Quantcast
Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
Viewing all 1189 articles
Browse latest View live

デジタル教科書の位置づけはどうなる?

$
0
0
デジタル教科書の位置づけはどうなる?

 デジタル教科書教材協議会 DiTTシンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?~2020年導入実現に向けて」@慶應義塾大学三田キャンパス。
 文科省検討会堀田座長、総務省御厩課長らと。

 文科省の検討会がデジタル教科書の制度化を進めるという方向になった、文科省もそのつもりになったのは、DiTTとしても大きな成果です。6年前の運動開始時にはあり得ないと言われていたことです。紙の教科書と同程度の範囲で導入するという整理は、現時点では妥当な落とし所だと考えます。

 ただ、文科省の報告書がデジタルの無償配布を困難と結論づけているのは考えものです。紙の教科書と同様にタダにすべきです。これは文科省というより財務省を攻める案件。教育予算を厚くするよう、民間としても声を高めていきたい。教育情報化を推進する超党派の議員連盟でも同じ声が上がっていますから、そちらからも押していきたいところです。

 教科書の制度化と合わせ、デジタル教科書の制作に関する著作権の整理も必須です。文化審議会での議論が始まりましたので、教科書の制度化と著作権制度の整備のタイミングを合わせるべく、結論を急いでもらうよう、プレッシャーをかけましょう。

 
 一方、端末やネットなどの環境整備も気になります。総務省御厩課長は、おカネのない自治体が教育情報化に力を入れている一方、財政力の最も高い自治体でデジタル教育が進んでいないといいます。財政力の問題ではなく、首長の意識の問題ですよね。

 これに関し、総務省は学校のネット整備に「電波利用料」を使う方針で、来年から3年かけて推進するとの意向を表明しました。地デジ整備に使われていた資金が浮きますから、ぜひ学校インフラ整備に使ってもらいたい。DiTTとしてもパブコメで求めた事項です。実現すればすばらしい。

 総務省は学校のネット整備はwifiだけでなくセルラーの利用も検討するとの意向も表明しました。これも大きい。格安スマホ、MVNO、さらに放送の電波も使って教育ネット環境を整備してほしい。・・総務省、仕事してます。

 ただ、学校のクラウド化は、民間の提供体制は整ってきたものの、問題は学校・自治体の利用側の「不安」。このためには、経産省やIPAにも出張ってもらい、安全対策・セキュリティ対策を強化してもらいたい。


 このほどプログラミング教育の必修化が進んだことも成果です。これも文科省の別の会議座長を務めた堀田先生が、プログラマー育成策ではなく、みんなのICTを使う力と位置づけてくれたことが大きい。プログラミング「を」ではなく、プログラミング「で」学ぶ、を進めましょう。

 デジタル教科書、1人1台端末、学校ネット化を掲げて始まったDiTTの目標も、ようやく着地点が見えてきました。もちろん、その制度化や予算化はこれからですし、定着には時間もかかりますが、まずは成果を総括する時期かと思います。

 同時に、クラウド、ソーシャルメディア、ビッグデータの教育利用をどう進めるのか、著作権処理をどう円滑化するか、プログラミング教育をどう進めるかという、積み残しもあります。DiTTの新しい対応策を練りたいと思います。

 さらに、IoTAI、ドローンやロボティクスといった、次なる教育ビジョンが求められます。教育情報化ビジネスの国際展開もテーマになります。これらのビジョン作りにも移りたいと思います。


 引き続き、よろしく。

東京おもちゃショー2016

$
0
0
■東京おもちゃショー2016
東京おもちゃショー2016。
今年は超かけあしでした。いつも楽しみなトヨタのモデル。

昨年までのメモはこちらに。
「東京おもちゃショー2015」  

日本おもちゃ大賞2016。ぼくがピクッと来たものを挙げます。

エデュケーショナル部門。
パイロットインキ「スイスイおえかき めざせ!どうぶつはかせ おえかきどうぶつずかん」。おえかきしながら動物のことを学ぶ。隠れている動物を探す。


エデュケーショナル部門。
アイアップ「マナー魚(フィッシュ)」。
おさかなの食べ方をパズル遊びで身につける。
このあたりはアナログなやさしい知育おもちゃです。


エデュケーショナル部門。
アガツマ「マイフレンドテディ」。
さて、しかしやはりITやアプリが今年も強い。
50の質問に答えることでその個だけのオリジナルな内容をおしゃべりする。専用アプリでいろんなことばが学べる。


コミュニケーション部門、大賞。
バンダイ「Tamagotchi m!x 6種」。
他のたまごっちや専用筐体との通信で遊びの輪が広がる。たまごっちもITです。

「「死ななくなった」と話題のたまごっち、最新機種は死ぬ仕様へ」


イノベイティブ部門、大賞。
タカラトミー「プラレール スマホで運転!ダブルカメラドクターイエロー」。
運転士カメラ、車掌カメラで捉えた映像がスマホに転送。風景を見ながら運転。
だよねぇ。

これね。
「これが究極? スマホで運転するプラレールは何がスゴいか」


ボーイズ部門。
ハピネット「エアーブレード 360」。
上昇、下降、旋回をスティックでコントロール。
これ、買う。

エアーブレード。これね。


さて、ここから圧巻のシー・シー・ピー3連発。ドローンドローンドローン。
コミュニケーション部門。
「ラジオコントロール オートホバリングドローンカメラ」。
初心者でも簡単に宙返り飛行撮影。進化してるね!


イノベイティブ部門。
「ラジオコントロール ナノドローンカメラ」。
カメラ付き超小型ドローン。

これ。


そして、ハイターゲット部門、大賞。
「赤外線コントロール潜水艦 サブマリナーカメラ」。
昨年シーシービーは同部門で超小型ヘリで大賞を取りました。今年は潜水艦!
これも買おうかなぁ。

あ、盆栽 見逃した。
「最新おもちゃが勢ぞろい! 「東京おもちゃショー2016」ブースまとめ」

少子化で行方が危惧されている業界ですが、このところ好調。
大人向けに市場を開拓している点が他産業の参考になります。
そして決め手はIT。スマホ連動、通信機能、AI、そしてドローンが新しい世界を築いています。

今後は海外展開が課題となります。IT海外はコンテンツ業界とも共通したテーマ。ヨコ連携して進めていただきたい。
「少子化でもおもちゃが売れるワケ」


  (また来年)

政府のAI研究開発、これまでとはちょっと違う?

$
0
0
■政府のAI研究開発、これまでとはちょっと違う?

「3省AI研究開発に関する連携体制」というペーパーが手元にあります。
 総務省・文科省・経産省の3省が連携し、AIに関する基礎研究、応用研究、標準化、人材育成を進めるというのです。

 AIを核としたIoTの社会、ビジネスの「実装」に向けた研究開発・実証を行う。
 各分野でのビッグデータの集積と、センサーの量的・質的拡大=IoTを進める。
 そうあります。

 省庁連携をするということ。AI自体の研究にとどまらず、社会実装を進めるということ。
 字面が示す方向は、よさそうです。
 ですが、ホントに大丈夫なんでしょうか。

 安倍首相の掛け声により、「人工知能技術戦略会議」を設置し、一体的に進めるとのことです。
 安西祐一郎科学技術振興事業団(JST)理事長・元慶應義塾大学塾長が議長を務め、東大総長、阪大総長、理研など主要研究機関の理事長らが名を連ねます。ものものしいです。

 迫力はあるけど、大丈夫か、といういつもの心配がむくむく。

 新聞報道では、20以上の企業との共同開発を進めるため文科省が100億円を要求する、10年で1000億円規模となる、とされています。

 GoogleAppleら巨大企業が年間でそれぐらいの投資をかける分野に、なけなしの税金で立ち向かっていて大丈夫か、といういつもの心配がむくむく。

 第5世代コンピュータの開発は、10年で500億円かけて失敗したという忘れがたい経験もあります。


 しかし、今回の動きは、これまでとは違う。
 文科省研究振興局はじめ担当のかたがたに伺い、そう感じております。
 少し期待を抱かせるものがあります。理由を3点挙げます。

1 抜擢。
 2016年4月、理研に「革新知能統合研究センター」が置かれました。そのセンター長に、41歳の東大教授杉山将さんをあてました。若手に任せる、という意思表示です。

 センターにはカーネギーメロン大学金出武雄さん、国立情報学研究所(NII)喜連川優所長、川人光男ATR脳情報通信総研所長らチョ~重鎮を顧問に据えて睨みをきかせるとともに、杉山さんの下に3040代を中心に気鋭の研究者30名をずらりと配備。

 AIの研究センターには20代がほしいところですが、これまでこうした国策では50代・60代が主体だったのに比べれば、思い切った人事。政府の危機感が現れています。

2 連携。
 3省連携と聞くと、会議体を作って3代表の政務や官僚が握手して形だけ整えるのが常道。だが今回は文科・総務・経産省それぞれの傘下にある理研、情報通信研究機構(NICT)、産総研が連携するといいます。
 研究者がコミュニティを一つにしてくれれば、そして役所がそれを督励してくれれば、力が湧きます。

 かつて第5世代コンピュータ構想を通産省が進めていたころ、郵政省は自動翻訳電話開発構想を進め(ぼくが担当でした)、AI開発にしのぎを削る、というか、対抗していました。タテ割り弊害の典型です。競争に意味はありますが、国のやることじゃないし、そんな余裕もありません。

 今回は本気で手を組む、その姿勢は伝わります。

3 文系。
 JST「社会技術研究開発センター」に「人と情報のエコシステム」領域を定め、AIIoT、ビッグデータなどの技術がもたらす社会問題に取り組むそうです。慶應義塾大学國領二郎さんが総括、土居範久さん、西垣通さん、松原仁さん、村上文洋さんら信頼の置けるかたがたが関わります。

