■ようやく、ネット安全からネット創造へ
これを受けぼくが副会長を務める安心ネットづくり促進協議会(安心協)も議論を開始。ぼくもコメントしました。
安心協発足から13年で政府の取組がネガからポジに転換する。やっとか、という思い。
95年ベルギーの情報G7サミットで「デジタルは子どもの時代」という日本提案が採択され、Jrサミットが第一回東京、第二回がMITで開催された。
それを機に私は役所をやめMITに参加し、PC一人一台運動などを推進した。
しかし日本の取組は遅く、2008年には当時の首相が「子どもにケータイは百害あって一利なし」と発言、デジタルを子どもから遠ざける風潮が広がった。
危機感を抱き、「百利あって一害あり」と考える関係者が集まり、私が世話役となって立ち上げたのが安心協。
発起人会の顔ぶれ。孫さんら通信3キャリアの社長、DeNA南場さんYahoo!井上さんIIJ鈴木さんmixi笠原さん個情委の堀部初代委員長ら。日本のデジタルの代表が一堂に介した。
みなさんの思いは、子どもから遠ざけるのではなく、いかに使わせるかだった。
でも運動論としては、そちらに進まなかった。
私は2年後DiTTを立ち上げ、PC一人一台、学校ネット化、デジタル教科書の3点セットを推進する運動を始めた。ポジティブの運動。
苦労した。8年かかってデジタル教科書を認める法律が成立、プログラミングも必修になった。
PC一人一台はGIGAで実現。コロナがなければあと25年かかる計算だった。
安心協とデジタル教育推進とは本来、一体として進めるべきというのが私の意見だったが、力不足で融合できなかった。
全ての子どもがデジタルで勉強する環境になり、ようやく機運が変わった、と感じており、ようやく一つのゴールにたどり着いた。
問題は今後。デジタルシティズンシップをどう作るか。
学校デジタルは進む。混乱も問題も起きるが、現場と子どもの力を信用し、見守りたい。
政策の重点は家庭に移る。特に格差。家でデジタルが使える/使えない問題。4万の学校から、子どものいる1千万の家庭へと課題が広がる。
教育問題から通信問題へ。文科省より総務省の仕事。通信政策の最重要課題。
セキュリティ、フェイク情報といった守るリテラシーは重要だが、それ以上にクリエイティビティ、コミュニケーション力をつけることが重要。
大人だって身についてはいない。子供のほうが優れている面はある。私も学生に教えてもらっている。子どもも大人も一緒に使い、学ぶ。
ツールは変わる。SNSもmixi/fb/LINE/インスタどんどん変わるので、定まった教育法もない。
紙と鉛筆のアナログ教育も、150年たっても理想の教育はできていない。デジタルでの学習は始まったばかりで、100年たっても理想には届いていまい。
使いながら、時間をかけて、ともに考えていく、という姿勢。
政策目的は「国民のユーザ力」を上げることだろう。とすれば、デジタルが1.役立つ、2.楽しい、3.安全、という順位だと考えるが、3.に偏重してきたのがこれまでの対策。
どう便利さや楽しさを高めるかの政策は抜け落ちていた。
創造力や共感力を上げる施策を厚くしたい。
安心協の根本は従来どおり安心・安全対策でよい。
一方、ポジティブ面の活動を担う団体、企業、学校はたくさんある。
安心協がすべきは、それらとつながり、連携していくこと。安心協としてのコミュニケーション力や共感力が必要となる。