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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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シェアリングエコノミー中間報告

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■シェアリングエコノミー中間報告

 シェアリングエコノミー検討会議。中間報告書がとりまとめられました。ポイントをピックアップしてみます。

 まず、シェアリングエコノミーの特徴として、7点が整理されています。

1)B2CからC2Cへ
2)プロのサービスからアマチュアのサービスへ
3)シェア事業者はサービス提供主体ではない(サービスを提供する個人が責任を負う)
4)タテからヨコへ(業法での品質管理ではない)
5)既存リソースの一時的な市場化メカニズム(活性化されていない資産の市場化)
6)提供者と利用者との信頼(どちらも相手の信頼度を吟味せよ)
7)事後評価の仕組み(信頼メカニズムとしての提供者・利用者相互レビュー)

 的確な整理です。

 情報通信白書によるシェアエコ市場規模の推計は、2013年で世界で150億ドル、2025年には3350億ドル。国内市場は2014年度233億円、2018年度に462億円だそうです。

 しかし、日本は諸外国と比較して、シェアリングエコノミーの認知度や利用意向、利用率が低いことが明らかになっています。

 これも情報通信白書によれば、Airbnbのような民泊の利用意向は中国(84.2%)、韓国(77.6%)、米国(55.0%)、英国(44.2%)、ドイツ(31.6%)、日本(31.6%)。

 Uberのような自家用車ドライバーサービスは、中国 (86.4%)、韓国(71.5%)、米国(53.5%)に対し、日本の利用意向は31.2%。

 また、シェアリングエコノミーのデメリット・利用したくない理由として、日本は「事故やトラブル時の対応に不安がある」が特に多くなっています。


 これを踏まえ、シェアリングエコノミーの発展を促すのが会議の使命。新体験の提供と経済成長への貢献、資源の効率利用、共助の仕組みの充実、イノベーション創出などの効果を実現するための施策として、以下3点の方向性を検討しました。

1) 自主的ルールによる安全性・信頼性の確保
 事業者団体による自主的なルール整備を促す。

2) グレーゾーン解消に向けた取組
 法令(業法)の適用が不明確な場合が多いため、その解消を図る。

3) 自治体等による先行的なベストプラクティスの構築・共有
 シェアリングエコノミーのメリットを社会全体に浸透させる。

 自主的ルールに関し、「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」の基本原則として、①安全であること、②信頼・信用を見える化すること、③責任分担の明確化による価値共創、④持続可能性の向上、の4点を挙げています。


 そのうえで、サービス提供に関するリスク等を自己評価することとし、弁護士等を活用して明らかな法令違反を調査することや法令違反とならない根拠を明確化すること等を求めています。

 シェア事業者が遵守すべき事項として、連絡手段の確保、利用規約の策定、法令遵守、評価の仕組み、相談窓口の設置、漏洩等に対応する体制の整備、従業員の教育といったことがらを求めています。

 ここでのポイントは、これを政府が規制として下ろすのではなく、民間が自主的ルールを講ずることが前提になっていること。政府はその環境を整え、支援するというスタンスです。官民連携のいわゆる「共同規制」の中でも、かなりマイルドなアプローチ。よい姿勢と考えます。

 会議では、これを補強し、個別のシェア事業者が自主的ルールに適合していることを証明する「認証」の仕組みを導入すべきとの提案がありました。認証のビジネスモデルや運用体制をどう構築するかは今後の宿題です。


 もう一点、この会議のポイントになったのはグレーゾーン解消策。従来型のサービスごとに定められた法令=業法との衝突問題です。現行法の規制が適用されるかどうか不明確なため、サービスの提供や行政との連携が進まないことをどう解決するか。

 これに対しては、「グレーゾーン解消制度」「企業実証特例制度」の活用を推奨することとなりました。これは産業競争力強化法に基づく措置で、事業を所管する大臣が、事業者の新たな挑戦を支援する立場に立って、規制を所管する大臣と協議を行う仕組みです。

 この仕組みはぼくも会議に参加して初めて詳しく知りました。民間のチャレンジを推奨する、こうした制度をきちんと使うことは大切です。
 

 さらに会議は、政府の規制改⾰推進会議等の場で、シェアリングエコノミーの推進に関し、 国家戦略特区等の活⽤も含め、幅広く議論することを求めました。この中間報告をテコに、政府での政策優先順位が上がることを期待します。

デジタル人材育成拠点をつくろう。

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■デジタル人材育成拠点をつくろう。
クールジャパン人材育成検討会@霞が関。スタート。
ATカーニー梅澤さんデジハリ杉山さんセガゲームス松原さん元気ジャパン渡邉さんなど。
ぼくはデジタルコンテンツ特区の人材育成構想としてCiPの紹介をするとともに、学校の壁を打ち破る「デジタル超学校」構想についてプレゼンしました。


東京港区竹芝にポップとテックの集積する拠点を作るコンテンツ・イノベーション・プログラム、CiP構想を進めています。 
ウォーターフロントの1.5haの土地を再開発し、コンテンツ、メディア、IT、IoTの先端を集め、デジタルのテストベッドと、クラスターを2020年、オリンピック直前に開業します。


TechとPop、シリコンバレーとハリウッドを合体したような、でもユルくて、おもしろくて、みんなが集う、日本にしかできない街にしたい。研究・教育からビジネスまで一気通貫で行える場です。
政府クールジャパン拠点として位置づけられ、既に10件以上の産学官プロジェクトが進んでいます。


ぼくが所属する大学院、慶應義塾大学メディアデザイン研究科KMDの一部が入居し、スタンフォードなどの大学や研究機関にも合流を呼びかけています。マンガ・アニメの専門学校にも入居してもらいたい。同時に、プログラミングを子どもに教えるNPOにも参加を促しています。子どもから大学院まで。


お金の後ろ盾も大事。起業を支援するファンドの誘致・創設やビジネスマッチングの活動も活発にしたい。ブロックチェーンを使った起業特区も考えています。母体のCiP協議会には、通信、放送、音楽、アニメ、ゲーム、学校、ベンチャー支援など約60の企業・団体が参加しています。


ここは国家戦略特区の認定を受けており、これまでやっちゃいかんとされていたことを打ち破る、21世紀の出島にしたい。


電波特区、著作権特区、ロボット特区など、さまざまな規制緩和を導入したいと考えています。
たとえば電波特区として、ロボット向けに電波を発射する世界初のIoT放送局ができないか。


孤児著作物を蓄積してここなら見ていいという著作権特区、アーカイブ特区を作りたい。経産省の支援で、その基盤となる音楽分野のデータベースを構築しています。


デジタルサイネージ特区。おもてなし多言語サイネージを整備する総務省の実証実験をいま竹芝で展開中です。街開きすれば、屋外広告規制などを緩めて、道路にプロジェクションマッピングする、といったことも実現したい。


スポーツも開発します。技術で人体を拡張し、誰もが超人になれる「超人スポーツ」も進めています。2020年にはオリパラと並んで超人スポーツの世界大会を開く計画で、竹芝でも会場を用意したい。これは内閣官房オリパラ室に支援いただいています。


世界オタク研究所を作ります。アニフェスなど世界で開かれる日本の文化ファンが集うイベントの動員数は年間総計2千万人。それらを主導しているのは、MITやスタンフォード、北京大学など一級の大学のオタク連中。そのコミュニティの総本山を竹芝に作る。この構想は経産省がサポートしています。

そうしたプロジェクトを走らせながら新しい教育機関を置きます。そこに参画するKMDは2008年にできたメディアデザインの教育・研究のために2008年にできた大学院で、メディアのデザイン、テクノロジー、マネジメント、ポリシーの文理融合をモットーにしています。

同時にKMDは産学連携の「リアル」プロジェクトで、つまりスポンサーとともに、サービスやビジネスを作り出す研究スタイルをとっています。さまざまな企業主導のプロジェクトに学生たちを放り込んで成果を上げさせて教育する、という手法です。

そのKMDの教育・研究手法を持ち込みます。既にKMDは英RCAや米Prattなど海外のアートスクールやシンガポール国立大学などと連携していますが、竹芝にはスタンフォード大学にも同居してもらえるよう誘いかけているところです。

ただ、東京のデジタル開発という面では竹芝はきっかけにすぎません。政府クールジャパン構想としては、竹芝の他に羽田の開発も重視されています。羽田を再開発する主体は現時点では決まっていません。それが見えれば、竹芝・羽田直結のプランを描きたい。

竹芝・羽田の間にはJR品川周辺の大開発が待っています。竹芝の10倍程度の広さがあり、特区で開発した先端を社会実装するにはいい地域になりそう。さらに北上すれば秋葉原や東大に至る。ベイエリア一帯のデジタル・ベルト構想が描けます。