 法律・制度、倫理・哲学、経済・雇用、教育などのテーマに取り組むとのこと。
 AIやロボットが人の仕事を奪う。あるいは事故を起こす。情報の流通が事件につながる。これら社会に漂う不安をどう解消し、あるいは措置していくのか。技術の進展に対し、社会が求めるものは何か。

 AIの開発と併せて進めるべきはこれら文系の知見の総動員です。AIの技術は世界共通でも、社会がどのように受容するかはすぐれてローカルな問題。他国がどうあれ日本が取り組むべき。文理融合で進めようという姿勢に、本気度を見ます。

 JSTのセンターに参加する西垣通さんが経済教室「人工知能の光と影」に、シンギュラリティ仮設や汎用AIなどは西洋の宗教的伝統=絶対神を背景とするものであり、日本が理想的AI像に追従する必要はないとしています。

「大切なのは、自我を持つ汎用AIといった幻を追わず、実用的な専用AIの精神にまい進すること」とも記しています。
 こうした視座を抱えておくことも大切でしょう。

 さて、政府のフォーメーションは揃ったと。問われるのは民間の番かもしれません。この領域、どれくらリスクを取り、コストをかけるのか。政府はやることはやったよ、と。

 もちろん、政府がすべきことはまだまだあります。
 AIIoTを使うに当っての規制緩和。ロボットやドローンがバンバン使えるようにすることです。
 そして官需による市場開拓。まず役所がAIIoTを業務に導入していくことです。

 そこまで本気度を見せていただければ、自然に動き始めるでしょう。

知財立国が危ない!

$
0
0
■知財立国が危ない!
 荒井寿光・馬場練成 著「知財立国が危ない」。
 2003年、特許庁長官を経て知財本部の初代事務局長に就任、多大な功績を築いた荒井さん。2002年小泉首相の知財立国宣言、03年知財基本法公布、05年知財高裁設置。矢継ぎ早に仕事をされました。ぼくも事務局長時代に知財政策に組み込まれました。

 本書は日本の特許・知財分野がいかにガラパゴス化しているか、ショッキングなデータや事例を並べていきます。知財高裁を作った荒井さんがそう指摘するのだから、絶望的です。ピックアップします。

・特許の海外出願率は、米国は51%、欧州は63%。日本は24%で、国内出願が中心。

・特許の分類方式は、米国も中国も韓国も欧州に合わせる方針。日本は日本方式に固執。

・知財訴訟は、中国8000件、米国4000件、日本は200件。
 しかも知財裁判は、世界の中でも珍しいことに日本は減少している。

・賠償判決は、米国も中国も1000億円規模だが、日本は10億円。1/100。
 プロ野球の年俸でも1/5の開きなのに。
 日本は侵害者天国であり、日本で特許権を行使しても無意味。

・訴訟を起こす印紙代は、1000億円の請求だと1600万円。
 米国は350ドル、フランスはゼロ。
 日本では裁判を起こしにくい。

・日本の知財裁判は「勝てない、少ない、遅い」ため、世界に相手にされていない。

・日本企業は知財裁判を日本で起こさず、米国で起こして判例を残す。

・日本は和解決着が多い。裁判所の体質と能力不足による。

・日本の裁判は秘密主義で裁判の日程も書面も不公表。

・企業が国境を越えて裁判所を選ぶ時代となっている。裁判官にも国際感覚、技術、知識が必要。だが米国では12年勤務するところ、日本は2~3年で交代し、専門家も育っていない。

 そして本書は、科学の進歩に新しい問題が発生した時に法律家は適切な発言をしない、という指摘を投げかけます。法学者や司法関係者は、これにどう答えるでしょうか。


 特許の司法はダメっぽいっですが、いくつか元気の出る指摘もあります。
 
 政府の特許事務は、2008年に滞貨が91万件だったが2014年には19万件に減少、あと2年でゼロとなって、出願すれば待たずに審査されるといいます。荒井さんの成果ですね。

 共同研究による特許料の管理で資金を確保・投入する大村智博士の手法「大村方式」を本書は高く評価しています。これが書かれて1年も経たずに大村さんがノーベル賞を授賞したんですよね。

 カップヌードルを発明した安藤百福さんは、インスタントラーメンの特許を開放することによって市場を創出し、世界で最も影響のある食品を創りだした。この実績を本書はモデルとして描きます。そう、評価すべきです。

 クールジャパンはマンガ・アニメ・ゲームだけではない、給食もそうだと説きます。日本には売り物がまだまだあると。同意します。身の回りのものを掘り起こしてデジタル発信するだけで強みを発揮できるものがあります。

 しかし本書はまた、TPPの知財決着を危惧します。競争力を削ぐのではないかと。これも同意します。そして出版後、ヤバい方向で決着しました。トランプさん当選もあり、まだ揺れますが。国内制度の整備と環境の構築に万全を期す。仕事は多いです。


 荒井さん、引退は遠いですよ。

AI・IoT時代に向かう著作権ビジネス

$
0
0
■AI・IoT時代に向かう著作権ビジネス

 音楽業界の会報誌に一文を寄せました。業界のかた向けですが、ご参考まで。


 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)で世間は騒がしい。
 近未来に機械が人の仕事の半分を奪うという研究もあります。囲碁は人よりAIのほうが強くなりました。プロ顔負けの作曲をするAIも現れました。私が座長を務める政府・知財本部の委員会でも、AIが作る音楽などの作品に権利を与えるかどうか、熱く論議されています。

 私が文化審議会の録音録画補償金を巡る議論に参加していたのはもう12年前になります。それから制度は動いていません。
 だが、事態は一変しました。

 当時、PC・ハードディスクとCD・DVDを念頭に置いていた世界のコンテンツ消費は、スマホ+クラウド+ソーシャルからなる「スマート」へと軸を移しました。ビジネスの体重はサブスクリプションやライブへとかかります。日本の業界にも波は来ます。
 そしてAIやIoTなど、メディアは早くもスマートの次のステージに移るというのです。

 だからといって必ずしも危機というわけではありません。

 例えば、音楽。
 若い世代は、スマート化で大量の音楽に接し、楽しむ機会を増やしています。私の世代よりカジュアルで自然に音楽をまとっているように見えます。タダで消費されたりするから商売にとって具合は悪いけど、「音楽」にとってはチャンスなのではないでしょうか。

 西海岸のあるミュージシャンが話していました。欧米なら3コードで済ます曲をJ-POPは何十個もコードを使う。そんな豊かな音楽に憧れる、と。そう、日本の音楽は土壌が豊かで、競争力はあります。技術を使ってこれを世界に展開していきたい。

 そこで著作権をどう考えるか。

 制度を巡る議論は今も盛んです。TPPの妥結で保護期間延長などの措置がとられます。政官ではフェアユースに関する議論も進められています。しかし、どういう結論に至ろうと、さしたることはありますまい。先人の知恵と努力で練り上げられた著作権の制度に多少手が入ったところで、もはや抜本的に環境が変わるという事態は考えにくい。

 それよりも、グーグルやアップルやアマゾンがどういう戦略を取るのか。映像配信サービスはテレビの牙城にどう攻めこむのか。スマート化やAIは若い世代の視聴行動にどう影響するのか。これらは一国の制度などおかまいなしに、著作権ビジネスを根底から塗り替えます。
 
 私はもともと制度屋ですが、今は制度の議論にばかり時間を費やしてはいられません。それよりも、今ある枠組みでいいから、それを使って、スマート時代、AI時代の著作権の世界をどう広げるかにエネルギーを注ぎたい。

 このところ政府もコンテンツ支援に熱心で、海外展開向けの大型ファンドを作ったり、aRmaの設置を進めたり、海賊版対策に力を入れたりと、アクションに重きを置いています。昨年のクールジャパン戦略推進会議では、コンテンツ分野は音楽に焦点を当てた施策が論じられました。いい方向だと思います。

 東京オリンピックを迎える2020年に向けて、東京・竹芝の国家戦略特区にデジタルやコンテンツの産業集積地を作る構想「CiP」が進められています。関係業界が中心となり、政府とも連携して、そこに音楽のデータベースやアーカイブを作るプランも動いています。民間としてもこのような機運を活かして、ビジネス実験、異業種連携、インフラ整備などをできるだけ進めておきたい。


 スマートからAI/IoTへと舞台は動きます。対応次第でチャンスにもなれば、ピンチにもなります。制度を考えている間に、ビジネスは終わってしまいます。先を見通して手を打っておくべき時期でしょう。

スーパーヒューマン誕生!

$
0
0
■スーパーヒューマン誕生!






