■巨大フジ隊員を登場させたかったからですよね
うんと傑作でした。
同い年の庵野さん。昨秋、新国立美術館での展示で生い立ちを拝見しました。
4つ下の樋口さん。以前、慶応のイベントでご趣味を伺いました。
お二人と、ぼくを構成するものとがぴたり重なり、没入させられた次第。
50年代のゴジラ、70年代の仮面ライダーより、60年代ウルトラへの思い入れが強
烈なのです。
フラッシュビームを持ちたい。
科特隊バッジをつけたい。
星野くんに嫉妬する。
その幸せな記憶はぼくらほぼ還暦だけの特権。そこにビームを当てた讃歌です。
劇中曲だけで高鳴れるのです。
(ややネタバレ注意)
ウルトラQへのオマージュで入ったのも感激。
ゴメスとリトラ、ペギラ、パゴス、マンモスフラワー、ゴーガ。
からの、ネロンガ。
ネロンガ、すき。
ネロンガ、飼いたい。
メフィラス星人が準主役なのは、巨大フジ隊員を登場させたかったからではなか
ろうか。
会田誠さんの名作「巨大フジ隊員VSキングギドラ」がよぎるわけです。
にせウルトラマンも、ザラブ星人も、その添え物ではなかろうか。
あえてスターのバルタン星人もケムール人も登場させなかったのですから。
と理解しました。
無欠のヒーローも敗れる。
ゼットンへの敵意とねじれた畏敬。幼い日のトラウマ。
無力な人間の懸命な反抗。幼い日の希望。
少年に刻まれた心象へのオマージュと、新しい反復。
描き切りました。
これを若い世代や外国人がどこまで正面で受け止めるか。
ネロンガ、メフィラス、ゼットン。
3話に絞った構成は、レッドキング、ピグモン、ブルトン、ゴモラ、ダダ、そし
てジャミラにシーボーズという、残り36話を捨てる潔さでもあります。
ぜいたく、ぜいたく。
シン・ゴジラに比べ、政官の機構が濃すぎず的確に表現されています。
人間と星人とのコミュニケーションにも楽しいリアリティがあります。
肉弾や光線などのアクションも絶品で、エンタメとしてもわかりやすい。
それ以上にぼくは、アングルやショットの実相寺昭雄オマージュのクセがスゴく
て、ニヤつきました。
「製作」の塚越隆行円谷プロ会長とお話。
描き切りましたよねぇ。
「いや、まだ続くよ」
えっ?
「まだつくる」。
うおっ
明日への希望がわいてきました。