叱られました。
「〈速報〉内田裕也やっぱり暴走フライデーに都知事に怒り」


京都国際映画祭、ルポつづき。アート編。
今年も木屋町の立誠小学校跡地をアート展示に使わせてもらいました。


目玉は蛭子能収さんの「えびすリアリズム」。大型作品やマンガの原画、18禁モノのマンガなど。


Netflix「火花」で徳永の相方を見事に務めた井下好井の好井まさおさんが教室で火花を解説してくれてました。
(とろサーモン村田さんの話も聞きたいな)


キティちゃんは、何でもやる。その姿勢、勉強になります。


市役所前広場の目玉は、永井英男「へそで投げろ」。全長7mのジャイアント馬場がクルマをバックドロップ。
門川市長いわく「市長室から観るのが一番ええアングルやで、有料で入れたる」。
木村祐一さんいわく「馬場さん現役のころバックドロップしてへんかったで」。


藤井大丸の中はシャンプーハットこいちゃんのシュールな作品がたくさん並べられていました。


藤井大丸の正面玄関には、Chocomooさんの期間限定らくがき「エントランス・マジック」。


平安神宮のそば、京都伝統産業ふれあい館のガラスは、中島麦さんのらくがきです。


明和電機「ヒゲ博士とナンセンス★マシーン」などを展示してくれた西本願寺の前には、Yottaさんの「金時」。石焼き芋のデコカー。想像力とコミュニケーションが路上にあった「あの頃」を問う。


イオンモールKYOTOは渡辺直美展。インスタの女王、海外でも人気を博する渡辺さんの世界観。長蛇の列です。

カッコいいんです、渡辺さん。
「渡辺直美「彼氏はいますか?」に回答 「口が滑って」赤裸々告白」


イオンモール桂川では、映画ギャグパネル展。本格的に作り込まれたパネルのバカバカしさ。
たくさんのお客様にお越しいただき、感激。


ネタとしていちばんグッと来たのはコレでした。


映画祭連携企画として、建仁寺で開催中のアーティスト・土佐尚子京大教授の展示とコラボしてみました。
京都は学生比が日本一高い都市。来年は大学との連携を広げたい。みなさん、よろしゅう。


吉本興業とアマゾンが組んで、小説やマンガの原作を発掘し、Amazonでの出版や映像化という出口を用意するプロジェクトの会見が開かれました。「原作力」がエンタメ界のパワーの源。そのための仕組み作りは重要な意味を持つ。さて、どうなるでしょう。

詳しくはこちら。会見中、麒麟・田村さんが一発屋ならぬ「一冊屋」と呼ばれていました。一冊でも当てたらええやんね。
「よしもとが原作発掘に一役」




海外プレスから突っ込まれたのは、国際性。京都でのイベントは放っといても国際的になるんですが、だからぼくも一段強い国際性の発揮が課題だと思ってます。ただ、通常の映画祭のような業界的発信ではなく、海外みんなの参加型にしたい。知恵ください。


第3回の柱は?とのCNN質問。映画もアートもその他も「ぜんぶ」、京都の東西南北「ぜんぶ」、そして「みんな」の参加型。この3点を定着させたこと、と回答。すると、everything、everywhere、everyoneの拡散はコアを薄めるのでは?との質問。うむ。


コアは「京都を表現すること」と回答。古典文化から先端技術までの「ぜんぶ」性、世界遺産や市役所でポップアートとギャグを見せる「ぜんぶ」性、貴族と町衆の参加型文化、まだ内外に示しきれていないまるごとの京都を示したい。

で、クロージングは阿部寛さん。
「『京都国際映画祭2016』が閉幕 阿部寛が三船敏郎賞を受賞「これからも映画とともに」」

「阿部寛 三船敏郎賞を受賞 「これをバネに」とさらなる飛躍誓う」

死者も出さず犯罪者も出さず、無事閉会。おおきにありがとさん。

今年もよろしゅうに。
「京都国際映画祭2016」に関する記事

ポップ&テックのショウケースをTokyoに

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■ポップ&テックのショウケースをTokyoに

サロンCiP@慶應三田キャンパス。
世界のコンテンツとテクノロジーの動向として、自称GLOCOMの境真良さんがCES(ラスベガス)、WMC(バルセロナ)、CeBIT(ハノーバー)について話し、AOIproNTTなどからSXSWの報告をいただきました。

境さんの話。
CESの目玉は一昨年はNetflix、昨年はクルマ、今年はAlexaMWCは5GIoTCeBITはドローンが目立った。
世界的に大きく動いている、ということですね。