 稲見昌彦著「スーパーヒューマン誕生!」。
 KMDから東大教授に移った著者が、人間拡張工学、つまり機器や情報システムを用いて、人の運動機能や感覚を拡張することで超人を作る研究を説きます。

 義手義足に代表されるこれまでの技術が、身体の欠損を「補綴」するものだったのに対し、身体をより「拡張」する。人機一体となる。その技術とデザインを描きます。


 現実感をつくる技術としてのヴァーチャル・リアリティとテレイグジスタンス。分身となるロボットやヒューマノイド。ポスト身体性を展望します。

 ぼくと稲見さんは「超人スポーツ協会」の共同代表を務める同僚で、仲間をホメるのは趣味ではありませんが、この本はぼく的には今年のベストになるでしょう。


 研究の系譜をタテ糸に、内外のSFやポップカルチャーをヨコ糸に紡いで、MITはじめ内外の研究・発明を引き合いにしながら難解な先端工学をグイグイと解説していきます。

 SFはWhat(つくりたいもの)を描き、研究はHow(どう実現するか)を求める、と稲見さんは言います。そこで日米のSFやポップカルチャーを丁寧に合わせ読んでいくことがこの本の魅力です。これはぼくが憧れる筆致。新しい書き手が登場しました。

 2001年宇宙の旅、ザ・フライ、インビジブル、ジュラシック・パーク、マルコヴィッチの穴、マトリックス、リアル・スティール、トータル・リコール、サロゲート。やはりこれらは押さえておかなければなるまい。

 ドラえもん、パーマン、攻殻機動隊、エヴァ、サイボーグ009、コブラ、ジャンボーグA、鉄人28号、寄生獣、ゴルゴ13、アンパンマン、デモクラティア。工学の研究者がこれらをつぶさに追うのは大変なことです。

 本書では、刺激的な知見も数多く得られます。
 例えば、思考は身体に規定される。頭の中で早口言葉を10倍の速度で言うことはできない、という指摘。
 —— 確かにそのとおりです。

 ピンク(マゼンタ)は物理世界には存在せず、赤と紫という両端の波長を同時に見ることで脳が感じる色である。人間の感覚は視覚より聴覚のほうが速いのだが、光速と音速の差を脳内で同時になるよう補正している。
 —— そうだったんですね。

 ジョンソン大統領が専用機の温度変化にうるさいので、大統領の手元にニセの温度調節つまみを作ってやったら文句を言わなくなった、自分が調節したら温度が変わらなくても納得したというエピソード。
 —— シアトルの航空博物館に現物を見に行きたい。

 ヒト型ロボットの開発に重点が置かれるのは、人がロボットにしてほしいことを追求するには人が活動する環境に機能を合わせるためだという指摘。
 —— なるほど、ヒト型の開発には、需要面からの必然があるんですね。

 ここで本書は、ウェアラブル機器に電流を流して人の身体を操る研究や、頭にカメラをつけて遠くにいる人がその映像を追体験する身体シェアの研究を紹介します。肉体を遠隔操作し、体験をシェアする。稲見さんは、身体は一体誰のものなのかと問います。面白い。

 玄関の自動解錠、ピアノの自動演奏や空腹時の自動調理などIoTが空想する多くは、透明ロボットの自動操作のようなものだ、と言います。稲見さんは光学迷彩で透明人間を実現したことで有名ですが、身体・感覚の拡張とIoTとがここに帰結するんですか。面白い。

 スマート革命の次に来る、IoT・AIでいま世間は騒がしい。だが、VRやヒューマノイドで身体と感覚とが分離し、人の存在が問われる近未来は、それ以上にゾクゾクするではありませんか。稲見さんの続編を待ちます。いや、けしかけます。

教育情報化を推進するエンジンになります。

$
0
0
■教育情報化を推進するエンジンになります。

 OECDの国際学力調査「PISA」2015年版が発表されました。デジタル教科書教材協議会DiTTが発足したのは、2000年版で数学・科学が1位・2位だった日本がその後大きく順位を落としたことも背景にありました。今回、それらが順位を戻してきたのはうるわしい。

 一方、今回、読解力が低下したことが指摘されています。これに対し文科省は「問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わった」ことを要因として挙げているとのこと。だとすれば、教育情報化の後れが学力の差となって現れたということでしょう。
読解力低下、科学・数学順位は過去最高に 国際学力調査

 教育情報化は待ったなしです。これを推進するため、DiTTはパワーアップ策を進めることになりました。

「デジタル教科書教材協議会DiTTは、パワーアップすることにしました。」

「デジタル教科書教材協議会DiTTの成果」

 そして昨日、DiTT臨時総会が開催され、社団法人化が正式に決定しました。法人化決議に当たり、小宮山宏会長から以下の演説がありました。

「米英、伊仏など混乱が続いている。米国は0.1%が富の30%を保有するなどバランスを欠いている。共産主義は敗れたが、資本主義も限界を見せている。一方、日本は近江商人の三方良し(売り手、買い手、世間)に見られるように、利益最大化ではなく、全ステイクホルダーの幸福を目指してきた。いい社会だ。

 しかし、「遅い」。世界の速さに負けている。思いのある人が「動く」ことが必要。国主導から自律・分散・協調に向かう中、国にも向き合って進む主体が重要だ。

 私は東大総長を終えた後、国の仕事のオファーを10以上断り、自分がすべきことを進めている。学生たちから、小宮山は間違っていると言われてもかまわないが、ウソをついていると言われることはがまんがならなかった。正直に、自立して、正直に、すべきことをしていく。

 DiTTの事務局メンバーの「眼」を見て、理事たちの活動を見て、私も新法人の会長を引き受けることを決意した。DiTTは日本にとって不可欠である。」


 政府・知財計画でのデジタル教科書に関する記載、IT本部等での教育情報化推進の記載、2020年度の一人一台整備の政府決定、デジタル教科書の制度化、電波利用料の活用、プログラミング教育の必修化など、DiTTが提言してきたことが現実となってきており、この分野を先導してきたと自負しています。

 民間企業が本分野のビジネス対応に本腰を入れる一方、先進的に取り組む自治体の首長や全国の学校・先生との連携、超党派の国会議員連盟の結成などの広がりも見せました。このたび、超党派議員連盟は「教育情報化推進法案」を策定することとなりました。設立6年にして、国会、政府、自治体、学校現場、産業界への成果は現れたと考えます。

 それでも日本は後進国のままです。この分野の取組はOECD加盟国中、最低レベルの状況です。いよいよ動き始めたからこそ、この時期に一段の高みに持ち上げなければいけません。国会や政府が動いている中で、改めて民間サイドの姿勢が問われます。

 一昨日、議員連盟の法案策定WGの場で、関連団体からのヒアリングを受けました。DiTTメンバーは事務局サイドで聞いていたのですが、民間の別の教育情報化団体の代表が「紙の教科書をデジタルに移行することに反対する」と強く表明され、驚きました。

 この国で教育情報化を「推進」するエンジンは当面DiTTしかないのではないかと感じた次第です。


 教育情報化の一層の普及と発展を促し、産業の拡大を図るための法人化にご理解をいただき、引き続き業界活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

2020年、ラジオの新挑戦

$
0
0
2020年、ラジオの新挑戦

 民放連パネル「2020年、ラジオの新挑戦」を開催しました。
 パネリストは、メディア研究者志村一隆さん(元WOWOW、Yahoo!)、関西大学三浦文夫教授(元電通、radikoの生みの親)、ニッポン放送吉田尚記アナウンサー。ぼくが司会です。

 ライブドアーニッポン放送、楽天ーTBSの騒ぎがあり、通信・放送融合が話題になって10年。 
 ラジオ広告費は1200億円、ネット広告は1.2兆円。ラジオは1/10になりました。

 テレビはキー局を中心に戦略が多様化しています。日テレはhuluを運営、フジはネットフリックスにコンテンツを提供。テレ朝はCAとAbemaTV。TBSはC Channelと提携。

 ラジオ業界もradikoで魅力が再評価されたり、i-dioが新しい電波ビジネスに乗り出したりと、挑戦が始まりました。


志村さん:アメリカは局数が多く(1.5万局)、市場規模も10数倍(2兆円)。ネット、新デバイス、ソーシャルサービスへの対抗を続けてきたが、「音」というラジオらしさの発揮がポイント。

三浦さん:radikoはラジオ離れを食い止めてきたが、ビジネス拡大はこれから。テレビと異なりラジオは聴取率が貨幣となっていない。タイムシフト聴取、ネット、聴取質などを組み合わせた価値指標が必要。

吉田さん:ラジオ番組をやりながら、ニコ生、twitter、AbemaTVなども同時展開している。ラジオは全メディアと組める媒体。営業トーク「ラジオは最古のSNSだ」。


 吉田さんのパンクな行動は、かつてなら社内を通らなかったでしょう。今やニッポン放送内でOKを勝ち得ているだけでなく、部署も独立して好きにさせてもらってるとか。ニッポン放送もパンクやのう!

 ラジオが全メディアと組めるというのは、組んでもらえる、という面もあります。radikoを音楽業界が温かく迎えてくれたように、テレビはキライでもラジオがキライというタレントがいないように、ラジオは愛されている、という強みがあります。

 まずは、どこからカネを取ってくるか。細ってゆくラジオ広告費を取ってくるよりも、吉田さんが試みるように、ネットと組んで、ネット向け投資の中からカネを引っ張ってくるのが戦略かもしれません。


 ラジオは音の、ナマの、ローカルが強み。という話になりました。自動運転車の音空間だとか、IoTの場ヒモ付き情報だとか、これから広がるデジタル環境にチャンスがありそう。

 ラジオのネット利用については、ケータイの通信制限がネックという指摘も。トラフィックがパンパンな状況はしばらく変わらないでしょう。となると、電波をIT利用するi-dioのようなサービスが注目されます。

 ラジオはコンテンツと電波からなります。コンテンツビジネスにはみな熱心なんですが、「電波を安く使える」メリットもこれからは発揮していいはず。

 志村さんの日米比較に立ち返ると、ラジオの利用率は日38%、米90%とか。それは日本のラジオに潜在能力がうんとあるということかもしれません。


 2020年、ラジオ。暗い話になるかと思ったら、案外、成長産業の香りが漂う議論となり、ほっといたしました。

メディアと自民党

$
0
0
■メディアと自民党


 西田亮介著「メディアと自民党」。
 総務大臣が放送局の電波停止権に言及したり、大物キャスターが番組を降りたりして、政治とメディアの関係が何やらキナ臭い。政治の季節に、押さえておいていい一冊。