渋谷の再開発も賑やかになってきました。昨年、渋谷クリエイティブタウンという社団法人が発足し、渋谷のメディア化、コンテンツ化を目論んでいます。ソーシャルゲーム、J-Pop、ファッション、NHKなどが集結する町。そこでは竹芝と並んで総務省のサイネージ実験も展開されています。


東京をタテヨコに結んで、広域デジタル拠点を構成できないかと夢想しているところです。


京都でも構想があります。映画業界や京大、立命館らが人材育成と産業支援の拠点を作るというCiPに似たプランが動き始めました。大阪でも大型のエンタメ拠点の整備が進められています。沖縄も同様です。そういう拠点との連携を進めて、点を線に、面にしていきたい。デジタル生産・発信列島へ。


韓国にモデルがあります。人材育成のコンテンツコリアラボCKLと、起業支援のクリエイティブエコノミーリーダーCEL。韓国政府が大きな予算を使って運営しています。産業界と政府とソウル市が連携して作ったメディア集積地、デジタルメディアシティDMCもあります。


CiP協議会は韓国政府・コンテンツ振興院と連携するため、さきごろソウルで協定を締結しました。大統領弾劾で揺れる韓国ですが、そういう時期だからこそ、文化面・経済面での長期的な連携に道を開いておくというものです。


シンガポールに隣接するマレーシア・ジョホールバルの「イスカンダル」という開発地域では、政府がメディアの教育・研究拠点を整備しています。ロンドン大学が中心的な役割を果たしているのですが、そこともCiPは協定を結び、連携することとしました。


このようにして、東京、アメリカ、ヨーロッパ、アジアをつなぐハブになれるといいと考えています。



CiPは純民間として走り出して、その後プロジェクトごとに政府に支援いただいています。が、シリコンバレーやハリウッドの迫力、韓国の気迫には太刀打ちできません。MITやスタンフォードやシンガポール国立大学も遠い存在です。国家戦略として、より大きなデザインを描けないものでしょうか。


たとえば研究教育では、デジタル超学校・超大学とも呼べるような、テックとポップという日本の強みを凝縮した、そのマネジメントとポリシーも合わせた、機関をデザインしたい。


大学や研究機関の枠を超えた、強いプレイヤーの集合体で、授業は全部MOOCsのようなバーチャル。だけど、企業と直結してサービスや製品を実装して、起業支援じゃなくて、もっとリアルなビジネス、リアルな産業にしていく特区の環境。そんなかんじ。

クールジャパン・知財本部ではポップ系の人材育成構想が論じられるようになりました。一方、経産省・産業構造審議会では、デジタルのテクノロジー系の人材育成策が検討されるそうです。ポップとテックの構想を融合して、大きな国家戦略にしてもらいたい。


そんな妄想を続けています。

(イラストはピョコタン画伯です。)

知財本部コンテンツ会議2017

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■知財本部コンテンツ会議2017

知財本部コンテンツ会議、2017年シリーズ、初会合。セガ松原健二さん、ハコスコ藤井直敬さん、Hulu船越雅史さん、「君の名は。」川口典孝さんにプレゼンいただきました。ゲーム、VR・AR、映像配信、アニメという元気な分野の状況と展望です。

ハコスコ藤井直敬社長。VRコンソーシアム代表、理研チームリーダー、脳科学者、眼医者さん、超人スポーツ委員。10年おきのVRブームと今回の違いは、安価+高速の技術が熟したことと、facebookやGoogleなどが巨額投資をしていることの2点であることを明快に指摘。

藤井さんは、VRはデバイス主導からコンテンツ主導へ移り、あと2年で市場の方向が見えると断言。でも「技適」による導入障壁があり、打ち破る特区の必要性を指摘し、体験型の場として「VR ZOO」を作ることを提唱しました。それ、乗ります。Pop Tech 特区のCiPに誘致したい!

Hulu船越さん。てゆーか箱根駅伝の中継をしていた船越さん。語りに聞き惚れます。彼が言うには、テレビ番組をネット展開する著作権ルールは作られてきたが、ネット配信ファーストでテレビセカンドの権利処理ルールがない。確かにそうですね。それが必要な段階に入りました。

「君の名は。」川口さん。2Dアニメが危機だ。最低3000万円が必要なのに1500万円で制作している現状で、中国がカネを投じて人材を引き抜いている。中国アニメを日本が下請け製作することになる。アジアは日本アニメを受け入れてくれるんだから、ハリウッド戦略とは別にアジア戦略を立てろ。明快。

山口大学の佐田委員が、コンテンツ業界を目指す学生がコンテンツ業界のことを知る手段がなく、学生を上京させて業界ツアーをするという。うむ、各コンテンツ業界に協力してもらってMOOCsコースを作って、全国のコンテンツ志向学生が見られるようにすればいいんじゃないですかね。

竹宮恵子委員。マンガを学びに来る留学生は多い。育てて、帰して、コンテンツ人材にすること。そのための海外との連携を進めることが必要。  
これは国がすべき仕事ですね。

セガ松原さん。元コーエー社長。子どもはゲーム好きでゲームクリエイターになりたいと言うのに、大学生はゲーム好きでもゲームクリエイターを目指さない。CESAはゲーム作りの場として、日本ゲーム大賞にアマ部門を設けている。と説明。

東大・喜連川先生は、ゲーム業界はちまちまゲーム作らせてないでプラットフォームやデータ戦略を描けと指摘。松原さんは業界がユニティを使って首根っこをアメリカに押さえられている状況を指摘、ツールやバックエンドを取る重要性を強調。東大の同研究室出身者のバトルですが、国家戦略として組み上げる必要がある重要テーマです。

吉本・大崎さん。世界に対し、流通機構をどう国として持つか、に尽きる。「火花」は、世界にどう展開し、そのための資金還元をどうするか、という観点からNetflixを選んだに過ぎない。その観点を政府としてどう戦略として持つか。

ぼくの締め。教育システム、場作り、プラットフォーム作り、著作権ルール、流通戦略など、すべきことのメニューが示された。それを2020年にめがけてどう揃えるかという短期戦略と、長期的に続ける政策との両面を見据えて知財計画に落とし込みましょう。


よろしく。

「デジタル超学校」を妄想してみた。

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■「デジタル超学校」を妄想してみた。



 90年代のデジタル化、2000年代のスマート化を経て、AI/IoTの時代に入りました。日本はその90年代以降、成長が止まり、世界の中での地位も低下しています。デジタル技術の開発と利用に後れを取っていることが一因です。しかし、高度成長を支えた「ものづくり力」と、クールジャパンに代表される「文化力」が廃れたわけではありません。

 力を発揮するには、産官学がそれぞれの機能を高める必要があります。しかし日本は、大学のプラットフォーム力が弱い。ぼくが身を置いたMITやスタンフォード大学が果たしてきた機能とは比べるべくもありません。強みを集結し、力を発揮する拠点が必要と考えます。
 
 その芽はあります。
 ぼくが所属する大学院、慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)。メディアのテクノロジー、デザイン、マネジメント、ポリシーの文理融合4本を軸として、産学連携のリアルプロジェクトに学生が身を置くことでサービスやビジネスを創り出すという挑戦的な研究教育機関で、国際色も豊かです。

 そしてぼくが代表を努めるポップテック特区「CiP」。東京・竹芝1.5haの土地にデジタルのテクノロジーとコンテンツの集積特区を創る民間の構想で、研究開発、人材育成、起業支援のクラスターとなります。そこにはKMDに加えスタンフォード大学等の拠点が置かれるだけでなく、世界オタク研究所などの研究コミュニティが活動を進めることが期待されています。

 既に国家戦略特区の認定を受けており、それを活かして、メディア融合、サイネージ、アーカイブ、ロボット、超人スポーツなどの産官学プロジェクトが走り始めています。韓国政府が進めるコンテンツの人材育成拠点やマレーシア政府の研究開発拠点との連携も始まっています。

 しかし、こうした大学単位や民間企業のみの取組には限界があります。小さな点でしかありません。これを国家戦略レベルで検討してもらいたい。
 実はそのような議論は政府でも始まっています。内閣府・知財本部では「クールジャパン人材育成検討会」が開かれ、コンテンツはじめクールジャパン分野の人材育成策がたたかわされています。ぼくも参加し、CiPの構想をテーマにしてもらっています。経産省・産業構造審議会では、AIに関するグローバル研究拠点整備策が論じられています。いずれも先端分野での教育・研究拠点を整える方向です。