SXSWは展示会というより、勉強会とネットワーキングが本質、という説明がありました。なるほど、その機能は日本ではあまりクローズアップされていません。

NTT木下さんから、Cyber Teleportation Tokyoの紹介をいただきました。
スゴいよね。このライブ技術。
この後開かれた「ニコニコ超会議」でも超歌舞伎「花街詞合鏡」で存分に魅せてもらいました。

このシンポ、ぼくは沖縄国際映画祭から戻ってきた足で参加し、週末はニコニコ超会議で超スポです。どちらもポップ&テックの融合した参加型イベント。

SXSWとかCESとかWMCとかCeBITなどを通じ、テクノロジーとエンタメが融合しているようですが、テックとポップを融合したイベントこそ東京でやらなきゃですよね。

もちろん、ポップでテックで参加型のイベントは、ニコニコ超会議、東京おもちゃショー、東京ゲームショーなどいろいろあるのですが、もっと集積することでパワーを発揮できると思うんです。海外にない、もっとスゴいものをお見せできると思うんです。東京なら毎日やってていいと思うんです。

テック&ポップ特区のCiPが仕掛けていきたい。

境さんは、日本が大市場であることを前提にイベントをする時代は終わり、海外と連結して発信することを強調。山口さんは、日本はタテ割りでたこつぼになりがちだから、外国人の目でみて、ゆるく大雑把に連結させるのがよいと指摘。同意します。それ、やりましょう。

その後、経産省コンテンツ海外流通基盤整備事業JACCの報告会となりました。
VIPO市井事務局長、角川アスキー総研三村さん、SYNC MUSIC後藤事務局長、アーティストコモンズ菊池さんから報告。

JACCは、映画、テレビ番組、アニメ、キャラ、音楽、ゲーム、マンガの一括検索機能をもつデータベースを構築するものです。音楽部門はぼくらのSync Musicが担当しています。

コンテンツ海外展開の基盤整備。地味だが大きな意味のある政策です。既に178か国からアクセスがあったとか。その分析により、海外市場の動向や展望も得られそう。国のコンテンツ政策は、こうしたインフラ整備に力を入れるのがいい。


2020に向けて、こうしたインフラ整備も進みます。地味なインフラの上に、賑やかなポップ&テックのショウケースを作る。セットで進めたいです。

ロッキング・オンの時代

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■ロッキング・オンの時代
橘川幸夫さん著「ロッキング・オンの時代」、読みました。

KMD1期生の浅田博士にご紹介いただき、CGM発展のための運動をご一緒しようとお話した際、ご当人からいただいた書。
72年創刊。むさぼり読んだクチです。渋谷陽一さんらと創刊に当たったレジェンドが振り返るあの時代。強烈に面白い。

編集部は個性を携えた異形の士たちの危うい同居であった。ぼくの一世代上の、学生運動には少し遅れた、だけどギラついたエネルギーが残る70年代前半。その対象としての、みんなが参加を許された表現としての、煮えたぎるロック。

ロッキング・オンは、その時代、そのジャンルに、行き場のなかった連中、読者=参加者が、手に余る熱を放り込むコミュニティ、今でいうCGMでした。ぼくは大学に入るのが79年なので、70年代前半は子どもでしたが、当時の匂いは共有しています。

橘川さんはジャニス、ジミヘン、GFR、ボウイ、ブライアン・フェリーと来たのだが、その後登場したパンクは「音楽の内部の出来事ではなくて、これまでのロックというフレームを超えようとするものとしての衝撃」と記している。同意します。

橘川さんは1981年にロッキング・オンを辞めたとあります。それは恐らくパンクとも直接の関わりがあったのでしょう。ぼくは煮詰まったロックを転覆する運動としてのパンクから本格的に音楽にのめり込み、それは以後ぼくの活動の基軸をなしますが、橘川さんもその時点で転換されたのではと。

ただ、橘川さんは、「パンクムーブメントのように、一人ひとりが日常の中で言いたいことを表現する参加型メディアを目指した」ともあります。ぼくはパンクからデジタルへと領分を変えましたが、追い求めている世界はずっと同じ、民主化だと思いました。

石子順造、つげ義春、真崎守、竹宮恵子、岡崎京子・・マンガ分野の登場人物がぼくには刺さる名前ばかり。ロック趣味とマンガ趣味が地続きなんですね、それはぼくのような後進にとっても同じです。

テレビマンユニオン村木良彦さんが「兄貴分」として登場しました。ぼくも20代のころ、村木さんの塾に官僚としてただ一人参加していて、いつも大いに叱られていました。橘川さんとぼくは棲息する場は全く違いましたが、同じようなところに出入りしていたんですね。