 本書は、記者クラブや番記者制に代表される政治とメディアの「慣れ親しみ」が、ネットやソーシャルメディアの時代にどう変化しているか、中でも自民党だけがいかにメディアとの継続的な関係を築いてきているかを描きます。

 2000年、政府がIT基本戦略を策定したころから、自民党は勘による選挙からデータ重視へと移行しました。特に第2次安倍内閣では、プロの手を借りつつ新広報戦略を打ち出し、コミュニケーション戦略チームを内製化していったといいます。

 しかし民主党には、政権時に記者会見のオープン化は図ったものの、自民党のような明示的な広報戦略はなかったそうです。ネット選挙解禁もチャンスがあったのに、実現したのは自民党政権に戻ってからであり、ITへの取組でも遅れをみせました。

 ここで目を引くのが、広報予算に関する記述。2015年政府広報予算は83億円で、各省庁も独自の広報予算を持ち、数百億円規模になる点に着目して、いかに政府・与党がメディアとの関係を強化しているかを分析しています。

 数百億円のスポンサーというのは大きな力を持つクライアントであり、メディアと政治との関わりは権力構造というだけでなく、ビジネスやマネーの観点からも見ておく必要があるでしょう。そしてその影響力は実に大きいのです。政治側はその力を意図的に使い、メディアは黙って使われています。

 政治(自民党)は、メディアやネットに対し明確に戦略的な変化を見せています。国民側は、ネット民が団結してデモを起こし、それは成功とは言えなくても、政治との関わりに変化をもたらす兆しのようにも見えます。

 ここで筆者は「大きく変化していないのがメディア」だといいます。同意します。というより、政権から緩いタマが投げられただけで萎縮してしまう状況は、緩やかな退化に見えます。これに対し筆者は、NewsPicksやSmartNewsのようなニュース配信アプリが「新たな変革者」と見る。期待しましょう。

 本書は放送法に基づく政府関与について、米FCCのような独立行政委員会論や第三者機関である「BPO」の強化策についても言及しています。日本型の現制度と独立委員会制度を巡っては長い論争があり、ぼくもそれを担当した結果、官僚を辞めることになったので、話が長くなるからここでは抑えておきます。

 ただ、その収めどころの知恵としてできたBPOをさらに強化することは、これまた日本型のいい知恵の出しどころです。政治との距離をどうとるか、ネットとの距離をどうとるか、次の宿題として考えるべきテーマでしょう。

著作権法をガラポンに?

$
0
0
■著作権法をガラポンに?

 シンポ「次世代の知財システム構築に向けて」@虎ノ門。
 ぼくが座長となって政府知財本部で開かれていた次世代知財システム委員会の続編を東大喜連川さん、福井健策弁護士、瀬尾太一さん、リクルート石山洸さんとともに開催しました。モデレータを務めました。

 委員会の柱は3つでした。
1) 柔軟な著作権システム
2) AI等の新情報財への対応
3) 国境を越える知財侵害対応
 その結果は知財計画2016に反映されましたが、実にスリリングな議論でした。

 シンポではまず柔軟な著作権システムについて議論しました。権利制限、集中管理、裁定精度、報酬請求権を組み合わせるグラデーションをもった取組という方向性をどうみるか。

 福井さんは、権利制限とライセンスを組み合わせる議論は画期的としつつ、孤児著作物の処理のため、裁定+拡大集中許諾に期待するとのこと。瀬尾さんはアメリカ型フェアユースに反対しつつ、権利と利用の2元論じゃ立ちいかないと指摘。

 権利制限、フェアユース規定は既に文化庁の審議会に場を移し、議論が進んでいます。ぼくも参加しています。次期国会に法案を出すよう知財計画は求めているので、どこかに落とし込まれましょう。

 ただぼくは、それ以上に、知財計画に書かれた「ガイドラインを作る」という約束に注目しています。

 法律は大雑把にしか書かれず、結局その解釈や運用が不透明で、企業リスクが残るという点が問題。じゃその解釈をガイドラインに落とし込みましょうよ。その通説を政府、学者、裁判官、企業、弁護士などで作ればいいじゃないですか。けっこう透明になるはず。


 喜連川さんは、アメリカが旧来の企業からIT企業に力がシフトする中で日本は硬直的だとし、ゲームを変えられる国になるよう強く指摘しました。それは著作権だけではなく、全ジャンルに共通する課題です。

 福井さん・瀬尾さんが共に主張するのはアーカイブの重要性。孤児著作物を巡り欧米がしのぎを削る中で、日本もアーカイブ戦略に注力すべき。権利処理のコストを大幅に下げる必要があります。裁定補償金の措置など、スグにやるべき課題が見えていますね。

 喜連川さんは突然、「オボカタ問題を解く制度を!」と言い始めました。コピー論文をチェックするサービスが合法なのは当然だろう、ところがそのサービスを日本はアメリカから買っている、なんたることだ、と。オボカタさん、恐るべし。

 小宮山・元東大総長が進めた「知の構造化」は、東大の全シラバスを見ても何を教えているかがわからん、わかるようにする、というものだった。だから著作権法も読んでわかるようにしろ、という指摘も喜連川さんから。

 そうなんです。権利制限や集中管理といった課題は2020年あたりには決着しておく。問題はその次世代の制度。1971年にできた現著作権法を50年ぶりに大改正する。これに手をつけたいですね。

 福井さんは、1億総発信社会となり、著作権法がお茶の間法になった。わかりやすくスリム化せよ、と説きます。そして、オプトインの仕組みをオプトアウトに変え、著作物を使えるのが基本、という仕組みにすることを示唆しました。

 瀬尾さんは、音楽のようにきちんと仕組みが動いている分野があることを示しつつ、著作物そのものが多様化する中で、文芸作品やデータベースのような異質なものを一括りで扱うことの問題を指摘しました。いずれにしろ限界、ですね。

 文化審議会の委員を務める著作権制度を専門とする方々からは、制度をガラポンにするという議論は出てこないかもしれません。恐れを知らずそれを唱え、道筋をつけるのが知財本部の役目でしょう。本気でこれに取り組む時期だとぼくも思います。

 10年前の通信・放送融合論議でぼくは、10本以上あった関連法を1本化し、通信放送タテ割りの制度をレイヤ別ヨコ割りに再編する「情報通信法」を主張、ボコボコにされましたが、4年の議論を経てほぼその方向で再編され、1本化はできませんでしたが4本まで法律が減りました。

 それをなしとげたのはメディア環境の変化という客観情勢と総務省事務方の情熱。著作権制度も客観情勢は揃っているので、事務方が死ぬ気になれば、できましょう。


 やりましょう。

ファミコンとその時代

$
0
0
■ファミコンとその時代

 上村雅之・細井浩一・中村彰憲 著「ファミコンとその時代」。
 1998年に実施された産学公のゲームアーカイブ・プロジェクトをもとに記された研究書。推進者である山下晃正・現京都府副知事の名も明記されています。

 MIT界隈で開発されたゲーム技術が米国でブームとなり、アタリショックを経て任天堂が20年の覇権を築く。Vブッシュのmemexやエンゲルバート、アランケイやパパートから紐解くデジタルの進化史が描かれます。
 
 実に面白い。

 ゲーム史は、モノ・技術と、コンテンツ・文化とを掛けあわせ、ビジネスや社会を作ったワクワク感とゾクゾク感の蓄積です。これは超級の資料であり、メディア論の教科書にぼくは認定します。

 AppleやAmazonやGoogleはなぜ日本から生まれないのか?と聞かれることがあります。いやいや、それらはみな任天堂の真似をしてるんです。技術とコンテンツを押さえ、流通を制したモデルです。その流通がネットに変わったんです。

 近ごろ日本企業の失敗論ばかりですが、本書は、なぜ任天堂は、なぜ日本は、レッドオーシャンのゲーム市場を制し、覇権を続けたか、の成功論です。こういうのも読まないとバランスを失します。


 特に、ファミコン生みの親の上村さんが書いた第一部「ビデオゲームの誕生」が貴重です。ぼくがピクっと来たポイントを挙げておきます。

・1964年、シャープとキャノンが電卓用にLSIを開発したことが世界を変えた。
 米アタリ社のブッシュネルが着目し、アメリカに火がついた。
   元は日本企業の技術だったのです。

・アタリに加え、RCA、コレコ、マテルなど米国企業が数々の試作・商品を打ち出した。
 1982年にはLSIゲーム機は14社76機種もあった。
   レッドオーシャンですよね。
   そこになぜ任天堂ら日本勢が入っていったのか、そこがポイントです。

・1982年、アタリとワーナーが提携、
 スピルバーグのレイダースとETのゲームという「約束されたヒット」を開発したが、
 それが大コケ。アタリショックとなる。
   ワーナーの経営責任。
   開発と経営の双方、デザイン・テクノロジとマネジメントが
   揃っていないといけないという教訓です。

・高度な技術ジャンルに対し、日本は家電やPCの企業ではなく、
 子ども相手のおもちゃ会社が主導的に取組み、低価格商品を開発した。
   これは開発より経営の問題ですね。

・任天堂はLSI機は後発で、レッドオーシャンであることを認識していた。
 だが、80年当時、早くも少子化に直面する中で、
 子どもたちがおもちゃよりラジカセに興味を示し、
 市場がハイテクへ動いていることを認識、ゲーム&ウォッチの開発に踏み込んだ。
   市場を見ていた、ということです。

