■長寿企業こそSDGsのS。
郵便局1871年、MIT1861年、スタンフォード1891年、慶応1868年。
ぼくは150年級の老舗を渡り歩いてきました。偶然です。
で、iUというベンチャーを立ち上げ、150年後を想定し、実装しています。必然です。
故郷の京都で過ごす時間も増え、うろつくのは、
創業200年の漬物屋、300年の団扇屋、400年の手ぬぐい屋、500年のそば屋、1000年の茶店。
150年など青い。100年なぞ子どもです。
老舗経営、長寿企業が気になります。
横澤利昌編著「老舗企業の研究」
田中真澄「百年以上続いている会社はどこが違うのか?」
塩見哲「京都老舗経営に学ぶ企業継続の秘訣」
松岡憲司「京都からみた、日本の老舗、世界の老舗」
その他論文やらこのところ読み漁っています。
いくつか抽出。
100年続く会社を「老舗」として、日本には3万ないし5万社あるとされます。
ダントツ世界一。うち上場企業が532社。
200年企業は3000社強。世界の56%を占める。2位独800、3位蘭200。
1000年企業が16社。独7、英4、伊2、仏1。
長寿は日本の超特徴です。
老舗のうち、
年商1億円未満の中小は41.5%で最多だが老舗出現率は1.69%で最低。
500億円以上の大企業は1.7%で最少だが老舗出現率は15.1%で最高。
業種は小売卸売が45.5%、製造が25.1%。
酒造、旅館が多く、不動産への転業も多数。
出現率1位は京都府4.73%。
際立った特徴は、ファミリービジネスであること。
そもそも日本は事業所の99%、従業員の86%がファミリービジネスに従事し、上場企業の53%が家族経営の国。
老舗のほとんども同族経営です。
経営学は効率的な統治のため所有経営分離を求めるが、それとは違う路線が日本にはあります。
逆にファミリービジネスには、内部管理の効率性、意思決定の迅速さ、長期利益重視というメリットがある。
知人からの低コストによる資金調達や企業モチベーションの高さという点も改めて認識されています。
相山豊さんらの研究は、過去40年間をみると同族経営の業績が非同族を上回ることを示します。
そして「婿養子」という中国にも韓国にもない仕組みが武器として使われ、婿養子経営が同族経営や非同族経営よりも高い業績を見せている。
京都の商家では女の子が生まれると「ええ婿とれる」と喜ぶと聞きます。
もう一つの特徴は、「道」。
商売繁盛よりも商人道を重視する。
質素倹約・誠信義仁という倫理規定を明文化する。
8割の老舗が家訓を持つそうです。
宗教色の薄い社会システムにあって、キリスト教的な慈善=欧米型フィランソロピーでもない経営を維持してきました。
西洋の経営学が説く利益、売上、株主、スピード、シェアという言葉と違い、顧客第一、本業重視、品質本位、理念維持という教えが貫かれます。
石田梅岩の正直勤勉倹約、近江商人の売・買・世間「三方よし」もその礎。
そして社員との一体・家族化、地域との共生、文化芸術へのパトロン志向も強い。
とはいえ、長寿の条件は、進取の気性、革新であるとする点も研究は共通しています。
「老舗企業の研究」は老舗の因子をこうまとめます。
1.求心力:結束(従業員と経営)、堅実(外部資金導入と投資)
2.継承力:後継者教育、創業者一族の意向、地域志向
3.イノベーション力(変革志向、顧客志向)
100年超えの老舗は、敗戦・占領、体制変更、災害を生き抜いた組織です。
疫病やデジタル革命など激動を生き抜く抗体を持ち得る。
サステナブル。SDGsのS。
第一に自らがSであるべきで、企業30年説のアメリカには説得力がありません。
日本は社員・地域と共生し、サステナブルに生きる企業を最も量産する立場をこそSDGs的なるものとしてプレイアップするのがよい。
他国にとって学びになるクールジャパンは長寿企業・老舗経営だと思います。