お目にかかった際、橘川さんは「未来学」の再興に言及されました。ぼくは今こそ未来学が必要だと考えています。子どもの世代が未来を展望していない。それは大人の責任。新・未来学をともに追求してみたいと思いました。

2020Tokyoに向け民放は

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2020Tokyoに向け民放は

 民放連ネットデジタル研究会。民放のキー局・ローカル局が参加し、ネット・デジタル対応を練る場です。ぼくが座長を務め、これまで6年間続けてきました。

 6年目の報告をまとめるに当たり巻頭言をしたためたので、貼っておきます。放送局の幹部向けのものなので、マイルドにしてあります。

――――――――――――――――
 現在、総務省情報通信審議会に「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」が置かれ、放送・ネット同時送信が焦点になっている。通信・放送融合の政策論が始まった1992年の郵政省・電気通信審議会以来25年を経て、放送とネットとの関わりが成熟したことを示す。

 私が座長を務める知財本部にて、さきごろ映画の振興をテーマとする会議が開かれ、吉本興業がNetflixと制作した「火花」が190か国に配信され、その後NHK地上波でオンエアされていることが話題となった。

 米IT企業の資金で作った「映画」級のコンテンツが「ネット」配信され、それが「放送」番組となる。従来のビジネスモデルも、通信・放送の前後関係も、制作手法も、全てが既に覆っている。場面は切り替わった。


 昨年のレポートの巻頭で私は、放送局が自らのビジョンに立って多様な路線を取り始めたと総括した。民放公式テレビポータル「TVer」のスタート、ソーシャルサービスとの連動、ライブ配信、プラットフォームへのコンテンツ提供、Vlowマルチメディア放送や「モアテレビ」の始動など、各社それぞれの意思により、さまざまな戦略を繰り出している。

 参加各局のレポートを読み、「「テレビからITへ」の展開、「放送からITへ」の攻めとも言えよう。放送局がITを使いこなす意思が明確となってきた。」と結論づけた。

 今年の報告ではそうした多様な路線は定着し、ビジネスが本番に向かったことが伺える。ネット配信やそのビジネスモデルに関する各局の取組がちりばめられている。そのリアリティーを確認していただきたい。

 それに先立ち、菊池尚人氏がこの20年のメディア変遷を踏まえ、20年後のメディア展望を描いている。そして内山隆氏は放送のネット配信が欧米に遅れている状況をにらみ、それらの動向・展望と政策論議を整理している。出色の寄稿、ぜひお読みいただきたい。


 さて、昨年、私は2点、留意点を指摘した。

 一点は「テレビ」を問い直す局面だということ。番組がスマホやタブレットでも、世界どのエリアでも視聴できるようになり、いわゆる「オールIP」も視野に入ってくるということだ。

 もう一点はスマートの次の世界、「脱スマート」とでも呼ぶべき段階が現れたことだ。IoTやAIに代表される状況だ。

 この一年で、早くもこれらは俄然、本格的な段階に突入した。AbemaTVはじめスマホ向け映像サービスが普及し、若い世代が急速に映像も「スマホファースト」に移りつつある。そして政府はAI/IoTの開発を成長戦略の重要課題と位置づけ、第4次産業革命・Society5.0と称して、それら新技術の普及に力を入れている。

 これらの大波が放送界を襲うのは、25年前の通信・放送融合よりも高速であろう。デジタル基盤が既に整っているのだから。


 今回のプロジェクトでは、6回にわたりゲストと討論した。これまた刺激的だった。SpotifyやFreewheelのかたにお越しいただき、海外の音楽・映像配信のヤバさを再認識すると同時に、radikoやdTVの状況から、ネットとの連動が定着したことを確認した。AbemaTVには、融合ビジネスで放送局の役割が不可欠であることを指摘してもらった。

 私がショックを受けたのは2点。まず、LINE LIVEが「若いユーザは映像をタテ画面でしか見ない」と報告したことだ。スマホファーストにシフトする中で、映像はヨコからタテにシフトするのか。すると、3:4だの9:16だのヨコ文化でやってきたテレビの映像はどう作ればよいのか。これは4Kや8Kへの対応をしのぐ大きなテーマになりはしまいか。

 もう一点は、米国で「オールIP」の動きが現実に始まったという報告だ。放送のシステムがまるごとネットのクラウドに移行することを意味する。25年前、「いずれそうなるかもしれない」だった通信・放送融合が本番を迎え、次の「いずれそうなるかもしれない」がもう目前に迫ってきた、ということだ。