・IBM等のPC普及も始まっていた。
 その中で任天堂は、低コスト+子ども遊び目線+茶の間テレビ目線にこだわって、
 ハイエンド+大人目線+PCの路線から遠い道を行った。
   その仕様の決定に至る洞察にはすさまじいものがあります。

・ファミコンには、ハドソン、ナムコ、コナミ、タイトーらがソフトを提供。
 アタリとの違いは粗製濫造の阻止。
 ソフト企業へのユーザの信頼、ユーザ間の厳しい評価・情報交換、
 流通関係者のソフト評価力、といった土壌があった。

・85年のCESで、コモドール、IBM、AppleらのPC路線を見て、
 家庭ゲーム専用機の市場を確信した。
   気がつけばブルーオーシャンだったのですね。



 米国産のTVゲームが日本で発展し、その後全世界で普及。ゲームはクールジャパンの代表です。またこんなジャンルを生み出してほしい。できると思うんです。本書はその参考書、未来に向けた指南書です。

AIの知財問題、新局面に

$
0
0
■AIの知財問題、新局面に

 次世代知財システムシンポ、続き。
 次世代知財委員会は(恐らく)世界で初めてAI創作物の知財問題を本格議論しました。AIが生むコンテンツに、著作権以外の新権利を与える、創作物登録制を作る、AIに人格権を認める(赤松健さん案)、という案をたたかわせました。

 しかしシンポでリクルート石山さんが唱えたのは、AIが生む創作物ではなく、AIそのものの知財をどうするという問題提起。AI創作物を生み出す「学習済みモデル」の重要性に注目せよということです。コンテンツよりシステム、ということです。

 全体を整理します。
 1) 生データを入れたデータセット
 2) AIアルゴリズム
 3) 機械学習を経た学習済みモデル
というシステムがAIを構成していて、そこにデータを入れることで生まれるアウトプットが4) AI生成物(創作物)。
 委員会は最後の創作物を議論してきました。これに対し石山さんは3)の重要性を訴えた。

 ところがここで喜連川さんは、それらより1)のデータそのものが最も重く、大事なのだと言う。国として守るべきはデータそのものであると。それ以外はどうでもいい存在だと言うのです。

 そして2)AIプログラムだけが、現行著作権法では保護の対象になっているのです。1)データは著作物ではありませんし、4)AI創作物も現状ではそうなっていません。さあどうしましょう。

 トータルの知財の仕組みをどう構築するかがぼくらへの問いです。著作権で保護するのか、あるいは契約に委ねるのか、オープンにするのか。

 それらとは別に、国の戦略としては1)~4)のどこを重視するのか。これまで以上に大きな問いが生まれてしまいました。大変だ。

 ところで4)創作物に関し、福井さんが、AI女子高生「りんな」のつぶやきがコピーされても経済被害はなかろう、AI創作物を保護すべきかは慎重に、との発言中に、喜連川大先生が「りんな毎日つかってる」とつぶやいていたのが衝撃でした。


 さて、3つ目のテーマに移ります。
 国境を越えるネット上の知財侵害について。次世代委員会では、正規版促進、悪質リーチサイト法的対応、悪質サイト広告調査、プラットフォーム対応検討、ブロッキング検討、といった方向性を示しました。喫緊の課題として踏み込んだつもりです。

 パネル前にドワンゴ・川上さんがプレゼンしました。FC2動画という米登記の日本企業は、創業者が指名手配中で、削除申請には応じることなく徹底抗戦する素晴らしい会社だと。そういうのに国際対応するにも、国といえど消費税や刑事がやっとで、時間がかかると。

 川上さんは、サイトブロッキングしかないと言います。英仏韓など世界40か国が導入していて、日本は児ポのみ認めているが、それを広げるのは可能であり、簡単なことだと。

 これに対してはパネラーも異論はありませんでした。喜連川さんは、ネット創成期に性善説で広げようとした状況は今や変化しているとし、ブロッキングは当然だと言います。この空気感を制度に持ち込むことが問われている。制度担当者は、腹をくくらねば。


 さて、このシンポは、政府委員会の番外編で、気楽に討論したのですが、しかし、もはや次の知財本部のラウンド協議に入り込んだ風情です。次ラウンドの司会役をぼくが務めるかどうかは存じませんが、見えてきたテーマからすると、次も、大変です。


 やりましょう。

超人スポーツハッカソン3

$
0
0
■超人スポーツハッカソン3

第3回 超人スポーツハッカソンを開催しました。慶應義塾大学日吉キャンパスにて。
5チームが新スポーツを開発しました。

前回やったときの模様はコチラ。
超人スポーツハッカソン

超スポハッカソン。
最優秀賞:スライ・ド・リフト。
ドリフトのできるオムニ電動車イスを開発。コース上の得点ゾーンをドリフトで通過する競技です。
車イスで誰でもドリフト、というパンク。


車イスという介助機具を拡張遊具にするというもの。
ドリフトする車イス。
って、思いついても、手間と時間とコストをかけて、それを作っちゃうのがステキ。


優秀賞:超ホッピング。
ゴムで宙吊りになって、ボールを相手陣地に入れる。子どもでもOK。浮遊感バンザイ。
ボルダリングに応用すると面白そう。


優秀賞:Wheelchair Shooting。
落ち葉を空気で掃除する装置を使って、ピンポン球を相手の網に撃ちこむ車イス競技。
車イスの人がものを投げるのは難しい、という実態から着想したという。
車イスの人も健常者も対等に撃ちあう愛。

車イスじゃなくても、ローラーがついた事務用のイスとか、ほふく前進とかで、オフィスでパンパン撃ち合いたい。


Augmented Style 100m。
4本足で走れば、ボルトより速くなれる。目指せチーター。問題はわれわれは足より腕が短すぎること。そこで腕に拡張装置をつける。みんな、今日から4本足で走るぞ。


バブルランナー。
水の上を走る。風船に入って。走れば、VRが走路とゴールを見せてくれる。コインを取ると、速くなったりするんだって。
これでやっと水の上を走れるようになる。

水上を走る。宙に浮かぶ。4本足や車イスで走る。超人スポーツは陸海空を制覇しました。


超人スポーツは、TechとPopという日本の強みをスポーツで示す。世界展開するが、日本を本場にしたい。そうなる。ことを確信させてくれるハッカソンでした。

反省、2016年。展望、2017年。

$
0
0
■反省、2016年。展望、2017年。


 いつものとおり、2017年を始めるに当たって、2016年を振り返ります。

 「City」「Cool」「Convergence」3本柱のプロジェクトです。

1 CITY
 Pop & Techの街づくりをするプロジェクトです。

1) CiP 

  港区竹芝にデジタル・コンテンツ産業集積特区を作る「CiP」。Pop Tech 特区CiP。昨年、一般社団法人「CiP協議会」を設立し、2020年度の街開きに向け進んでいます。
 通信、放送、IT、音楽、アニメ、ゲーム、お笑い、広告、商社、VC、学校など50社・団体が参加し、内閣官房、内閣府、総務省、経産省など政府とも連携しています。
 国家戦略特区として総理大臣の認定を受けており、テストベッドを構築します。既にアーティストコモンズ、サイネージ実験、世界オタク研究所等のプロジェクトが走っています。
 京都・沖縄等の都市、スタンフォード大学、ロンドン大学、マレーシア・イマジニアリング研究所、韓国政府・コンテンツ振興院など海外との連携も強化します。
 http://takeshiba.org/

2) 超人スポーツ
 身体と技術を融合させ、人機一体の新しいスポーツを開発する「超人スポーツ」。稲見昌彦さん・暦本純一さんとぼくが共同代表、南澤孝太さんが事務局長となって昨年「超人スポーツ協会」を立ち上げました。
 新スポーツの開発・普及を進め、2016年秋には第一回競技会「超人スポーツゲームズ」を開催しました。国体会場であった岩手県とも連携して、岩手ご当地超人スポーツの開発も行いました。TBSが中心となってドローンレース選手権を開催するなど、ビジネスの開発も進めています。2020年には超人スポーツ世界大会を開く街を整備したく存じます。
 http://superhuman-sports.org/

3) Tokyo Crazy Kawaii  
  マンガ、アニメ、ゲーム、ファッション、食、雑貨などなど、クールジャパン業界の総合力を海外に発揮するビジネス
カルチャーイベント。実行委員長を務めます。NIPPONのカワイイを世界各地でローカライズしていきます。昨年はバンコクで開催しました。次回を企画中です。
 http://www.crazykawaii.com/



2 COOL
 ポップカルチャーの世界展開やコンテンツの開発を進めるプロジェクトです。

1) Artist Commons
 アーティストに固有のIDを付与し、コンテンツやグッズ、ライブ等の情報を展開しやすいようにするプロジェクト「Artist Commons」を音楽業界と進めています。
政府クールジャパン戦略にも明記され、CiPをベースに展開しています。経済産業省の支援を得て、データベース作りをスタートさせました。
 http://bit.ly/1kiqzyj

2) アニメマンガビジネス
 日本動画協会「アニメビジネス・パートナーズフォーラム」。アニメ等のコンテンツ分野がパートナービジネスを開発する活動に協力しています。CiPではこれを横展開させ、出版等の分野のビジネスマッチングを進めます。
 クリエイター、教育機関、関係業界とともにマンガ・アニメ人材育成カリキュラムの策定にも携わっています。これもCiPとの連携を強化する計画です。
 内外のマンガ家と関連企業が集う「海外マンガフェスタ」。昨年も高橋陽一先生らと東京で開催しました。
 http://abpf.jp/
 http://kaigaimangafesta.com/