 その受け皿となる技術・文化融合の開発拠点構想を具体化させましょう。ぼくらのCiP構想は既に場所を確保し、特区としてコミュニティも形成されつつありますから、それを活かした青写真を描いてみましょう。以下、妄想です。

 デジタル分野の技術を軸とする文理融合の国際的な教育・研究機関であり、既存の大学や研究機関の枠を取り払い、最先端の人材が集いつつ、教員も研究者も学生も、産業界からの参加者も一体となって、具体的なサービスや商品の実装からビジネスや産業の創成までを手がけていく環境を造ります。「超学校」、「超大学」とでも名付けておきます。

 デジタル超学校、ポイントは10点あります。

1 技術主導の教育と研究と実装。
 大学院レベルの塾です。21世紀の松下村塾。先端の教育者、研究者、クリエイター、起業家等のコミュニティを核とします。参加する学生の年齢は問いません。

2 デジタルに特化した教育・研究。
 AI、IoT、ロボティクス、VR、ビッグデータ、ブロックチェーンなどのデジタル分野に特化し、その先端を探求します。

3 重点領域の実装。
 医療、福祉、防災、農業など課題先進国の重点テーマの技術による解決を図ります。同時に、コンテンツ、デザイン、食などクールジャパン戦略を追求します。

4 文理融合。
 教育はテクノロジー、デザイン、マネジメント、ポリシーの4本を軸にします。情報工学、アート、経営学、法学など分野横断的なアカデミズムをバックボーンとします。

5 バーチャルリアル。
 講義は全てオンライン=バーチャル多言語環境で実施。一方、研究や実装はリアルなラボで行い、実フィールドでの実証や事業化を進めます。

6 リアルプロジェクト主体。
 企業等のスポンサを持つユニット制のプロジェクトで、起業、ビジネス化、さらには産業化を目指していきます。産業界・学術界による評価機関を設け、各プロジェクトを厳正評価します。

7 世界最高級の教育レベル。
 国内の大学(KMD、東大など)、研究機関(理研、産総研、NICT、NTTなど)、海外の大学(スタンフォード、MITなど)から教員・研究者単位での参加を求めます。専任教員は若手中心とします。

8 学生はハイレベル研究員。
 学費は無料です。さらに学生には月々の研究費を支給します。企業派遣も受け入れます。修士・博士などの学位はありませんが、独自の修了証を付与します。

9 多様性。
 海外からの参加は3割以上を確保し、英語公用としつつ、母国語でコミュニケーションできる多言語環境を用意します。保育環境も用意し、出身・年齢・性別を問わず活動ができるようにします。

10 国家戦略特区の活用。
 「CiP」特区を活用し、研究教育に必要な規制緩和を導入します。電波特区、著作権特区、道路占用特区、ロボット特区、ビッグデータ特区等に加え、ビザや税制等の特例も検討します。



 10名程度の教授・リーダー陣と100名程度の学生で、10本程度のプロジェクトを常時走らせる。このような形の拠点があれば、あれこれ動き出すと思いません? 年10億円もあればできると思うんですよ。成功したデジタル起業家のみなさま、お大尽さま、カネが余ってる投資家のみなさま、政府のみなさま、有力政治家のみなさま、ガッツある研究者のみなさま、いかがでしょう?

知財本部 海外・基盤新ラウンド

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■知財本部 海外・基盤新ラウンド

知財本部コンテンツ会合@霞が関。ドワンゴ川上さん東大喜連川さんよしもと大崎さんレコ協斉藤さんセガ岡村さんニッポン放送重村さん竹宮恵子さんら。海外展開と基盤整備の新ラウンドです。

政府の取組説明、総務省豊島課長:放送コンテンツの海外売上を2018年度までに2010年の3倍にする目標。2014年で144億円と倍増、順調。海外放送枠の確保と共同制作を推進。最近はローカル局の参加も見られるようになった。

外務省高水主席事務官:国際協力基金の事業により、日本のドラマ、アニメ等を無償提供。これまで48か国の放送局に192番組を提供。
(総務省の放送コンテンツ政策との連携・整合・戦略性が気になります。)

経産省1  平井課長:JLOP事業でコンテンツのローカライズやプロモーションを支援。これを活用して初めて海外展開した事業者は405社で、全JLOP利用者の36%。これまで内向きだったものが外に開かれつつある。

経産省2:クールジャパン機構はこれまで18件投資。リスクマネーを供給。経産省のコンテンツ海外展開事業は10年目を迎え、行政評価レビューが行われたが、プラス評価を受けた。
(これはなかなか大したもんです。)

経産省3:基盤強化としてアニメのデジタル制作環境整備・マニュアル化、DCEXPO/Innovative Technologiesの開催など。
(後者はぼくも審査員として参加しています。有意義です。)

経産省4:アニメ制作業界の下請ガイドラインを7月に改訂。契約の書面化やベストプラクティスの普及啓発を図る。
(劣悪とされる制作現場の環境改善に向けた重要な施策。これぞ行政の仕事。経産省、仕事してます。)

さて、ここから議論。いくつかピックアップします。

瀬尾委員:クールジャパンは海外にコンテンツを売る段階から次に進んでいる。2020年の後をにらみ、次のステージに移る施策、メッセージを打ち出す時期。
(賛成です。ビヨンド・クールジャパン。)

相澤委員:補助金モノから自立して事業を継続することがポイント。
(補助金行政からの脱却もテーマになり得ます。)

岡村委員:ゲームソフトの輸出は、2007年の7000億円から2014年は900億円に激減。業界の構造も変化している。政府の施策はいつまで続くか不明であり、それがなくなったときの足腰の強化が重要。

重村委員:業界団体の基盤も脆弱で、国の補正予算頼みになっている。中長期タームでの大方針が必要。省庁連携による施策の実効性が重要だが、省庁間のヨコ串も機能していない。

瀬尾委員:省庁連携の連絡会議等を置くべき。業界団体も吸収合併などによる効率化、再編があってよい。
(国のヨコ連携対策、民間の業界調整・再編も、次のステージのアジェンダになり得ますね。)

佐田委員:大学の知財教育現場では、学生にコンテンツ産業の魅力を伝えにくくなっている。学校教育の中でコンテンツをどう位置づけるか、重要テーマ。
(それは業界にとって大切なアジェンダ。)

大崎委員:近未来のコンテンツを描くアニメなど、コンテンツやコンテンツ産業の未来を示すコンテンツやメッセージを作ってみればいい。
(面白いアイディア。関係者で検討しましょう。)

川上委員:おカネをもらえるのは書類づくりがうまい会社。でもおカネを渡したい相手は違う。日本のコンテンツは個人の作家性に依存している。その個人のすくい上げは至難。クリエイターを発掘するための場づくりが大事。CJ機構が作品を公募して、オープンなネットの場で審査するような仕組みがいい。

喜連川委員:ノーベル賞受賞者はみな書類を書くのが上手。下手な人は埋もれていく。
(この川上vs喜連川の掛け合いは、知財本部の名物ですが、いつも深いところで考えさせられます。)

野坂委員:2020年に向けアピールすべきではないか。

(そうです。このラウンドは、クールジャパン新ステージ=2020コンテンツ戦略になる。それは、映像配信、VR/AR、4K8K、IoT/AIなど、これまでの戦略とは別の軸が一斉に現れたタイミングだから。やりましょう。)

AIの知財問題、さっそく風雲急。

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■AIの知財問題、さっそく風雲急。

知財本部・新情報財委員会2回。AIの保護・利活用の在り方。学習用データ、AIプログラム、学習済みモデルについて、制度論をたたかわせます。

AIはブームではあるが、汎用・万能のものは展望できておらず、個性のある目的別のAIが無数に生まれてくる。その組み合わせが重要。集合知ならぬ集合AIで威力を発揮する世界が近づいている。・・こうした急激に進展する状況をにらみつつの議論です。

汎用AIではなく、人の知能を機械に担わせる専門のAIがディープラーニングで産業利用される。その可能性を展望し、制度を検討するのが今年のミッションです。排他的利用権(著作権)、営業秘密、契約、このあたりが話題となります。

例えばAI生成物の著作権侵害はグレイゾーンだといいます。アメリカはフェアユース的に扱っても、日本ではアウトのケースがあります。そこで国内制度を整理したとしても、国際的な競争や利用の観点が重要になってきます。

宮島委員は、日本はグレイゾーンに慎重であり、創作性とビジネスチャンスを高める方向での検討と、そのメッセージ発信が重要と指摘。柳川委員は、保護と利活用のバランスが崩れることがポイントだとコメント。そうですね。

清水委員は、ソフトウェアはオープンソースが主流であり、著作権の世界ではなくなっていると指摘。PPAPYouTubeの二次創作で稼いでいる、とも。政府の議事録に「ピコ太郎」という文字が残るのはうるわしいです。