 五輪中継のgorin.jpにも報告をいただいた。次の五輪、2020Tokyoでは、これらが全て本格化する。スマホファーストや4K8Kは無論、オールIP、VR・AR、IoT・AI、それら新技術が放送との関わりに決着をつけ、日本が世界のショウケースとなるはずだ。


 号砲は鳴りっぱなしである。備えはよいだろうか。

官僚は、どう生きるべきか。

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■官僚は、どう生きるべきか。

加計問題は収まりを見せたのかと思いきや、解散・総選挙で、また蒸し返されそうな気配が漂います。
左右両面の見方が放り投げられたまま整理がされていませんが、ぼくは元官僚として、元官僚や現官僚のせめぎあいを眺めつつ、その生きざまに思いをいたしております。

前文科事務次官「行政が歪められた」発言に対し、元官僚の学者などが同意したり批判したりしていますが、際立って説得力と迫力があったのは加戸守行さんでした。
文科省の局長から知事へ転出した加戸さんと前川さんの、官僚トップ同士の対立には興味深いものがありました。

補佐・課長クラスが政治も交えせめぎ合う行政現場の実態を表舞台にさらし、岩盤と忖度という日本的なるものを巡り同じ役所の官僚トップOBがやりあった点で一級のエンタメでした。
でも次官経験者で前川さんの発言・行動を支持する人なんているんでしょうか。
局長・次官経験者の評価を聞きたいものです。

内閣人事局は政高官低の定着、政治による官僚支配の完成を意味します。
官僚は天下りがなくなり、権力も削がれ、いよいよ生きざまを問われます。
政治への転出は一つの有力な出口ですが、かつてのように次官・局長から議員になる道は減りました。
そこで若手官僚が民主党から大量進出したが失敗に終わりました。

かつて総理は官僚出身者の席でした。
吉田岸池田佐藤福田大平中曽根。
しかし宮澤さん以降25年間、官僚首相はいなくなりました。
政が官を必要としなくなった、というより、政と官の役割分担が変わったのです。

小泉内閣はスタート時、官僚出身の大臣は森山(労働)、川口(通産)、村井(通産)、尾身(通産)、柳澤(大蔵)、片山(自治)、遠山(文部)、大木(外務)の8名。官僚内閣でした。
暴れん坊首相と官僚司令塔(飯島秘書官)のもと、官僚OB大臣が官僚を押さえることで小泉政権は推進力を保ちました。

現安倍政権は、大蔵2+通産1、その前は大蔵3。
最近では官僚大臣が多いほうではあります。
だがその行政力は、内閣人事局という「システム」で官邸が官僚を押さえたことに裏打ちされています。大臣を通じてというより、官邸が直接パワーを行使しています。

国政大臣の道が減った官僚は、首長の道を行きます。
現知事は、自治13、通産8、大蔵3、農水2,外務、運輸=28名。
気がつけば知事の6割が官僚上がりです。地方を官僚が押さえます。LGが押さえる構図。
(大井川さん(通産)、茨城県知事当選おめでとうございます。)

官僚出身者が学者やシンクタンクに転身し、政策にコミットするパタンも増えました。ぼくもその一味。
それがいいことなのかどうか。外野の評論家が増えて面倒になっただけなのかもしれません。
外に出た官僚が再び政府に戻る道を増やすという主張もありますが、それもいいことなのかどうか。

政、学以外の道で活躍する人もいます。
村尾信尚さん:大蔵→NEWS ZERO、上山信一さん:運輸マッキンゼー、平田竹男さん:通産→Jリーグ、村上世彰さん:通産ファンド、小城武彦さん;通産→CCC、溝畑宏さん:自治大分トリニータ、岡村慎吾さん:総務→DeNAなど。改革者たちです。

こういうことも含め、次官経験者が政官のグランドデザインを議論してもらえないものでしょうか。

場は用意します。加計問題という獣医学部を一個作るかどうかなんてクソみたいなテーマではなく、官僚がどう生きるべきかのオープンな議論を、トップのかたがたに整理していただきたいものです。

eスポーツ団体が統合・新設されます!

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eスポーツ団体が統合・新設されます!