3) 京都国際映画祭
 吉本興業が主導する「映画もアートもその他もぜんぶ」のイベント、京都国際映画祭。昨年からぼくが実行委員長に就きました。京都の街を広く使い、他のどこにもない祭典にしていきます。先輩格の沖縄国際映画祭との連携も深めてまいります。

4) 世界オタク研究所
 国際オタクイベント協会IOEAとCiPが連携し、世界オタク研究所を設立する構想を進めています。世界各地で開催されるオタク系イベントの動員数は年2000万人にのぼるそうです。そのエンジンたる各国の研究者による総本山を創る。経産省の支援を得てスタートさせています。

5) 政府コンテンツ政策
 内閣府・知財本部では座長として、次世代知財システム、コンテンツ海外展開強化、アーカイブ利活用促進などを柱とする知財計画2016を策定。世界に先駆けてAIの知財問題に取り組みました。2017計画に向け、新世代知財委員会の委員長を務め、AI問題を深掘りするほか、映画振興委員会の委員長も務めます。
 「クールジャパン戦略推進会議」では竹芝・CiPがモデル拠点とされ、クールジャパン官民連携プラットフォームも設立されました。その活動に参加・協力していきます。

6) その他

◯政府・オリンピック・パラリンピック参与
 内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部政策参与という長い名前の職を遠藤利明大臣のもとで務めました。引き続きオリパラ活動に貢献したく存じます。

◯NHKクールジャパン
 日本のクールを発信しつづける番組、12年目に入ります。「ハイテク生活」「部活」「猫」「ゲーム」「ボランティア」の巻に参加しました。まだまだネタはあります!

◯ LIVEな生き方
 ITを駆使する現場を訪ねるBSフジの番組、メイン司会を務めました。スポーツ、サーカス、自動車、医療、さまざまな先端を紹介しました。



3 CONVERGENCE
 メディア融合や新メディア開発を進めるプロジェクトです。

1) デジタルサイネージ
 社団法人化したデジタルサイネージコンソーシアムを軸として、2020年に向け、多言語・防災おもてなしサイネージとが国家課題と位置づけられ、総務省2020年ICT懇談会の場で方策づくりが続いています。これを推し進めます。総務省の実証実験にもCiPとして参加・協力致します。

2) 4K8Kパブリックビューイング
 4K8Kはじめ超高精細映像パブリックビューイングの施設整備も総務省が推進しています。その推進母体として、2016年5月「映像配信高度化機構」を設立、ぼくが理事長に就きました。NHK、NTT、NTV、スカパーJSAT、ソニーなど会員17社によって、実証開発や普及促進に努めています。

3) IPDC/スマート放送
 放送の電波に通信技術であるIPを乗せるサービスを開発するIP Data Casting(IPDC)。代表を務めるIPDCフォーラムとともにCiP特区でのメディア融合実験を企画しています。TFMグループが進めるVlowマルチメディア放送もCiPでの通信・放送融合実験を計画中です。民放連でぼくが座長を務めるネッド・デジタル研究会でもこれら企画を論議していきます。
 http://www.ipdcforum.org/

4) IT政策研究会
 スタンフォード大学アジア太平洋研究センターAPARCとの共同でIT政策に関する研究を進めています。日米の政府・企業関係者とともに政策の整理をします。
 http://www.itpolicy-roundtable.net/

5) その他

◯ ネット炎上
 ネット炎上対策を講ずるプロジェクト。会長を務める社団法人ニューメディアリスク協会とともに、事例調査、啓発教育などの活動を進めています。

◯ オープンデータ
 オープンデータ対策を進めます。VLED(社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構)に協力し、普及啓発に努めています。
 http://www.opendata.gr.jp/


4 参考 

1) デジタルキッズ
 CANVAS石戸理事長率いるデジタルキッズは強力に進んでいます。国際デジタルえほんフェアの開催も決定。学校での必修化が政府決定されたプログラミング教育に関し、プラットフォーム「Computer Science for ALL」も開設しました。

2) デジタル教科書
 デジタル教科書も大きく動きました。文科省はデジタル教科書の制度化に動き、総務省は電波利用料の活用に踏み出すなど、DiTTが提言してきたことが実現に向かっています。超党派の国会議員によるICT教育議連も「教育情報化推進基本法」の策定に動き、ぼくらDiTTも後押ししています。
 これを受け、DiTTは社団法人化を決定、プログラミング教育、情報リテラシー教育や教材の著作権処理などを活動に組み込み、パワーアップする予定です。2017年は教育情報化の新ステージです。

3) KMDフォーラム
 慶應義塾大学メディアデザイン研究科KMDのイベント「KMDフォーラム」を今回担当し、11月に三田キャンパスにて開催しました。
 テーマは「2020年、ポップ&テック」。ポップ、テクノロジー、教育、ビジネス、スポーツ、デザインなどの最先端の人物を招きつつ、2020を問いました。
 お越しいただいた主なかたがた:ライゾマティクス斎藤精一社長、シン・ゴジラ樋口真嗣特技監督、XJAPAN SUGIZOさん、ホリプロ堀社長、吉田沙保里さん、遠藤利明前オリンピック大臣、伊藤達也元金融大臣、福田峰之衆議院議員、吉本興業木本公敏さん、サニーサイドアップ次原悦子社長、C Channel森川亮社長、夏野剛さん、水口哲也さん、谷田光晴さん、筑波大学落合陽一さん、政策大学院大学牧兼充さん、東京大学稲見昌彦さん、一橋大学石倉洋子さん、板尾創路さん、おかずクラブ、トータルテンボス、はんにゃ、タケト、大西ライオン、イシバシハザマ、もう中学生、デッカちゃん、内閣官房、内閣府、総務省、経産省、文科省代表。マンガ家、起業家、子どもたち、学者、学生、ドローンパイロット、力士、着ぐるみ軍団、女子着物集団など。もちろん稲蔭正彦、古川享、石戸奈々子らKMD教員も。みなさんどうもありがとう。
 http://bit.ly/2i9AsRV

4) 企業経営
 mixiの社外取締役を辞任しました。吉本興業の社外取締役に就きました。スペースシャワーネットワーク、保育最大手のJPホールディングスの社外取締役は継続です。



2020 Tokyoが放送に求めるもの

$
0
0
■2020 Tokyoが放送に求めるもの

 ぼくは産学連携プロジェクトに打ち込む政策屋なんですが、たまには研究もしろよと叱られます。ぼくにも研究の場を与えてくれるありがたい機関の一つが民放連研究所。客員研究員を務めています。

 2期4年にわたり放送の研究をしてきました。1期目は「スマートテレビのゆくえ」。通信放送融合からスマートテレビへと移行する放送の技術・サービス・産業を追いました。

 日本は92年に初めて通信放送融合が政策論になったのですが、2006年の米IT業界主導の世界展開に乗り遅れ、その後のスマートテレビ勃興期には黒船来襲という騒ぎになりました。

 が、インフラ面やメディアリテラシーという日本の特性を活かしたサービスが放送側から現れ、放送からITへの攻勢も見られるようになります。現在のHulu、Netflix、AbemaTV等の対応に至ります。

 2期目は「IoT時代の放送を展望する」。1)ウェアラブル=インタフェースの進化、2)IoT=受信機の多様化、3)AI=放送の自律化、という一連の技術変革がテレビに与える影響を探りました。

1) ウェアラブルは、HMDやVRと放送コンテンツの結合、常時装着するディスプレイへの放映、時計などのデバイスから発せられる生体情報の放送利用、という点に注目。

2) IoTは、ドローンの利用、クルマやロボットなど向けのIoT放送、街中のカメラやセンサーからの情報の番組利用、ビッグデータの活用、という点に注目。 

3) AIは、番組リコメンドや番組自動生成への期待。

 そして、それらのテストベッドとして、デジタル特区CiPの可能性を考えました。電波特区によるIoT放送とか、スマートデバイス向けIPDCなどです。


 第3期となる今期のテーマを「レガシー・テレビ:2020 Tokyoが放送に求めるもの」としました。スマートテレビと、IoTの実像を結ぶ2020年にテレビはどうするのか、それが未来に遺すものはあるのかの分析です。

 2020に向けてのスマートテレビとして、まずはネット配信の本格化が「IP放送」やスマホ・ファーストをどこまで進めるかの検討です。

 さらに、4K8Kパブリックビューイングとスマホ連動や、3D立体放送による五輪観戦の拡張を考えます。
 
 IoTの進化では、ドローン中継がどんな現実性や可能性を見せてくれるか。ドローン五輪と呼ばれる活躍を見せられるかどうか。そして、ポケモンGoが示してくれたARの可能性をテレビが取り込めるか。


 この検討は、五輪とメディアとの関わりの中で紐解いてみたいです。

 まずは1936年、ベルリン。リーフェンシュタール「民族の祭典」とナチス・プロパガンダからでいいですかね。

 36年ベルリンは、ラジオ世界中継の五輪でもあります。NHK河西アナによる前畑がんばれの連呼と鉱石ラジオの結合が示した未来。

 40年幻の東京大会をはさんで、60年ローマはテレビ録画中継の開始。欧州では18カ国で生中継されたそうです。2012ロンドンでは220カ国に広がりました。

 64年東京は、カラーテレビ、そして衛星による世界中継として歴史に刻まれています。

 84年ロスの商業主義を結節点とし、96年アトランタはIBMやCNNを軸とするデジタル戦略が前面に出ました。マルチメディア実験がアメリカで盛んに行われたころです。

 98年長野はネット普及期、2000年シドニーがデジタルカメラ全面導入。でもまだネット中継はなく、せいぜい文字ベースでの実況でした。

 2012年ロンドンで全競技のネット生配信が実現。スマホとソーシャルが連動したスマート五輪でもありました。ネット五輪ないしスマート五輪の称号はロンドン、と言っていいでしょう。