瀬尾委員が人格ならぬ「AI格」を持ち出しました。学習していく幼児から大人までのさまざまなAIを想定して全体像を展望しようとの提案。・・またしても風雲を告げる展開であります。

清水委員は、日本は計算資源が乏しい。だからみんなが使えるAIポータルともいうべき環境を整備すべし。と提案。これに対し、国立国会図書館のようなAIナショナルアーカイブがあっていいという提案もありました。制度論からいきなり振興政策論に拡張しました。

喜連川委員:アルゴリズムのような方法論よりも、データを押さえる勝負。図書館で扱う著作物の比重はデータに比べ小さくなっていく。データの優先度を上げるべき。今は法制度よりも、データや予算や人材などの資源を集中的に突っ込む戦略を講ずるべき。


制度と振興政策、技術進歩と国際情勢、いろんな変数をかけ合わせた方程式を解く作業が続くのであります。

超人スポーツゲームズ

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■超人スポーツゲームズ

第一回超人スポーツゲームズ。東京タワーにて開催されました。4競技の超人スポーツ競技会と、6つの新たな超人スポーツの体験会を実施しました。内閣官房オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査の支援を得て開催の運びとなりました。


超人スポーツ協会は、2020年、東京オリンピック・パラリンピックと並ぶ超人スポーツ世界大会を開きたいと思っています。そのための競技の開発と選手の育成に向けた号砲、それが超人スポーツゲームズです。


トーナメント競技1、Bubble Jumper / バブルジャンパー
ばねでできた西洋竹馬を足につけてジャンプ力を強化し、弾力性のある透明な球体を上半身に被って、ぶつかり合う超人相撲。


ぴょんぴょんの、ビヨンビヨンで、ドカンドカンです。;


競技2、HADO。
ヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着し、AR技術とモーションセンシング技術で「かめはめ波」対戦を実現。フィールドを自由に動き回り、味方と連携して3対3のバトルを繰り広げます。


現実に手足を動かしながら、バーチャルな世界で闘います。ハウステンボスなどで既に実装されています。


競技3、Hover Crosse / ホバークロス。
体重移動のみで操縦できる電動スクータ、HoverTraxを使い、二人のプレイヤーがオフェンスとディフェンスに分かれてフィールドの3つのゴールにボールを入れて得点を競う1on1の球技です。


攻めのテクニック、守りのテクニック。いろんな作戦が生まれてきている模様。


競技4、Carry Otto / キャリオット。
小型モータを手綱で操作する人機一体の競走競技。3歳から80歳まで、車いすの方、知的障碍者を含めみんなが参加できるスポーツ。決勝戦、ゴールの瞬間です。


自作のカートや、普段使っている自分の車イスで疾走するかたも。台車の自由さがこの競技の魅力です。


体験競技1、トリトリ。
岩手県ご当地超スポ。宮沢賢治「銀河鉄道の夜」に登場する「鳥捕り」がモチーフです。ドローンに取り付けられたカメラの映像を見ながら操作し,ターゲットドローンを捕まえることで得点を競います。ドローン競技は、いつか首相官邸で、やりたいぞ。


体験競技2、HADOカート。
対戦形式のARモータースポーツ。ヘッドマウントディスプレイ、モーションセンサーを装着してモビリティを操作しながら、現実世界を背景にバーチャルな魔法を撃ち合います。


乗り物を操縦して敵を撃つ。戦闘機ゲームなどで憧れた世界の実現です。


体験競技3,スライドリフト。
電動アシスト全方向車イスで、ドリフト走行などのテクニックで競い合うレース。小回り、鋭敏な動きができる器用さ、繊細さ、判断力が勝敗を握ります。


車イスでドリフト、というパンクなスリリング。
(テレ朝 上村アナがトライ。)


体験競技4,車椅子ボールシューティング。
腕で投げる代わりに、空気で球を射出する機構を活用し、車イスのかたと健常者が対等にできる球技。1対1の対戦形式で、空気砲で球を敵頭上のネットに入れた数を競います。


車イスのひとはボールを投げるのが難しい、ということを踏まえたマジメなスポーツなのだが、ユルさが笑いを誘います。


体験競技5、ピカリバブル。
LEDを内蔵したバブルサッカー用のバンパーを使用し、2対2のチームでぶつかり合い、フィールド上の拠点を多く獲得する陣取りスポーツ。


体験競技6、ロックハンドバトル。
これも岩手発超スポ。盛岡市・三ツ石神社の説話を元にしたオリジナル漫画に登場する戦闘を再現。大きく重い岩のような腕=ロックハンドをぶつけあい、相手のハンドについている小さなロックを落とす対戦です。


テレ東・WBS、日テレ・スッキリ!!、テレ朝・スーパーJチャンネルなどなど取材多数。ありがとうございました。

知財本部、データ論議

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■知財本部、データ論議

 知財本部・新情報財委員会@霞が関。
 東大・渡部俊哉教授と共同委員長を務めます。
 AI知財の議論からデータに関する議論にテーマが移っています。 

 IT本部山路参事官から、さきごろ施行された官民データ活用推進基本法に基づくデータ活用とオープンデータの推進について説明。そして、ルール化を進める前に、PDS(パーソナルデータストア)、情報銀行、データ取引市場の整備を推進することを表明しました。 

 IT本部はシェアリングエコノミー対策もそうだが、利用規制を緩和しながら環境整備を進めるというアクションを取る姿勢。ぼく好みの行政を進めておられます。

 総務省小笠原課長は、データ取引市場や情報銀行に関する実証実験について言及。スマートシティ、スマートハウス、IoT、5Gの推進も触れました。インフラ整備、よろしくです。

 経産省佐野課長は、IoTの課題としてデータ爆発、セキュリティ、プライバシー、データ寡占を挙げつつ、潮流として、PDS、シェアリングエコノミー、ブロックチェーンを挙げました。「分散」を進めると。野心的です。

 例えばPDS(パーソナルデータストア)は、個人を起点としてデータ流通を促進するもので、データ流通を集中・センター型を分散型に切り替えるもの。「集めないビッグデータ」(佐野課長)。するとデータ流通市場のアプローチが大事になります。

 データ流通市場の例として、EverySenceが挙げられました。これはぼくが真野CEOからお話を伺っていたものです。注目しております。

 データオーナーシップ(B2Bの非パーソナルデータの利活用権限)についても問題提起されました。契約でいかに明確化するか、公平な利用をどう確保するか等の論点が挙げられたところです。 

(データオーナーシップに関してはその後福井委員から、知財の学術・司法の蓄積は膨大であり、それらとの整合を図るべきとのコメントがありました。)

 これらを踏まえ、本委員会では、利活用の促進が期待されながら保護の範囲が明確でないデータについて議論することとし、営業秘密(不正競争防止法)や不法行為・契約(民法)について論点を整理します。

 データに何らかの法的権利を与えるのか、データ取引所や契約に関するルール、ガイドライン等を作るのか、といったアクションを検討することになります。

 これに対し、法的な権利付与に対する危惧が多くの委員から表明され、契約ベース・不正行為対応のアプローチへの賛成が多数を占めました。

 しかし清水委員は、民間企業はアプリやサービスを途中で止めてしまうが、民間に任せるというのはそういうことであり、個人情報を使ったヘルスケアサービスなどの政府のビジョンは国が強制しなければムリ、と意見。民主導という流れに対峙する、新鮮なコメントです。

 これを補完する意見として、林委員は、個人起点のPHR実証や厚労省の電子レセプト流通などを国が推進する、といったリーダーシップのとり方はあるとコメント。福井委員も、政府は公平性・オープン性確保といったリーダーシップがあると指摘しました。

 また福井委員はルール化・権利化が適・不適というより、時間・調整コストがかかるという点で、そこに資源を投下する効率が悪いから別のアプローチ(流通市場等のインフラ整備など)を取る旨のコメント。ぼくも制度論より施策論を重視するのはそういう理由です。

 清水さんが、情報銀行への情報提供を義務づけよ、という意見を表明。
 パンクやの~。

 日を改めた会合で、産総研・関口委員が、大型コンピュータをブン回してπを100億ケタ以上計算してるが、そのデータは保護されるべきか否か、と問題提起。
 むつかしいわぁ  この問題。

 タクシーのカメラに映った自分の情報は、タクシー会社のものか自分のものか、という問題提起もありました。データ利活用の権利を個人に引き戻す手があるか。ブロックチェーンの活用が可能性を広げるか。