このたび、ゲーム関連5団体は、「eスポーツ団体の統合・新設」に向けた取り組みを開始することを発表しました。

eスポーツ3団体:JeSPAe‐sports促進機構、JeSFと、CESAJOGAによる新団体設立に向けた統一行動です。

大きな決断、大きな行動です。


5団体は、国際大会への選手団派遣や国産ゲームタイトルの供給などに向け、日本オリンピック委員会(JOC)への加盟を目途として、年内に新団体の設立を目指します。
この新団体は、ゲーム業界団体の協力を得てeスポーツ業界団体が統合を図るもので、世界に類を見ない取り組みとなります。

新団体は、プロライセンス発行等を行うことで、eスポーツ選手が日本及び世界で活躍できる環境の整備を進め、eスポーツ選手の地位向上に努めていくこととしています。

これにより、JOC加盟→IOC加盟を経て、2022年アジア大会への参加、そして五輪正式種目化が期待される2024年パリオリンピック参加の道が開かれます。
公式プロが認定されることで、景表法の賞金10万円規制も非適用となり、大きな資金が動くエンタメ産業の道も開かれます。

ぼくはJeSPA(日本eスポーツ協会)の理事として、日本をeスポーツ大国とすべく課題解決に取り組んできました。
その一つが団体統一でした。
分裂していた男子バスケット団体が五輪参加資格を失う騒動があったように、eスポーツも団体統一は大きな課題であり、難問でした。

しかし、海外でのeスポーツ熱の高まり、正規スポーツとしての認知の増進などを背景に、関係者が利害を超え、一致に向けて汗をかくこととなり、さまざまな調整を経て、このたびの発表に至ったものです。
関係者全員の英断に頭を下げます。

eスポーツ3団体とCESA(コンピュータエンターテインメント協会)、JOGA(日本オンラインゲーム協会)という2つのゲーム業界団体とが手を組むことも重要です。
ゲーム大国である日本の産業技術力をバックに、eスポーツの後進国から一気に先進国へと歩み始めたい。

なお、CESAは2年前にJASGA(ソーシャルゲーム協会)と合併した法人です。
ぼくはJASGAの事務局長を務めていましたが、吸収合併で強固な産業基盤が形成されると判断し、自分のクビを切った仕事です。
JASGACESAの合併

今回の件が進めばJeSPAは解散になるので、またぼくは自分のクビを切って前に進める仕事です。
いい仕事。ほとんど何もしてないんですけどね!

成就まで、みなさまのご理解とご支援をお願いいたします。

ワークショップコレクション ミニ@福岡

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■ワークショップコレクションミニ@福岡

毎年東京で開催され、10万人の集客で世界最大級の子ども創作イベント「ワークショップコレクション」。
その福岡版が昨年に続き開催されました。
みんなで、つくろう!
2日で1万4千人が参加しました。


2回目の福岡開催となる今回は「あそんで学ぼう、科学とデジタル」と題し、科学や電子工作、デジタル、アート造形など、子どもたちが遊びを通じてSTEAM教育に触れ、モノづくりの素晴らしさやアイデア・発想につながる考え方の修得につながるようなワークショップが集結しました。


主催はCANVASとホームセンターの株式会社グッデイ。
西日本新聞社が共催です。
今回の会場はFUKUOKA growth next
大名小学校の跡地です。
素敵な場所です。
いくつか探検してみましょう。


IchigoJamで作って遊ぼう!BASICプログラミング。
NPO法人QUESTPCN福岡
鯖江市の株式会社jig.jp、福野泰介さんが開発したプログラミング専用手のひらこどもパソコン「IchigoJam」を使って、プログラミングを体験。
BASIC言語を使ったオリジナルゲームの作成を体験できます。


電気を通す魔法のペンで光るLEDバッジをつくろう!
ファブラボ太宰府。
電気を通すインクペン「導電ペン」をつかって電気の流れる「道すじ(=回路)」の正しい描き方を学びながら、光るバッジをつくります。
電気とLEDのしくみを体験しながら学べるワークショップです。


モーターをつくろう
イーケイジャパン。
コイルをまいて、本当に動くモーターをつくる。
レーザーカッターで切り出した木製シャーシと金属パーツを組み合わせ、工作後も手元において楽しめます。
サイエンスキットの会社、イーケイジャパンには初期のワークショップコレクションからお世話になっています。


littleBItsワークショップ
KORG
マグネット式のモジュールをつなげるだけで、子供でも簡単に電子工作を楽しみながら、21世紀型スキルを学べるツール、MITメディアラボにいたアヤ・ブデールさんが開発したlittleBIts
誰でもが発明家になれることを目指した製品です。


ポンポン船をつくっています。
アルミパイプの中で水が熱せられ、パイプから水蒸気がはき出されて船を進めます。
技術の先生がリタイアして工房を開いておられるとか。
さすがプロ。子どもたちを引きつけます。


みんなのカラダも電気で動いている! -心臓の動きを調べてみよう-
第一薬科大学。
人体シミュレーターを使って聴診器や心電図の測定を行い、ヒトにも電気が流れていて心臓の動きは電気信号で制御されていることを体験します。
ふむ、人体系は東京のワーコレにもなかったな。

