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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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デジタルトラストをどうする

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デジタルトラストをどうする

日経主催「世界デジタルカンファレンス2022」に登壇しました。

テーマ:デジタルトラストはなぜ必要か

NICT盛合志保研究所長、J-CAST蜷川真夫会長、MyMedipro鈴木吉彦代表、MM総研関口和一所長と。

以下、ぼくの発言。





霞が関を飛び出してMITメディアラボにいたころ、関口さんに誘われて登壇した世界情報通信サミットは99年、23年前。

デジタルの機運は盛り上がったが、翌年の政府eJapanが掲げた2大課題、教育と行政の情報化は20年後の骨太方針でも2大課題のまだった。

コロナでデジタル敗戦が認識された。






教育では10年がかりでデジタル教科書が制度化されたが、パソコン普及は途上国以下のままだった。

コロナで予算がついて、25年前倒しして一気に一人一台が達成された。

ようやく教育データ活用が議論されるようになったのだが、データ管理を巡りネガティブな反応があり、すんなり進みそうにない。






政府はデータ標準化、学習履歴利用環境整備というデータ利用促進策を打ち出している。

私が関わる超教育協会も民間の立場から、データ利用ガイドラインの策定などの提言をしている。

PCなどデジタルの導入は10年がかりだったが、データ活用も10年かかるかもしれない。

産官学あげての取組が必要。






他方、私はiUというベンチャー大学を開学。

もはや世界中の授業がオンラインで受講できる中、履修データをブロックチェーンで認定したリストは東大や慶応の卒業証書より値打ちが出る。

教育は学習データが主導するトラストの世界に移行する。

その時代に価値を提供できる大学を設計している。






日本全体のDXは心もとない。

政府はデジタル庁を作って行政DXに力を入れるが、コロナ給付金を間違って給付した山口県の事件では役所と銀行のデータをフロッピーでやりとりしていた。

ネットでもクラウドでもない、AIでもweb3でもない、これが日本の実態。

DXの前に、もっと基本的なことから始めたい。







Q:教育分野でDXが進んだ結果生じた新課題は?

A:データ利用ができる環境となったが、不安1stで、不安を上回る効用・メリットを見える化できていない。

PCやデジタル教科書の導入も漠然とした不安が壁だった。子供が楽しく学ぶ姿や成績アップという成果を見せることが大事だった。

データも同様だ。






Q:ウクライナ侵攻や米大統領選ではフェイク情報が問題とされた。課題は?

A:制度、技術、教育の3つのアプローチがある。総合設計すべき。

データを巡る制度面では、米国がGAFAに管理させているのに対し、中国は国家管理、そしてEUは国家連合による法ルール、という3モデルがあり、日本はどこに寄せていくのか、という局面。






フェイク対策としては、EUはデジタルサービス法でプラットフォーム規制。

米国はフェイクニュース対策委を作る方針が頓挫したばかり。

日本も政府との距離感が問われる。

テレビにはBPOがあるがネットを含む情報空間全体のガバナンスは議論不足。






これに対し、技術面ではAIによるフィルタリングやデジタル流通基盤などがあり、NICTの活躍に期待する。

それ以上に、リテラシー教育の強化が重要。情報やデータへの信頼を見定める力、それができるデジタルとの接し方を学べるようにしたい。





A:政府やメディアが果たすべき役割とは何か。

Q:ルール整備、技術開発、教育など仕事は多いが、その前に、まず政府自ら「データを使う」こと。

FAX廃止など簡単なことから。

オープンデータで民間に「使わせる」ことも。

よろしく。


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