 議論は続きます。

理研のAI研究センターに期待を寄せております。

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■理研のAI研究センターに期待を寄せております。

AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト。総務・文科・経産3省の連携でAIの研究開発と社会実装を推進しています。AIとIoT/ビッグデータの掛け算。70億円予算のうち30億円を理研AIPセンターに計上。政府は気合が入っています。

30億円以上に政府に気合が見込めるのは、理研AIPセンターのトップに42歳の杉山将東大教授をアサインしたこと。特別顧問としてカーネギーメロン金出武雄教授、NII喜連川所長、東大合原教授、ATR川人所長という超重鎮を配置、脇を固めて推進体制を整備しました。

85年、70歳だったMIT学長Jウィーズナーが42歳のNネグロポンテにMITメディアラボの所長を託した。それを彷彿させます。ネグロポンテは15年所長を続けました。日本はAI研究を杉山さんに15年委ねる、そういう気合が求められているのではないでしょうか。

深層学習、因果推論など革新的アルゴリズムの基盤技術を開発するとともに、その社会実装を進めることにしています。防災や医療などでのAI利用です。
AIが仕事を奪うといった不安が広がる状況で、分かりやすい社会実装により、AIの効用を示すことは重要な課題です。

しかしGoogle、Amazon、MSなどが数千億円規模の投資をする中、日本は政府予算が数十億円規模。このギャップを乗り越える戦略とは。
杉山センター長によれば、応用研究は予算規模勝負だが、基礎研究は個人勝負。個人研究者レベルだと日本もゲームチェンジが可能とのこと。なるほど。

では応用研究は?テーマを厳選して当たるとのこと。iPS細胞(山中伸弥教授)やものづくり(天野浩教授)など。加えて、課題先進国ニッポンの強みを活かして、ヘルスケア、防災などをプロジェクト化すること。正しい。

理研AIPは東京・日本橋に場を設け、200人の若手トップ級研究者体制を組む計画です。基盤技術と応用開発を網羅するとともに、社会研究にも力を入れます。理系の研究だけでなく、社会経済、倫理・哲学等のコミュニティを作るのはとても大切です。

ぼくはこの動きに役立ちたい。勝手に。そう思ってます。ぼくの社会人の原点は自動翻訳電話開発プロジェクトでATRを作ったことだし、MITではミンスキー一派とAIの冬季を過ごし、最近は知財本部でコンテンツとAIの議論をしていて、次の展望を描きたくなっていたところでした。

ぼくにできそうなことは、この分野が大事ですというプロモーション、わかりやすく発信すること。もう一つは日本の強みを活かすため、Pop & Techのコミュニティーを作り上げることかと。


日本はAIの利用大国になることが戦略でしょう。医療や防災という課題先進国としての利用も大事ですが、ポップカルチャー分野でゴリゴリ使う。教育分野でもゴリゴリ使う。役所でも使う。あれこれ広げていきたいです。

AIとビッグデータの知財論、大詰め。

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■AIとビッグデータの知財論、大詰め。

 知財本部 新情報財委員会@霞が関。委員長を務めます。
 AIとビッグデータの知財論、大詰めです。
 内閣官房、内閣府、総務省、文科省、文化庁、経産省、特許庁が出席。
 産総研、NICT、国会図書館も参加。オールキャスト。

 テーマ1:AI学習用のオープンデータ、オープンサイエンス。
 公的資金での研究成果のデータ利活用を推進することと、官民データ活用推進基本法を稼働させることを方針として確認しました。

 産総研は研究によって得た地理空間、物質・材料、人体、情報系のデータを提供する「データバンク構想」をプレゼン。
 NICT(情報通信研究機構)は、ウェブ由来の学習データを他の研究機関と共有できないこと、収集した100億ページのデータを大学・企業に提供できないことの問題を提起。

 NICT鳥澤さんは、創作性のある表現をする対話ロボットが出典の引用をどう扱うか、という問題も提起。
 ウェブ情報を引っ張ってきてしゃべるAIロボットはもう実用化されてますもんね。「今」の課題です。

 文科省はNIIの学術情報ネットワークの整備、3省連携による理研AIPでの汎用研究について紹介。
 ぼくも理研AIPの研究が社会に寄与する役割を果たしたいと考えています。がんばってください。

 国立国会図書館は262万点のデジタル化資料を提供し、35万点のパブリックドメイン資料は自由に利用が可能だが、データのテキスト化が進んでいないとのこと。12万件のネット資料をAI学習用に使うには法整備(国有財産法等)が必要との見解を示しました。

 これを受け、突っ込んだ議論となりました。一口にデータと言っても、私的・公的なもの、研究用のもの・汎用のもの、ウェブもの・センサーもの、いろんな種別があります。業界によってもデータのオープン度や共有度が異なります。まずこれをどう整理するか。

 データの利活用を促進するための法制度、インセンティブ、データマネジメント、そして海外との関係整理を進める必要があります。国がどこまで出ていくのか、ヘタに出ることで止まることはないか、などの見極めも必要です。

 もう一つのテーマ:AI生成物の問題。特許庁ではAIを使った「発明」の保護策、ビジネスモデル、3Dプリンティング・データによる模倣品対策などを議論しています。文化庁では著作権に関する柔軟な權利制限の議論が大詰めを迎えています。

 AIが生成するアウトプットの權利をどう扱うか。世界でもまだこの問題に本格的に取り組んでいる国はなさそうです。日本での議論も、制度としてどこまで関与するのか、進んだり戻ったりしています。
 しかし、いま出せるアウトプットと、引き続き考えるテーマとに線を引いて、そろそろ結論を出さねば。

 いつもより1時間弱、会議を延長しましたが、ここで力尽き、まとめの論議に進むことができませんでした。

 ごめんなさい。また次回。

知財本部・新情報財委員会、終了。

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■知財本部・新情報財委員会、終了。

 知財本部・新情報財委員会、終了。ビッグデータとAIの知財問題と格闘してきました。AI創作物や3Dデータ、創作性を認めにくいデータベース等の新しい情報財について検討を行ったものです。紛糾したものの、なんとか報告書がまとまりました。 
 データ利活用については、データ利用に関する契約の支援、健全なデータ流通基盤の構築、公正な競争秩序の確保の3点を具体的に進めることとしました。
 AIについては、学習用データの作成の促進に関する著作権法 の権利制限、学習済モデルの契約による保護策や特許化の具体的な要件等を検討することとしました。
 最後に座長としてコメントしました。

 昨年の次世代システムでは、主に著作権領域について、AI生成物も含む論議をしました。かなり挑戦的な取組でしたた。しかし、それを通じ2点に直面しました。

1) AIやIoTによる第4次産業革命が国の中心課題となる中で、データそのものの扱いが戦略的に重要と認識されるようになったこと。
2) 著作権だけでなく、特許、営業秘密、契約など知財システム全般にわたる整理が必要となったこと。

その結果、今回も世界に先駆けての挑戦となり、現時点で到達可能な整理ができたと考えます。知財計画2017への反映を通じた国家政策にもちこみたい。知財本部での議論は毎年紛糾するのに、毎年うまい報告がまとまってよかった、となるんだが、報告ではいけない。実行が大事です。

この知財システムは報告書「はじめに」で指摘されているとおり、政府全体の取組とセットでなければならない。特に、IT本部が手がけるデータ流通のインフラ整備と対をなすもの。知財とITの政策連携を望むところです。

報告書「おわりに」には、日本から積極的に提言し、国際的な議論を起こしていくこと。知財制度の根本に立ち返って法体系を見直していくこと。を指摘しています。はじめに、おわりに、に強いメッセージが込められています。

しかし、この議論は専門的で地味なので、我々の議論や認識が十分に世の中に伝わっていません。


第4次産業革命、データ駆動型イノベーションにとって、知財システムを整備することが重要であり、今回こうした整理をした、ということをわれわれ自身がプロモートしていく必要があります。

林敏彦先生を見送って

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林敏彦先生を見送って

 林敏彦大阪大学名誉教授が亡くなりました。4月28日。享年74歳。ぼくがスタンフォード日本センターの研究所長を務めていたころ、理事長として4年間お仕えした上司です。神戸での通夜には「弟子」と記帳しました。棺の先生は、いつものように、穏やかなお顔でした。

 ノーベル経済学賞を受賞したケネス・アローに師事してスタンフォード大学で博士号を取得した理論経済学者でありつつ、通信の競争政策などアカデミズムの公共政策への実践に熱心でした。「現代政策分析」は平易にして要諦を押さえた名著です。ぼくが官僚の頃には既に重鎮としての風格がありました。

 2002年のこと。故・青木昌彦さんが中心となって設立したスタンフォード大学の日本拠点、スタンフォード日本センターが今井賢一理事長・安延申研究所長のコンビから、林・中村コンビへ、通産省系から郵政省系へ交代することとなりました。