お絵かきロボットをスマホで操作して、絵を描いてみよう
キッズクリエイティブ研究所MaBeee
CANVAS「キッズクリエイティブ研究所」のワークショップ「お絵かきロボット」を体験。
身の回りの素材をつかったロボットがスマホとつながる乾電池「MaBeee」を使って動きます。


西鉄バスについて学ぼう!
2,800台のバスを有する日本最大のバス会社、西鉄バスがハイブリッドバスやアイドリングストップについてパネルを使って説明します。
以前、放送波を使ったデジタルサイネージの導入実験でも西鉄バスにはお世話になりました。


この小学校の跡地会場、START UP CAFEという福岡市の起業支援の場が用意されています。
この2年半で90社がここから誕生しているとか。
ポップ・テック特区CiPも福岡の国家戦略特区による起業支援の仕組みを取り入れたいと考えております。
ご指南ください。


4時間待ちのワークショップも。
東京で開催していたときもそうでしたが、これほど並んでいただけるはうれしい反面、とてもとても申し訳ない。
需要に対し供給が足りないのです。
おとうさんおかあさん、どうもおつかれさま。



主催のグッデイ柳瀬社長、スタンフォード九州大学教授を経て独立された谷川さん、吉本興業泉取締役、文科省から九州大学に移った新津さんらにお世話になりました。
福岡はいいよね!

(会場近くの一風堂本店にて)

「ひよっこ」と「前略おふくろ様」

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「ひよっこ」と「前略おふくろ様」

NHK朝ドラ「ひよっこ」が終わってしまいました。

ドラマにしろ音楽にしろエンタメにしろ、刺激を求めるほうでして、メロウな日常を上塗りするような作品に興味がなく、サザエさんはパンクであることを戒める去勢モノと解しています。ひよっこが始まってしばらくは朝ドラにありがちな日常去勢ドラマと感じ、チャンネルを合わせませんでした。

しかし、高校の先輩・堀井憲一郎さんの「50年間、朝ドラを見てきた私が断言したい「『ひよっこ』はスゴい」」という記事に接し、その視点で改めて見始めました。

女性が苦難を乗り越え成長し大活躍する物語という基本パタンではなく、「夢など抱いていないふつうの女の子」がふつうに生きる。「生き生きとしたリアルな善きエピソードをたくさん集めて、それを重ねて作り上げている。そういうファンタジーである。」
そのとおりでした。

全ての登場人物が善人で、みな懸命に、邪心なく生きていて、傷や苦難を負いつつも心やさしく、微笑んでいる。だけどいつもそこに小さなドラマがあって、毎日を飽きさせない。
優れた作品です。

6月時点で堀井さんは「後半にかけて回復のドラマとなるかとおもう」と書いています。
これもそのとおりでした。
全員を回復、再生させるドラマとなりました。

新しい恋をする主人公みね子。記憶を失くしたが一家を再生する父親。恋人を失いキャリアを再開する女優と、女優の道を歩む友人。失恋したが米屋の娘の手を取る友人。確執を超えて家に戻る娘。戦争の傷を乗り越えようとするその父と寮母。同じくビートルズで乗り越えた叔父。ようやく芽が出るマンガ家コンビ。変身する大家。

全ての人物がキャラ立ちしていて、全ての人物が前を向いていく、へこたれてすさむ人が誰もいない、すがすがしさ。
最終週、まず米屋問題を決着させ、アパート同居のお姉さん、マンガ家、女優、そして父親の記憶問題を次々に片付けました。
ギターを爪弾いていた団子屋の息子だけかな、取り残されたのは。

終了直前に堀井先輩は「成長の物語ではなかった。」「いいドラマだった。」と改めて評しています。
指摘どおりです。
「「ひよっこ」朝ドラ史上異色の主人公が教えてくれた人生で大切なこと」



ぼくは「前略おふくろ様」と重ね合わせて観ていました。1975NTV作品。
山形から上京し、深川の料亭で下働きをするサブ(萩原健一)が周囲にもまれつつ、母親を想い、懸命に生きる物語です。

ひよっこは、このドラマのオマージュでもありました。

ぼくは中学3年生でした。取り柄もなく、将来も見えず、片隅で鬱々としていた自分とサブとを重ね合わせ、毎週のすりこみで、薄い人生観のようなものを作ってくれた作品でした。今も繰り返し観ています。正直に、懸命に生きることは、カッコいい。それを教えてくれました。

メロウな日常を上塗りする作品に興味はありませんでしたが、この作品は井上堯之バンドのテーマ曲から、半妻さん(室田日出男)や利夫さん(川谷拓三)ら登場人物もみなエッジが効いていて、そのざらつきに飲み込まれたのでした。