 2016年リオはどうだったでしょう。4K・8K五輪の称号は差し上げていいでしょう。そのほか何か新機軸の匂いがしましたか? ロンドンの延長、と総括してよいでしょうか。

 そして2020東京。どんな場になるべきでしょうか。
 IoT五輪、AI五輪、VR五輪、AR五輪、ドローン五輪、ロボット五輪。
 それとも。


 これを観察しようと思っています。ただし、まだ研究の構想段階。大幅に変わる可能性アリですが、やってみます。

デジタル十大ニュース2016、投票開始

$
0
0
■デジタル十大ニュース2016、投票開始

ノミネートは15件。

・ポケモンGO 配信開始
・PS-VR発売 VR普及元年
・保育園落ちた日本死ねブログ炎上
・LINE流出でセンテンススプリング
・メディア予想大外れイギリスEU離脱/トランプ氏当選
・AbemaTV ネットテレビサービス普及
・チケット転売問題勃発
・邦画大ヒット「シンゴジラ」「君の名は」
・4K出揃う。リオ五輪8K生中継も。
・プログラミング教育必修化へ
・Google AI アルファ碁、人間に勝つ
・PPAP YouTubeから大ヒット
・マルチメディア放送i-dioスタート
・キュレーションサイトの閉鎖ドミノ。
・ソフトバンク、ARMを買収 IoT本番へ

惜しくもノミネート次点となったのは以下の5件。
・Sharp買収
・黒船か福音か Spotify日本上陸
・フィンテック商戦加熱
・Apple Pay開始
・高速道路でディープ・ラーニングを利用した屋外広告実験に成功

投票はこちらから!

結果は来年2月10日(金)赤坂にて開催の「デジタル新年会」で発表します。
250名程度のデジタル、コンテンツ、IT業界のパーティー。
こちらへのご参加も受け付けております。



ちなみに、過去5年の十大ニュースは以下のとおりです。

◯デジタル十大ニュース2015
1. ネットが暴いた五輪ロゴパクリ問題
2. 首相官邸にドローン落下ですぐ規制
3. AI・IoT狂想曲
4. Apple、Google、AWA、LINE、サブスクリプション本格化
5. マイナンバー制度開始
6. DSにWii、任天堂岩田社長が逝去
7. 自動運転、グーグル、アップルなどの覇者争い
8. VW、不正ソフト利用で排ガス規制逃れ
9. ペヤングvsゴキブリ、販売停止と復活劇
10. オンライン学習サービス、いよいよ本格化   
  総数20695票。


◯デジタル十大ニュース2014
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/02/2014.html
1位  LINEで決闘:「決闘罪」が適用される
2位  論文コピペ発覚で大問題~STAP細胞はあります~
3位 プログラミング教育 本格化
4位 ウェアラブル機器続々:GlassやらWatchやら
5位 非実在小4、どうして解散するんですか?を問う
6位 3Dプリンター事件:銃とかわいせつなものとか
7位 ベネッセ個人情報流出
8位 ロボットPepper登場。ロボットペットも復活。
9位 角川ドワンゴ統合
10位 mixi モンストで大復活!
  総数10109票。


◯デジタル十大ニュース2013
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/02/2013.html
1位 バルス祭り 14万tweet 世界記録塗りかえる
2位 特定秘密保護法とNSA通信傍受
3位 3Dプリンター低価格化で身近に
4位 オープンデータ進展
5位 冷蔵庫に入る若者たち~炎上相次ぐ
6位 ホリエモン出所
7位 あまちゃん・半沢直樹、テレビの底力
8位 4K8K/Hybridcast次世代テレビに期待感
9位 大阪市・荒川区・武雄市が2015年度までに子どもにタブレット配布
10位 ウェアラブル・コンピュータ時代到来か


◯デジタル十大ニュース2012
 http://ichiyanakamura.blogspot.com/2013/01/2012_26.html
1位 どないしてん日本家電産業
2位 LINE8000万人、無料通話ソーシャルサービス戦国時代へ
3位 違法ダウンロード刑罰化
4位 コンプガチャ問題
5位 炎上大国ニッポン:市長も社長も教育長も
6位 ソーシャルなデモ多発:原発やら反日やら
7位 遠隔操作ウィルスで警察手玉に取られる
8位 アノニマス大暴れ!ACTAとか霞ヶ浦とか
9位 スマートテレビ始動:放送、通信、メーカーの本格対応
10位 ビッグデータは宝の山?


◯デジタル十大ニュース2011
 http://ichiyanakamura.blogspot.com/2012/01/2011_14.html
1位 スマートフォン急激に普及 上半期出荷台数は1000万台超
2位 スティーブジョブズ氏死去
3位 復旧作業や安否確認にソーシャルサービスが活躍
4位 通信・放送融合法制が施行
5位 震災後 TVのネット配信が一時実現
6位 facebookの加入者 日本で1000万人突破
7位 タブレット端末 各メーカーから出揃う
8位  地デジ、被災三県除き整備完了
9位 DeNA野球参入に楽天が反対
10位 サイバー攻撃相次ぐ

岩手ご当地超人スポーツとは!

$
0
0
■岩手ご当地超人スポーツとは!
「岩手発・超人スポーツプロジェクト」。「ご当地超スポ」開発プロジェクトの発表会が盛岡で開催され、4種目の新スポーツが発表されました。今年、岩手国体が開かれることもあり、この地がご当地超スポ第一号として手を挙げたんです。

超人スポーツは2020年の世界大会に向け、これまで10種目ほど開発が進められています。ただ超スポは、スポーツと技術と文化のかけあわせ。となると、地域ごとに異なる文化に根ざしたスポーツがあるはず。今回はその第一弾です。

その1、ロックハンドバトル。知事賞を獲得。岩のような大きな腕を装着し、腕どうしをぶつけて、腕についた小岩を落とす。悪鬼「ラセツ」にとりつかれた人を浄化する、という地元・三ツ石神社の伝承がモチーフ。


岩の手だから岩手、いや逆か、この腕が10kgあって、闘う超人感がハンパない。岩手大学+慶應義塾大学の学生たちの混成チーム。


まずはマンガ家志望の学生がマンガを描き、その世界観をスポーツに転化したものです。超スポのポップカルチャースポーツ開発という志向をやりきったところがおもしろい。


その2,マタサブロウ。手元の装置で空気を噴出=ブロウして、大玉を浮かしつつ、操縦して運ぶ。宮沢賢治「風の又三郎」をこう解釈したか。どっどどどどうど。


ポータブルなブロウの装置と、大玉のヘリウムガスの密度に開発の苦労があったとか。ゆるいようでいて、キラリと光る技術。どどうどどどう。


その3、クライミング・ザ・ウォールズ。壁のベルトを腕だけで動かし、2人で速さを競う。チーム名「壁人間」。これ、スグ商品化できる。株式会社「壁人間」を作り、1台400万円で来年10台売るところから始めよう!


その4、トリトリ。3機の小型ドローンでゴールを目指す。守る側は大型ドローンがぶらさげる網で、小型機を捕まえる。サッカーのPK戦のような競技。「銀河鉄道の夜」に登場する「鳥捕り」という人物の具現化。


首相官邸にドローンが落ちて、東京では大きいドローンを飛ばす規制がキツくてやりづらい。岩手なら知事の前で堂々とできる。ここでドローン名人を育てましょう。そしていずれ、首相官邸前でこの競技を開催しましょう。

シンポも開催。達増拓也岩手県知事、ふじポンさん、稲見昌彦超スポ共同代表・東大教授、南澤孝太超スポ事務局長・KMD准教授とともに登壇しました。どの種目も、超人度、スポーツ度、地元度が高く、参加されたみなさんに感謝です。


学生、先生、企業のかたがたが混成チームを作って開発と改良を重ねる。その活動を岩手県庁=行政がバックアップする。ご当地超スポのこの成功は勇気を与えてくれます。「岩手メソッド」と言っていいでしょう。


2020にはオリとパラに並び、超スポ世界大会を開きたい。それは東京でなくてもいい。岩手に超スポスタジアムを作ってもらえませんか?と言ったら、達増知事は「そうしましょう!」と断言。言ってみるもんだね!