 今井・林両大先生との下鴨での初面談には、経済学徒落第の身として緊張して赴きましたが、林先生は芋焼酎のロックにキュウリをたくさん切って入れさせ、「こないしたら体にええねん」とガバガバ飲む。緻密さがみられません。その瞬間から、仰ぎ見る飲み仲間となりました。

 常に笑みでした。優しく、包み込むように、大きな判断をズバッとなさり、豪快な差配をなさいました。そのたびに「先生、軍人でも出世しましたね。」とぼくはコメントしていました。
 
 あれほど美しい英語を操る日本人もいませんでした。国際会議やパーティーでのスピーチはお手のもの。手練のスタンフォードと交渉するメール文も見事で、ぼくはよくコピーして例文集を作っていました。でも普段はベタな関西弁で、ときに「アカデミズムをバカにするやつがおってホンマ困るわ」などと政治への不信を軽くつぶやいたりしていました。

 スタンフォードとの兼務で放送大学の副学長も務められ、大阪大学の大竹文雄教授と3人でテレビ授業を受け持ったこともあります。大竹さんはぼくの京大経済の同期で、林先生は大先輩に当たります。ぼくは自称・弟子ですが、きちんとした数多くの林門下生がアカデミズムの系譜を継いでいます。

 ぼくが林先生としたことといえば、スタンフォード大学というプラットフォームを使って、産学連携プロジェクトを日本に根づかせるための奔走です。京都・岡崎を足場に、あちこち行きました。ぼくがいま慶應義塾大学で続けているプロジェクトの多くも、そのころ種をまいたものです。

 スタンフォード大学に乗り込んでプロジェクト強化策をギリギリと交渉したり、大学がジャパン・パッシングを強めて中国シフトを敷く中、上海でのパーティーにヘネシー学長を追いかけて談判したりもしました。

 出張中、先生と歩いたサンフランシスコの公園がたいへんな賑わいで、しかし進むにつれ様子がおかしい。美しく化粧したオッサンや、下半身まる出しの小太りや、男同士キスしてるやつらがいて、何やらこちらに色目を使ってくる。あ、これゲイのお祭りや、先生ぼくら誤解されてまっせ、と抜け出しました。

 結局スタンフォード大学の方針変更など事情が重なり、センターの研究部門を西海岸に大政奉還して休眠すると先生がスパッと判断なさいました。正しい判断、とぼくも同意しました。そして2006年、ぼくたちはまたそれぞれ別の道に進みました。

 亡くなる直前まで病室で論文を執筆していた先生。スタンフォードの研究所を日本に再興するミッションを帯びたまま、ぼくは先生に成果を見せられずじまいでした。不肖の弟子、恩返しはこれからのことと心得ております。


 合掌。

知財本部・新情報財委員会「はじめに」

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■知財本部・新情報財委員会「はじめに」

 さきごろとりまとめられた知財本部・新情報財委員会報告。ビッグデータとAIの知財問題。「はじめに」に、6段落にわたり重要なメッセージが込められています。ポイントを掲載し、コメントします。

1 大量に集積されたデジタルデータとAIの利活用によって、新たな付加価値と生活の質の向上をもたらす第4次産業革命・Society5.0の実現が期待されている。政府としては「日本再興戦略」において、IoT・ビッグデータ・AIによる産業構造・就業構造変革の検討を主要施策の一つとして

※政府がAIやIoTをトッププライオリティの政策と位置づけたのは正しい認識です。ここに乗り遅れると、失われた25年どころではない閉塞状況となります。

2 「第5期科学技術基本計画」において、・・『超スマート社会』の実現(Society 5.0)」として、AI・IoT等を活用した取り組みをものづくりだけでなく様々な分野に広げ、・・ 産学官・関係府省が連携・協働して研究開発を推進することを決定した。 

※文科省、総務省、経産省などが連携して研究開発に力を入れるようになりました。ただし、国の予算でのR&Dはあくまで補助にすぎません。問題は民間の活動をどう刺激するかです。

3 こうした流れを受け、日本経済再生本部の未来投資会議においては、構造改革の総ざらいを行うとともにAI・IoT等の技術革新の社会実装・産業構造改革を促す取り組み等について検討が行われ、

※社会実装を促す。そう、日本はAI・IoTの生産・開発大国を目指す以上に、利用大国を目指すべきです。AI・IoTの産業化よりも、産業全体のAI・IoT化を促すことで、産業構造改革とイノベーションと競争力強化を図るのがよいと考えます。

4 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT 総合戦略本部)のデータ流通環境整備検討会においては、情報銀行を含め、ITを活用 した円滑なデータ流通・利活用環境の整備について検討が行われている。

※IT本部ではデータ流通・利活用のインフラ整備を進めています。IT政策と知財政策との連携・合体はこれまでも重要な課題でしたが、AI・IoTではますます大事になります。

5 知的財産戦略本部においては、平成27年度に次世代知財システム検討委員会を開催し、AIによる自律的な創作(AI創作物)や3Dデータ、創作性が認められにくいデータベースに焦点を当てて、主として著作権の観点から、知財制度上の在り方について検討を行った。

※昨年の委員会では、著作権法上の柔軟な權利制限規定の策定と、AI創作物の權利について突っ込んだ議論が行われました。骨の折れる委員会運営でしたが、世界に先駆けた重要な論点整理がなされました。

6 知的財産推進計画2016において、「AI創作物や3Dデータ、創作性を認めにくいデータベース等の新しい情報財について、例えば市場に提供されることで生じた価値などに注目しつつ、知財保護の必要性や在り方について、具体的な検討を行う。」等とされた。 

※「新しい情報財」に着目して知財政策を練ることになったのですが、これは従来の枠組みを超えて論点を整理する必要に迫られるものでした。これまで知財本部はコンテンツ系と産業財産權系とを別系統で論議し、最後にドッキングする手法だったのに対し、今回は最初から一体で取り組みました。

7 新しい情報財については、今後、その利活用が小説、音楽、絵画などのコンテンツ産業に限らず、その他の幅広い産業・・にも波及することが想定され、その基盤となる知財システムの構築を進めることが産業競争力強化の観点でますます重要になってきている。 

※つまりコンテンツ=著作権と、その他の仕組み、特許や営業秘密、契約など知財システム全体を陸続きにとらえて検討することになったのです。

8 IoT等で大量に蓄積されるデジタルデータや、AI生成物とその生成に関する「学習用データ」及び「学習済みモデル」などの新たな情報財の知財制度上 の在り方について、・・新たな情報財検討委員会を開催し、著 作権・産業財産権・その他の知的財産全てを視野に入れて、精力的に検討を行った。 


※ということです。

知財本部・新情報財委員会 報告

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■知財本部・新情報財委員会 報告

 知財本部・新情報財委員会。AIやデータ等に関する知財戦略をとりまとめました。

 <<新たな情報財の創出に対応した知財システムの構築>> (人工知能によって自律的に生成される創作物・3Dデータ・ビッグデータ時代のデータベース等に対応した知財システムの検討) という知財計画2016を受けてのものです。

 「データを利活用したビジネスモデルやデータ流通基盤が十分に確立されていないことや、不正利用された場合の対応に関する懸念や不安などを背景に、必ずしも十分なデータ利活用がなされているとは言えない。」というのが背景の認識。

 現行制度上、データは、営業秘密として秘匿する以外には、逆に無制限・無条件で利活用させるしか選択肢がなく、一定の条件で広く利活用が進むことを支援するような法的な枠組みもない。オープンイノベーションが阻害されている可能性があります。 

 検討の結果、3点について具体的に進めることとなりました。
1) データ利用に関する契約の支援:契約ガイドラインの策定等
2) データ流通基盤の構築 :データ取引市場などのデータ流通基盤の中で、利用や利益分配等のルール化
3) 公正な競争秩序の確保 :新たな不正競争行為の対象となるデータや行為について検討

 また、利活用促進のための「権利」についても、必要かどうかを含め引き続き検討することとしました。

 AIについても検討を進めました。機械学習を用いたAIの生成過程の要素(学習用データ、学習済みモデル、AI生成物)について、学習用データの作成に支障があるとの指摘や、多大な投資等を行う必要がある学習済みモデル等の現行知財制度上の保護が不十分との指摘もあったためです。 


 具体的に検討を進めるものとして、学習用データの作成の促進に関する環境整備(著作権法の権利制限規定に関する制度設計や運用の中で)、学習済みモデルの適切な保護と利活用促進(まずは契約による適切な保護について)といった事項が挙がりました。