どちらも、岡田恵和さんと倉本聰さんという脚本家が作った作品。北茨城と山形。田舎から出てきて、親を思い、都会でひっそり、懸命に生きる。周りは善人ばかりだ。まっすぐ生きれば、つらいことは多いけれど、寄り添って楽しく生きていける。
そうです。そうなのです。

ひよっこは主人公が「おとうちゃん」と語りかけ、前略おふくろ様は主人公が「前略おふくろ様」と語りかけて、物語が進みます。事故で記憶を失った父親の物語と、老いて記憶を失っていく母親の物語です。

赤坂「すずふり亭」の脇で、みね子は同僚とニンジンをむく日々。深川「分田上」の脇で、サブは同僚とイモをむく日々。実に美しい。

歌が大切です。ひよっこは昭和40年が舞台。歌謡曲やグループサウンズ。前略おふくろ様は昭和50年のリアルタイム。(グループサウンズの代表が主人公ですが)昭和演歌が流れます。みんながいっしょに歌える歌がありました。

違いも大きい。ひよっこは、今から50年前のお話。これから伸びゆく大都会での女たちの物語。主人公も友人も、同居人も店の主も大家も強い女性たち。やさ男たちはあくまで彩りを添えるにすぎません。

前略おふくろ様は、失われていく深川への哀歌。料理人やとび職ら、男社会で下積みぐらし。女将さんや女中らが華を添えるが、それを包み込む男のお話です。今や時代遅れとなったダンディズムです。

40年前のドラマがひたむきな男を描き、新しいドラマがひたむきな女を描き、どちらもカッコいい。
40年前の前略おふくろ様が今も響くように、ひよっこを40年後に観ても、90年前の日本を描く今の物語として響くことでしょう。

さて問題は、今を生きるカッコいい男女を描く今のドラマが見当たらないってことかな。

いや、「火花」があるか。

うん。もっともっと、カッコいいドラマ、作ってください。

待ってます。

eスポーツ、取り残された日本の挑戦

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eスポーツ、取り残された日本の挑戦

デジタルメディア協会AMDシンポ「世界を席巻するe-Sports:取り残された日本の挑戦」。
襟川恵子AMD理事長、総務省吉田眞人総括審議官、夏野剛さん。ファミ通浜村弘一さん、JeSPA筧誠一郎さん、ソニー松本義紀さん、Sun-Gence梅崎伸幸さん、twitch中村鮎葉と登壇しました。

ぼくのプレゼン。
eスポーツ大国への道」と題しました。
概要、メモしておきます。
世界市場は800億円で年32%成長。
観客数は4億人で年15%成長。
174月には、2022年のアジア競技大会の正式種目に採択されました。
2024年のパリ・オリンピックの正式種目に採用されることも期待されています。
産業として、そしてスポーツとして、海外では既に認知されています。

しかし日本は後進国。
市場規模は世界の1/15。プレーヤー数は世界の1/20。賞金獲得額は29位。
ゲーム大国と自称するにしては、低い。
Dota2世界大会は賞金総額27億円。日本では大きくて500万円規模という状況です。
英仏独ではプロのサッカーチームが参戦し、米NBAもプロリーグを運営しています。
日本でも昨年、日本eスポーツリーグが立ち上がり、東京ヴェルディなど6チームが参戦するようになりましたが、まだこれからです。

米ユタ大学はeスポーツ奨学金制度を導入、リーグ・オブ・レジェンド参加チームに学費を全額免除しています。
他にもそのような動きが多数みられます。
社会全体の認知度や厚みが違います。
韓国では国やソウル市が支援する施設でCJメディア社が専用スタジアムを運営しています。
毎日、ケーブルやネットで中継しています。
プロ8チームが結成され、KT、サムソンなど通信、IT、メーカーがスポンサーになっています。
日本の通信業界もここにおカネを出してほしいものです。

この市場はネット産業である点がポイント。
eスポーツ最大の配信会社twitch は1日の視聴者が1000万人。
ESPNなどがテレビchを作っているものの、ネットで広がった文化です。
ネット・モバイル環境の整った日本にもポテンシャルがあると考えます。
課題は3つ。

1)規制。
景表法で、ゲームソフト販促とみなされると賞金が上限10万円に絞られます。
プレイヤーからおカネを集めて賞金を出すと刑法の賭博罪にも引っかかります。
海外から一級プレイヤーを呼べませんし、日本のプレイヤーも海外流出しています。