達増知事によれば、観測史上初めて東北に上陸した台風10号の被害は甚大で、通常なら国体も返上かという状況だが、東日本大震災を経験し復興中ということもあり、なんのこれしきとふんばっているとのこと。みなさんに頭が下がります。


岩手発の超スポ開発。今回の成果を正式種目にまで練り上げていただくとともに、新種目を開発し続けてください。そして近未来、あの動きは岩手から始まったんだよね、と言われるようになってください。お願い申し上げます。

ネットの公共政策を共有する仕組みを

$
0
0
■ネットの公共政策を共有する仕組みを

年末、DeNAのキュレーション(まとめ)サイトで、不正確な内容や著作権侵害の疑いが発覚した問題に端を発し、サイバーエージェント、リクルート、KDDI等のサイトでも終了・公開中止が相次いでいます。

今回のキュレーション騒動には思うところがあります。グレーな領域のビジネスを進める新興企業の責任と世間や制度との折り合いをどうつけるか。その繰り返しがやまないな、と。

10年前の青少年ネット安全のときも、5年前のコンプガチャのときも、同様のIT企業群が同様のビジネス展開で同様の対処を求められました。みんなでやって、一線越えて、バシーンといかれるパターン。

ただ今回は行政介入ではなく、界隈のネット系のかたがたが糾弾した点が異なります。行政の動きがない分、油断が過ぎ、コトが大きくなってしまった面もありましょう。

青少年のときは安心ネット協やEMAを、コンプガチャのときはJASGAを作って、民間の自主規制で乗り切ろうとしました。ぼくはそれらに参加して、調整に汗をかきました。今も乗り切る努力が続いています。業界の自浄能力を示すことが重要でした。

炎上対策もしかり。2012年に「ニューメディアリスク協会」(炎上協会)を作って官民連携策を進めたのも、同様のアプローチでした。

今回は各社が独自にサイト閉鎖などの対応を見せてましたが、業界としての対策も求められましょう。国会や行政も問題視するでしょうし。

例えば業界が本気でこの著作権問題をどうにかすべきと考えるのなら、ユーザの訴訟費用を業界として補填する基金を積んだっていいじゃないですか。

あるいは訴訟に至らない事案を扱うADR的な仕組みを業界として整えたっていいじゃないですか。

(キュレーションの自主規制団体設立をぼくが進めるという噂が立って、取材申し込みもありました。いえいえ。業界の飲み会で、そういうことを、もうぼくじゃなくて、誰か若い人やんなさいよ、と言っただけです。)

シェアリングエコノミーも似た局面にあります。シェアリングエコノミーは業法的にグレーな領域でみんなの資源を活用するビジネス。グレーだからこそうま味がある一方、問題の発生も予期され、自主規制など民間の対応が求められるとともに、政府との連携策も検討されています。

これは民間サイドからの求めもあり、政府IT本部に設けられた委員会で議論が進められました。いい対応でした。

しかし、こうした個別の問題に、個別の業界対策や自主規制を施すのではダメなのかもしれません。ネットの重要性はこれからも高まります。こうした個別の問題がこれからも発生するでしょう。その総合対策を考える場面でしょう。

ネットを使ったビジネスの問題は、いわゆるIT企業だけでなく、ユーザ企業のITシフトが高まるにつれ、関係者の範囲が広がり、課題も拡散していきます。だからワンストップの解決法が定まりにくいことは承知しています。

しかし、だからこそ、こうした対策を機動的に打てるように、通信会社やIT企業のおおどころが公共政策を共有するともに、政府とも向き合う、総合的な民間の仕組みが求められます。緩い協議体でもいいので、お願いしたいところです。


今回の一連の問題に対し福井健策さんは「情報革命と言われる社会の必然的なコスト」ととらえる。そのコストをどう抑えるか、ぼくらの知恵が問われます。

CEATEC2016

$
0
0
■CEATEC2016
CEATEC、行ってきました。前年までのIT・家電展から、IoT展へとコンセプトを大きく変更。前年531社今回648社、前年1609コマ今回1710コマと規模も拡大し、日立もトヨタも帰ってきて、何やら元気が戻った空気でした。

ちなみに前回(まで)のぼくのCEATECメモ。昨年はIoTをうたいながらも、まだ具体的な形が描けてはいませんでした。今年はずいぶん像がハッキリ。
「CEATEC2015」


特別展示「IoTタウン」では、タカラトミー、楽天、MUFJなど異業種の初出展企業がショッピング、仮想店舗、スポーツ、ロボットなど10件の展示。IoTは「提供より利用」という姿を描いてみせました。今後のプレイヤーの広がりを予感させます。

楽天はネット情報と店舗や消費者の生活をつなぐ展示。タッチパネルに本を置くと、登場人物や地名などを表示。カメラで表紙を識別し、ネット上から情報を取得する仕組みも。本以外にも、置いた食材を使ったレシピや商品のレビューなども紹介できる。


タカラトミーの出展はいいね。モノにITが埋め込まれるIoTの先端はオモチャであり、世界に競争力を発揮するのがその日本の業界だと思います。「JOY!VR 宇宙の旅人」でスマホ+VRのコンテンツを展示してました。


MUFJが出展。フィンテックがCEATECに店を構えるのは当然でしょう。他の金融機関はどうなの、と思います。三菱はさらに進んで、人型ロボット「NAO」も展示。三菱東京UFJ銀行成田空港支店で活躍している様子を再現。


旭化成のようなIT外の企業が参加しているのが魅力。次世代衣料「スマートウエア」で売り込みを図るといいます。電線として使える伸縮素材「ロボ電」は、ゴムのように伸び縮みするため、衣服の生地に縫い込んで生体情報などを送るといいます。


ぼくらの「超人スポーツ」も出展しました。スポーツとIT、スポーツとIoT。新しい成長分野を作ります。よろしく!


人機一体のモータースポーツ、キャリオット。ドリフトする車イス。岩手県のハッカソンで生んだ腕バドルなど。みなさん、ご覧いただきありがとうございます。


超人スポーツの一つ、meleap社の「HADO」。ARを使ってスマホのHMDをのぞき、腕につけるモーションセンサーを動かして、手からかめはめ波のようなものを発してモンスターやプレイヤー同士で戦います。


HADOはハウステンボスなどテーマパークでも既に導入されています。世界に進出していただきたい。


ところで今回はサイネージでの展示が目につきました。IoTはデジタルを溶け込ませるものですが、溶け込んだら見えなくなるので、逆に「見える化」がカギを握る。なるほど、IoTとサイネージは好相性。デジタルサイネージコンソーシアムが会員増を見せているのはそのせいか。


パブリックビューイングでは8Kが活躍しますとばかりのNHK。ハイブリッドキャストから8Kに体重移動ですね。ぼくが理事長を務める映像配信高度化機構も世話になっております。が、画面の写真撮影ダメというので宣伝は控えます。


村田製作所。腕や脚に小型センサーを貼り付けて、ゴルフのスイングを分析するウェアラブルシステム。加速度・ジャイロ・地磁気センサー、無線通信モジュール、ワイヤレス給電を内蔵した小型デバイス。姿勢の問題点などが指摘されます。


オムロンは今回も巨大卓球マシン。京都企業、プレゼンス高い。


トヨタ、2年ぶり。しかも、ロボットで。
人型コミュニケーションロボット「KIROBO mini」、39,800円、2017年発売予定。


シャープは今年もRoBoHoNくん。接客、観光案内、見守りの3ソリューションを展示。


そしてシャープは同時にAIとIoTを駆使した「AIoT家電」を提案しています。
いろんな家電や住宅設備をつないで、音声対話で一元的に操作できるそうです。

パナソニック「IoTが変える暮らしやビジネス」。
普段はインテリアに溶け込む透明ディスプレイ。SAKE&WINEセラーが庫内にあるお酒の情報やお酒にあったレシピの提案などを行なえます。


ウィンドウAR。
家電の雄であり、デジタルサイネージコンソーシアム副会長のパナソニックは、IoTで家電とディスプレイをつなぐ時代を迎え、ちょいとウキウキしているように見えました。

(おしまい)

いよいよ来るか、放送IP

$
0
0
■いよいよ来るか、放送IP

 民放連デジタル・ネット研究会でFCIニューヨークの渡邊卓哉さんからアメリカ放送局の事情を伺いました。

 アメリカ放送局の課題は、CM収入の堅持、ネット配信のマネタイズ、国際展開の3点だそうです。これは日本と同じですね。

 全米放送協会NABの今年のキーワードは改めてIP(Internet Protocol)だったそうです。「放送システムのIP化」がいよいよ来る、と。

 放送局のIP化は、放送システム(制作・送出)、ネット配信、営業・ビジネス・経営モデル、の各レベルがあるが、いよいよ本丸の放送システムに来たというのです。

 放送の伝送にはSDI(Serial Digital Interface)という映像信号フォーマットが使われてきたが、それをまるごとIPに移行させる。放送と配信を一体化するシステムにする。クラウド化する。そういう動きです。

 通信の世界が電話からネットへ、交換機からルータへ、回線交換からパケットへと20年でシステムが総替えになろうとしているのと同じです。

 中でも米ABCがシステムのIP化、クラウド化を進めているとのことです。移行期には設備投資がかさばるが、その後のコストは格段に下がる。総コストが半減するという見方もあります。ABCが成功すれば各局なだれを打つでしょうか。

 放送システムがIPでクラウドにアウトソースされると、放送も配信もVODもソーシャル対応も一体的に扱われる一方、放送局はもはや放送局ではなく、制作・編集のコンテンツ局になる。その覚悟と戦略が問われているということです。

 アウトソースせず自らシステムを抱え、ハード・ソフト一致を貫く戦略もあるでしょう。だけどたぶんそれは、専業に任せるハード・ソフト分離よりコストが高く、セキュリティにも不安が残る選択となるでしょう。

 もちろんその波は日本にも来ます。これは、20年前の通信・放送融合、10年前のネット融合、5年前のスマートテレビとは比べ物にならない津波。日本の放送局はどう立ち向かうでしょう。

 実はこのテーマは日本でも道理のわかった放送人はかなり研究を深めていますし、メーカも本格営業をかける構えです。ぼくが代表を務める「IPDCフォーラム」でもぼちぼち空気が流れています。

 通信・放送融合は、番組のネット配信が重要テーマでした。いま当然のように行われていることですが、かつては放送局のビジネスモデルを壊すものとして、議論することさえ敵視されていました。

 まして、放送のIP化というのはシステムを塗り替える話。10年前のいわゆる総務省・竹中懇談会でも、「All IP時代の放送」を念頭に議論がなされましたが、テレビ業界から強い反発がありました。ネット展開を進めた業界にとっても、機微に触れる恐ろしい未来だったわけです。


 しかしこういうシステム技術の変更は、必然の方向に進むものであり、通信に対するインターネットがそうであったように、動くときは急速です。しばし動向に目を光らせましょう。
Viewing all 1189 articles
Browse latest View live