 AIのプログラムは、当面、現行法とは異なる権利を付与する等は行わず、引き続き技術の変化や利活用状況を注視していくこととしました。AI生成物に関しても具体的な事例に即して引き続き検討することとしました。 


 これを親会に上げ、政府・知財計画2017に反映させていく運びとなります。

知財本部・新情報財委員会「おわりに」

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■知財本部・新情報財委員会「おわりに」

 知財本部・新情報財委員会。報告書の「おわりに」にも強いメッセージを寄せました。ポイントをピックアップします。

1 データ・AIの利活用促進の基盤となる知財システムとして、著作権等の対象とならない価値あるデータの利活用促進のための知財制度、AIの学習用データの作成の促進に関する環境整備、AIの学習済みモデルの適切な保護、AI生成物の知財制度上の在り方について課題と方向性の整理を行った。 

2 本報告書で示した方向性を具体化するためには、検討結果を踏まえ、関係機関において、産業の実態などの把握を更に進めつつ、検討を深め、適切な措置を早期かつ確実に 実施することが求められる。
 ※議論からアクションへ。

3 諸外国の検討状況等を注視しつつ国際的なハーモナイゼイションを取るべく我が国から積極的に発信・提言するなど国際的な議論を惹起することも含めて、 更なる措置を行う必要があるか検討することが求められる。 
 ※この検討は世界に先駆けての取組であり、また、その内容は一国で完結するものではない。日本から海外に発信することが重要です。

4 現時点においては、著作権等の対象でないデータに権利付与をせずとも流通・利活用が進んでいくのか、多大な資金と労力を投じた学習済みモデルや人間の創作的な寄与が少ないAI生成物を保護する新たな仕組みがなくても作成や利活用を促進するうえで支障が生じないかなどを見通すことは困難。
 ※これは正直な心情。来年になれば、前提が変わっていることも考えられます。

5 「デジタル時代において保護すべき創作性とは何か」、「企業間の業界の垣根を越えた連携・協働やオープンイノベーションを前提とした知財制度はどうあるべきか」などといった根本にも立ち返りつつ、必要であれば、時代に即して、法体系を見直していくことも求められる。
 ※法律を見直す、だけでなく、法「体系」を見直す、としています。著作権法、特許法、不正競争防止法などの体系を見直す時期が迫っているのかもしれません。

6 ここ十数年のデジタル・ネットワークに対応したイノベーションが海外主導で進んできたことを念頭におき、・・データ・AIの利活用によって新たな付加価値と生活の質の向上がもたされる環境を我が国が世界に先駆けて実現するにはどうすれば良いのか・・不断に議論を行っていくことが必要。 
 ※委員会で辛口のコメントを発し続けた東大・喜連川教授は、最後にこうした「場」が重要とおっしゃいました。アクションが重要ですが、不断の議論もまた大切。

7 本報告書に示した方向性が政策として実現することにより、データ・AIの利活用促進による産業競争力強化が図られることを期待しつつ、技術動向等を踏まえ、データ・ AIの利活用促進に向けた知財システムを含む議論が継続されることを期待するものである。 
※委員のみなさま、政府関係者のみなさま、おつかれさまでした。

知財本部・新情報財委員会 座長コメント

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■知財本部・新情報財委員会 座長コメント

 新たな情報財検討委員会の報告書のとりまとめに際して、共同委員長の東大・渡部俊也教授とぼくの連名でコメントを発しました。全文コピーします。

 IoTや人工知能の進展に伴う「データ駆動型イノベーション」においては、様々なデータや学習済みモデル、またこれらによってもたらされるコンテンツが、業界や国境を越え、サイバーとフィジカルに跨り、幅広く円滑に利活用される仕組みが不可欠である。

 現在官民挙げて第4次産業革命に向けた投資が検討されているが、これらデータ等の利活用を導く役割を担う「知財システム」が十分機能しないと、データ利活用が進まず、これらの投資が無駄になる恐れもある。

 本委員会では、このような背景から、第4次産業革命に向けた未来への投資を、我が国の産業競争力の強化へ着実につなげていくことを目指し、新たな情報財に関して、「知財システム」面での課題について幅広い検討を行ったものである。

 もとよりこれらの新たな情報財は、それ自身知的財産権制度の対象であるかどうか不安定で、整理された形での保護の対象ではないところ、現行制度の特許、著作権、営業秘密、さらに契約を利用した利活用促進について、産業財産権およびコンテンツの両分野の有識者に参加いただき議論を行ってきた。

 知的財産戦略本部の議論は従来から両分野の有識者をメンバーとした検討を行ってきたが、過去の論点は、2つの異なる分野ごとに比較的明瞭に分かれていたことに比べて、今回の検討は、まさしくこの両分野にまたがる総合的検討が必要であり、幅広い視野が必要とする複雑な議論を必要とするものであった。

 その意味で本検討委員会は、我が国の知財戦略において、はじめての本格的な分野横断プロジェクトとして、意義ある挑戦であったといえるのではないだろうか。

 それはIoTや人工知能の進展が、従来の知的財産制度の垣根を揺るがすようなインパクトを与えていることを如実に示すものであったということもできる。

 この検討委員会の経験は、今後の我が国の「知財システム」についての抜本的在り方の議論や、政府における検討組織、さらには民間における知財部門の体制や組織、そして人材育成の在り方にも大きな影響を与えていくことになるだろう。

 今回の報告書は、その大きな環境変化の過中において、新たな情報財についての先進的な検討を行った結果をとりまとめたものと位置づけられる。
 
 今回の検討内容は、現時点で国際的にも先進的なものであると言える。国際競争力強化の観点から、報告書において最終的に検討を進めるべきとされる事項については、知的財産推進計画2017に盛り込まれ、各省庁により早急な取り組みが行われることを期待したい。

 一方判例法の制度下においては、より先進的で法的リスクの高い試みが行われやすいという点も加味して考えれば、引き続き検討すべきとされた事項についても、今後さらなる状況の進展に合わせて不断の検討を進めていくことが求められるだろう。

 第四次産業革命を乗り切るのに十分な「知財システム」を、早急に確立していくことが求められる中で、今後も不断の検討を続ける必要があるとはいえ、その第一歩を示すことができたとすれば、それは大いに意義あることと考える。

 今回の議論に積極的に参加された構成員の皆様に心から感謝いたします。


共同委員長 渡部俊也、中村伊知哉

知財本部・映画振興会議

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知財本部・映画振興会議

 知財本部・映画振興会議。座長を務めます。東宝、東映、松竹、角川、吉本興業、フジテレビ、講談社などの経営トップ全員集合。とても重た~い。今回は製作支援策と海外展開策がテーマ。

 石原宏高副大臣の説明では、2016年の国内興行収入は2355億円で前年比184億円の増加、入場者数も42年ぶりに1億8千万人を超えたとのこと。この勢いを維持・強化するための施策は何か、との問い。

 内閣府、経産省、文化庁、外務省から映画施策の説明がありました。他のコンテンツ領域に比べれば、けっこう手厚い。総額100億円程度の予算。
 海外展開支援でも3年間のJ-LOP事業で、4700件が採択され、それにより海外売上1585億円増、新規に海外展開した企業は405に上るとのこと。

 しかし、青山学院の内山教授によれば、映画政策予算100億円に対し、フランスは8億ユーロ(1000億円)、ドイツは4億ユーロ(500億円)。実に見劣りがします。

 フランスは映画とTVに3億ユーロずつ配分していて、そのうち53%が自動補助です。審査委員会で選択するスタイルではなく、前作の商業・文化的成果を算定式に入れて次回作への補助金を自動的に決めるシステム。政府が内容にコミットせず客観的・公平な仕組み。

 日本にも企画・制作の支援を考えるのであれば、松竹・迫本社長が唱えるように、政治や政府との距離を気にすることになる、そして恣意性も入り得る仕組みではなく、税制措置等のインフラ的な仕組みがうるわしい。法人税控除、消費税還付、地方税減免など。ただ、これは財務省の壁がぶ厚いです。

 内山教授は流通・興行フェーズの支援として、8Kパブリックビューイングの整備支援を示唆しました。妙案だと考えます。(が、ぼくは利害関係者になるので黙ってます。)また、インバウンド来日外国人対応の映画館を作る案も。アプリとメガネ端末で字幕を見る。いいですね。

 無料型のYouTubeやニコ動が先行普及してきたが、スマホ普及に伴い、定額視聴できる有料動画配信のユーザも拡大、動画配信ビジネスが伸長。dTV(ドコモ+AVEX)、hulu(日テレ)、abemaTV(テレ朝+サイバーエージェント)、LineLive、Tverなど多様な事業者が参入しています。

 2015年にはNetflixとAmazonプライム・ビデオが日本上陸。特に両社とも製作出資でオリジナル作品配信も実施しており、コンテンツ資金の出し手の登場という面で、これまでのような「黒船」扱いではない刺激を市場に与えています。

 映画政策を検討するに当っては、映像産業を取り巻くこうした環境変化を踏まえておく必要があります。映画業界としても、映像・コンテンツというスコープで検討すべきことを自覚している状況です。

 東宝・島谷社長が中国市場の開拓とアニメへの集中を唱える一方、東映・岡田会長はネット活用するに当たって編成権を確保すべく映画界がまとまることを提唱しました。角川会長はスコセッシ監督が日本の俳優を激賞していると言い、プロダクションを集めて国際俳優を育てる施策を求めました。

 松竹・迫本社長は、政策の効果は上がっているものの、省庁タテ割りがネックになっているとし、文化と産業の間をとりもつ「文化情報通信省」の設置を提唱しました。
 その意見、もっと言って!