消費者庁はじめ政府と相談して、道を拡げるべく関係者が汗をかいている最中です。
大きな賞金を出せる大会を設計・実施してグレーな規制領域をホワイトにしていく努力を続けつつ、法改正を求めることになるでしょう。

2)プロ化。
いま存在する日本eスポーツ協会 JeSPAなど3団体を一本化して、JOCに加盟、オリンピックなどに選手を送り込めるようにする。
これも関係者が力を合わせて対応したいテーマです。

(なお、本件については、シンポ開催からほどない9月19日、ゲーム関連5団体が「eスポーツ団体の統合・新設」に向けた取り組みを開始することを発表しました。eスポーツ3団体と、CESAJOGAによる新団体設立に向けた統一行動です。課題解決に向け、大きく前進しました。)

3)認知。
最重要課題は、社会的な認知を上げること。
eスポーツがカッコいい、もうかる、大事だ、という認識を拡げる。
藤井蒼汰くんのようなスターを生むことが大事です。

これら3点は自分のテーマでもあるのですが、加えて、ゲーム業界、IT業界のかたがたにそれぞれお願いがある。

ゲーム業界には、eスポーツ向けゲームの開発をお願いしたい。
バーチャファイター、スマブラ、モンストのようにeスポーツに使われているものもありますが、ゲーム大国として、この開発で世界をリードしてほしい。

IT業界に、場の整備をお願いしたい。
スマートスタジアムの整備など、新しいスポーツ鑑賞機会を拡げてほしい。
2020に向けて全国100ヶ所に4K8Kのパブリックビューイング会場を整備する政府の計画もあるので、そこにも乗っていきたい。
自治体にも誘致を働きかけたい。

場作りでは、規制緩和を特区で導入して突破する手もあります。
2020年、竹芝にデジタル特区を作る構想を進めており、規制緩和の実験場にする予定です。
そこもホールなど作るので、eスポーツ拠点にできないかと考えています。
eスポーツ大国に向け、こうしたさまざまな機運を盛り上げましょう。



パネルでは、なぜ日本は遅れたのか、規制をどう突破するのか等の議論がなされました。
ぼくの回答です。
日本はTVゲームの成功体験が強くネットに乗り遅れたこと、音楽業界はじめコンテンツがライブビジネスにシフトしていること、そこでeスポーツに注目したところ規制が立ちはだかった状況です。
景表法の規制はグレーで、それがグレーのまま残っている日本的な状態。
そこに挑戦して白黒ハッキリさせるアメリカ的プレイヤーが登場することも期待しますが、正攻法で徐々にクリアしていってホワイト領域を拡げる手法をとります。
業界と政府との連携・調整が重要です。

ソニー、任天堂、マイクロソフト、そしてPCやスマホ。オリンピックでどの機材を使うのか。
どういうゲームタイトルが採択されるのか。
といった議論もありました。
大きなビジネスチャンスを展望させる一方、大きな調整テーマにもなります。

他にもいくつも刺激的な議論がありました。

筧さん:大学野球が盛んになったころ、新渡戸稲造や乃木希典が「野球なんかにうつつを抜かすヤツはろくなやつじゃない」という新聞キャンペーンを張ったが、人気は盛り上がり、逆に新聞が後援・主催するようになった。Eスポーツはそのメディアが乗り出す前の状況。

夏野さん:下手なプログラミング教育するぐらいならマイクラやらせたほうがいい。教育の中にeスポーツを組み込むのがいい。

筧さん:ノルウェー、スウェーデンの公立高校ではもう正規の授業に入れている。中国はeスポーツ科を大学に作っている。


ところで、同じく登壇したtwichの中村鮎葉はぼくの息子でして、偶然のブッキングなのですが、初の親子共演となりましたすみませんw

聖徳太子「和を以て貴しとなす」のとおり戦いを避ける日本にeスポーツが根付くのかという会場からの質問。
日本型のeスポーツを産もうという当たり障りのないぼくの回答に対し、鮎葉氏は「和を以て貴しとなすは論語のパクリであり輸入概念にすぎぬ」と回答、笑ってしまいました。

シンポの模様は4Gamer.netに報じられていました。
「世界的なe-Sportsの台頭に乗り遅れた日本が今やるべきこととは。」


GAME Watchにも。
「「AMDシンポジウム2017」レポート。e-Sportsから取り残された日本に未来はあるのか?」

こちらはファミ通.com
eスポーツにおいて、世界から取り残されてしまった日本がすべきことは? AMDシンポジウム2017リポート」

規制緩和、団体統一、場の整備などに取り組んでまいります。
eスポーツ大国への道、目指しましょう。


あ、超人スポーツもよろしく。

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