■新版超ヒマ社会をつくる9 おわりに
近著「新版超ヒマ社会をつくるアフターコロナはネコの時代」。その一部を、しみ出します。
「おわりに」。
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ネコ2匹と暮らしています。
金さんと銀さん。金色は男。銀色は女です。アンバーくんとシルバーちゃんといいます。
ボストンに住んでいたころ、子供たちの間で大人気だったぬいぐるみ・ビニーベイビーズのアンバーとシルバーを幼い息子たちに買い与えたところたいへん可愛がっておりまして、彼らが独立後こんどは実のネコを自分が可愛がることになりました。
コロナの在宅勤務は巣ごもりを強いるものではありません。いつどこにいてもいい自由を与えるものです。どこにでも住める時代となりました。高度移動社会。アクティブなノマド社会です。
そうなったらなったで、おうちの陽だまりを見つめ直して、ネコと差し向かっている。あまのじゃくが活躍しています。でも、コロナ前からおうちで悠然と根を張っていた彼らが、おうちでは主です。ぼくは従。彼らの時代の始まりです。
おはよう。ぼくが起床すると、のっそりついてくる。じゃれるでもなく、鳴きもしない。興味ありげに5cmまで近づいてくることもあれば、5mほど遠巻きに見ていることもある。
パソコンを打っていると、わざとキーボードの上をゆっくり横切っていく。
「「:。お、7っっctxrぜwq
といった文字が打ち込まれる。コラコラと言ってもどかない。だからといってあっちにいる彼らをおーいと親しげに呼んでもプイと、もっとあっちを向いている。
ぼくを尊敬するでもなく、軽蔑するでもなく。酔っ払ってアンバーをいじると必ずガブリと噛む。吾輩は猫であると主張する。晩いつも酔ってるぼくの腕は傷だらけである。
シルバーは抱っこしようとすると飛んで逃げる。だけどこちらがぼうっとしていると、棒やら玉やらで遊べと求めてくる。腹が減るとやおら眼前に顔を寄せてニャと一声うなる。
ベッドの下なのか浴室なのか、姿が見えず、呼んでも来ないが、家族とアンバー&シルバーの話をヒソヒソしていると、聞いとるで~とばかり必ず悠然と現れる。
かわいい。だけどベランダに小鳥が訪れれば、脱兎と化して近づき、目を見開いてカカカカカと口を鳴らす。バッタやアリを見かけると襲いかかる。野生なのです。二面性がいい。
きみたちは家族であると同時に、目を水平に見つめられる友人でもある。そこで、友人と話すようなことを語りかける。どう思う?ことし阪神は大丈夫か。TOKIOは解散か。日本人横綱はもうムリか。レバニラ炒めとニラレバ炒めはどっちが正当か。どう思う?
わかっている。じっと目を見開いて聞いていることもあれば、不機嫌そうに寝ていることもある。お前の話はつまらんとばかり途中でプイと立ち去る。わかっている。
コミュニケーションの妙手です。気を持たせて、寄ると引く。こちらが引けば、存在を示す。喜ばせたり、怒らせたり。その絶妙の間合いは、ためになります。そのコミュニケーション力、ぼくもコロナ後に活かしたい。教えてください。
おうちでゴロゴロとノドを鳴らしていたら、呆然とする事態が発生しました。
かつて過ごした役所、そしてぼくが担当として作った総務省の大揺れです。業者との会食が国会やメディアを騒がせました。辞職したトップ2名は同期の盟友で、連なる後輩も全員懇意にしています。
ぼくの役人生活は、メディア政策の対象を広げた時期に当たります。電電公社とKDDという独占企業、そしてNHKと民放というごく狭いムラの、小さな行政でした。自由化、規制緩和は、ITやコンテンツの新規参入を増やす運動でした。
役所の客を増やす営業がぼくの仕事でした。走り回りました。官と民がつながる文化をつくる、という点で、今回の案件に対し、ぼくも無縁ではなく、責任の一端があります。
どう思う?先輩はがんばった。がんばりすぎたのかな?NTTや通産省や大蔵省とドンパチやって、橋本行革で解体された。ぼくは責任をとって辞め、総務省ができました。
どう思う?同期・後輩もがんばった。ぼくが辞めたあと評判はよくなり、いいデジタルインフラができました。がんばりすぎたのかな?解体され再編された役所は、デジタル敗戦と同時に、再び叱られている。
どうしよう?アンバー、シルバー、一緒に考えてくれ。
ネコのようなひとになれれば、ストレスは減るでしょう。おまんまと寝床さえあれば、スキな時に寝て起きて、周りの顔色を伺わず、気ままに近づいたり遠ざかったり。いいね。AIとロボットの超ヒマ社会では、ネコのように生きる、がモデルになる。
アンバー、シルバー、どう思う?