 萩生田官房副長官(シン・ゴジラの主人公のポジション)は、映画と政治の「間合い」に言及、口をはさまないいい距離に配意することを強調しました。
 施策としては規制改革で活性化させたり、海外展開の障害を取り除く、といったものが中心になります。

 よろしくお願いします。

創造的なんだけど創造的じゃない日本

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■創造的だけど創造的じゃない日本

アドビが4年ぶりにクリエイティビティ=創造性の調査結果を発表しました。
米英仏独日それぞれ1000人の成人、計5000人に聞いた結果。2016年10月の調査。
(グラフは調査データを元に自作したものです。)

前回の結果はこちらに。
Creative Japan」

今回も同様の傾向ですが、チェックしてみましょう。

1. 最も創造的な国は日本
 日本は世界から創造的だと見られています。ありがとう。
 ぼくもそう思います。




2. 最も創造的な都市は東京
 東京は世界から創造的だと見られています。ありがとう。
 ぼくもそう思います。



3. 創造性は社会に価値があるか?
 さて、ここからが問題です。
 日本は創造性の社会的価値を評価していません。日本だけが過半数割れ。



4. 創造性は経済に価値がある?
 そして、日本は創造性の経済的価値も評価していません。



5. 創造性は経済成長のカギ?
 そう考えるのも日本が最下位です。
 日本は創造性を大事だと考えていないのです。



6. 自分は創造的か?
 これが最も深刻なデータ。
 日本は自分のことを創造的だと思っていません。圧倒的な最下位です。



 日本は世界からスゲーって思われています。でも、自分たちは創造性が社会にとっても経済にとっても大事だとは思っていません。そして、自分たちのことを創造的だとも思っていません。

 自分たちの創造性をもっと発揮できるのではないでしょうか。

知財本部・映画振興会議「はじめに」

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■知財本部・映画振興会議「はじめに」

 知財本部・映画振興会議。これも座長を務めました。
 東宝、東映、松竹、角川、吉本興業、フジテレビ、講談社などの社長・会長がずらり並ぶ重たい会議でしたが、何とかとりまとめにたどりつきました。

 しかし大きな問いは「今なぜ映画を語るのか」でした。それを報告書冒頭に記しました。ポイントを挙げます。



 アニメ・マンガ、映画、音楽、ゲーム、放送番組等のコンテンツはクールジャパンを代表する要素・・。このうち、我が国の映画産業は約 2,000 億円の市場規模を有しており、長らくアメリカに次ぐ世界第二位の市場として、世界マーケットの中でもその存在感を示してきた。

 近年、台頭する中国市場にその地位を明け渡すこととなったが、昨年、2016 年には、過去最高の 2,355 億円の興行収入を記録し、また、映画館へ の入場者数が、42 年ぶりに1 億 8,000 万人台を回復するなど、改めて映画の持つ力に注目を集めることとなった。 

 昨今、インターネットを活用した動画配信サービスの登場等により、これまで映画ビジネスを支えていたビデオソフトの売上げが減少傾向にある一方で、動画配信サービスの隆盛など、資金回収の手段たるメディアを巡る状況が大きく変化を遂げつつある。

 我が国人口の減少に伴い、国内市場そのものが縮小していくことが懸念されている。これらの変化に対し、魅力的な作品作りを維持・強化していくことにより、国 内の市場を更に拡大していくとともに、海外展開を抜本的に強化し、資金回収 の基盤となるマーケットの維持・拡大を図っていく必要がある。 

 古くは、ハリウッド映画の世界への発信に伴い、ジーンズや家電といった米国のライフスタイルが世界中に浸透していったことに象徴されるように、映画は、その国のイメージ、ライフスタイルを海外市場において浸透させる力を持つ。 

 近年、政府は、「クールジャパン戦略」を推進し、 アニメ・マンガ等のコンテンツを含むクールの海外への商品・サービス展開、そしてこれを通じてインバウンドの国内消費に結びつけること等により、世界の成長を取り込むべく、官民一体となった取組を行っている。

 映画は、原作(小説・漫画等)・音楽・映像・アニメといった要素を含む総合芸術であり、それが故に、各分野への波及効果も大きい。映画は・・海外市場における先導役としての期待が大きく、映画が浸透していく事に伴って、財・サービスの輸出やインバウンド需要の拡大という拡がりが期待される。

 大ヒットとなった「君の名は。」は、国内でも聖地巡礼といっ た動きをもたらし話題となったが、同様に、中国、韓国といった諸外国でも、日本映画の過去の興行成績を更新する等大きなブームを巻き起こしている。・・日本という国のイメージを変え、日本の存在感を示す力を有していると言えよう。 

 オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典であるとともに、文化の祭典でもある。これを契機とし、映画を我が国が誇る総合芸術として世界に発信し、そして成長産業として更なる飛躍のステージに引き上げて行くことは、・・極めて重要な要素となる。 


 知的財産戦略本部では、上記の認識に基づき、検証・評価・企画委員会の下に、「映画の振興施策に関するタスクフォース」を設置し、集中的な議論を行った。「知的財産推進計画 2017」に反映させることによって、政府の施策を力強く 前進させることが期待される。 

デジタルサイネージ2020

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デジタルサイネージ2020

 「デジタルサイネージ2020」。改めて注目を集めるメディア、デジタルサイネージの基本、実践、近未来を描く書籍をデジタルサイネージコンソーシアムが刊行しました。
 冒頭、あいさつ文を寄せました。


 デジタルサイネージコンソーシアム(DSC)は、設立10年を迎えます。10年前を振り返ると、「電子看板」であった屋外広告は、今やみなネットワークでつながり、屋内の小型ディスプレイも活躍していて、広告だけではない公共的な役割も果たすようになっています。

 その間、スマホやタブレットも普及しました。テレビ、PC、ケータイのスキ間を埋める第4のスクリーンは、サイネージもスマホも入り乱れ、定義も住み分けもうまくできなくなりました。屋内外、大小、その区別なく全てが面的につながったデジタル空間が現出したのです。

 やがてサイネージとスマホの連動がテーマとなり、その中味も、コンテンツの提供から、ソーシャルメディアを介したコミュニケーションへと軸足が動いてきました。デジタルサイネージは、新しいコミュニケーションメディアとして、街の中で確固たるポジションを得つつあります。

 ところが、そのとたん、デジタルの世界は、「スマート」から「IoT」や「AI」へと舞台を変えつつあります。全てのモノがネットでつながり、それが知能を持つようになる。これによってまたしてもデジタルは、街の中での位置づけが問われようとしています。

 デジタルサイネージは、IoTやAIの時代に、どのような役に立とうとするのか。今年は新しいポジションを模索する動きが現れます。そしてその動きは、先進的なサイネージをプロデュースしてきた日本が世界をリードするのではないかと期待するところです。

 注目すべきは日本政府の動きです。総務省が2020年の東京オリンピック・パラリンピックをにらみ、多言語・防災「おもてなし」デジタルサイネージを整備すべく動いています。整備を強化するICTインフラの中でもデジタルサイネージを再重点事項と位置づけて、方策をDSCと連携して練っているところです。

 これは、DSCが発出した「都内1000箇所に3 ヶ国語によるおもてなしサイネージを設けること」「4K8K パブリックビューイングを数万箇所に設けること」といった提言を踏まえての動きです。DSCとしても公益的な責任を果たすべく協力していく所存です。


 昨年、DSCは一般社団法人となりました。デジタルサイネージの一層の発展に向け邁進致します。引き続きご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


※恒例のデジタルサイネージジャパン@幕張、いよいよ6月7日〜9日です。DSC10周年パーティーも開催します。お越しください。
 http://www.f2ff.jp/dsj/
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