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Channel: Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
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コンテンツ政策の新展開、しばし目が離せません

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コンテンツ政策の新展開、しばし目が離せません



コンテンツ・著作権に関する政府の会合が立て続けです。

知財本部デジタル著作権タスクフォースが中間とりまとめを行い、それを受け文化庁でDX時代の著作権勉強会、知財本部でコンテンツ小委員会が開かれました。

通信・放送融合の著作権法改正が国会で審議されるタイミングで、その次なるデジタル戦略論です。


ぼくは知財タスクフォースの報告をしました。--

政府内の調整が決着せず中間報告ということでひとまず幕引きとなった。

権利処理に関し、拡大集中許諾や補償金付き権利制限などの選択肢、具体論を巡り調整が難航したため。

ただそれは、委員が自由な議論を許してもらった結果でもあり、議論には意義があった。


ここ数年の著作権行政は大きな成果を上げている。

2018年の柔軟な権利制限、オンライン教育。2020年の海賊版対策。現在上程中の放送ネット配信。

デジタル化への大きな宿題をだいたい果たしたのではないか。その仕事を評価すべき。

今回のタスクフォースは、ではその次の課題は何か、を放談するもの。





タスクフォース報告の前半は環境変化について。

デジタル化でコンテンツの流通・消費・創作環境が激変し、プラットフォームが市場を支配する。

さらに、コンテンツがデータ発生源で中間財になる、コンテンツが経済バリューの中心になる。

コンテンツだけをとらえた政策は誤る、という認識を示した。





後半の対策は、拡大集中許諾など一元的権利処理が最も議論となり、政府内調整も大変だった。

それ以上にその他の項目が大切。

UGCのガイドライン、権利データベース、制作の取引適正化、そしてソフトロー重視といった法律以外の手法による問題解決が著作権政策として、より重要になっている。







さらに今回、議論を通じて感じたのは、もはや大きな環境変化の中では、著作権法という枠の中で部分解を求めても最適解には届かない、という点。

IT政策や通信・放送政策を含む、ソフトもハードも含む、より大きなメディア政策、情報政策の枠組みで考える時期に改めて来ているということ。

(以上、報告。)






コンテンツ小委の議論を紹介しておきます。

ホリプロ堀さんが、日本は韓国にも敗れた状況なのにコロナの中エンタメが不要不急扱いされている、という危機意識を表明。

テレビ東京太田さんも、配信などメディアが多様化する中、権利処理が複雑で利益も得られない危機感をあらわにしました。



そして海賊版に関し、大きな危機感が共有されました。

著作権法改正とキャンペーンでダウンロード型は減少したものの、コロナの1年で被害が増大。

タダ読みされた金額はかつての漫画村に並び、史上最悪を更新する。

今はみなベトナム系で、対応しても閉鎖に至らない。

という報告がありました。



政府は、著作権法改正に加え、国際連携・執行の強化、アクセス警告方式の検討、発信者情報開示制度の法制度整備など厚い手を打っています。

民間も出版業界が社団法人ABJを設立し対策に力を入れています。

それでも状況が悪化するのは由々しき事態です。






そこで改めてブロッキングの議論が起こりました。

林委員は、ブロッキングは海外でほぼ採用されており、欧州も英、西、伊に加え独が制度を開始する点が重要と指摘。

川上委員も、政府は現状を重大と認識しているのか、ブロッキング以外の手段で抑止できると考えているのか、その認識を正しました。






ブロッキングの政府決定がちょうど2年前。それから激論を経て総合対策ができ、着実に手を打ってきた。けれどコロナ巣ごもり需要もあり、新たな事態です。

ブロッキングは「他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討」とされ、再検討の可能性も残ります。


これらを踏まえ、先般、知財計画2021が正式決定。次の政策実行に向かいます。

コンテンツ政策の新展開、しばし目が離せません。


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