■もっと光を:プロヴァンス、コートダジュール
輝度が大事だって言うんです。精細度より。アメリカの会社の人が。あたし、そんなこと思ったこともなくて。だって、そうでしょ。HDとか。4Kとか。ううん。となりの奥さんなんか、宅はもう8Kよ。なんて。くやしいじゃないですか。それなのに、キドなんて。
って宇能鴻一郎で始めてみましたが、そうなんです。輝度を高めた映像は、精細度を上げた映像以上に鮮明で、驚く視覚効果を得ます。そんな映像会社のプレゼンに接し、うなっておりました。日本は精細度を競い、地デジから4K8Kへと突進する勢いですが、映像の進化はこのままタテに進むのがいいのか、ヨコはどうなのか、ちょっと冷静に考えてみたい。
ということもありまして、もっと光を、とのゲーテ最期の言葉、人類の見果てぬ思いではありましょう。もっと光を求めて、南フランスのプロヴァンスとコートダジュールへ、来てみました。旅日記です。
マルセイユ。濃紺の海、濃紺の青。間にぽっこりと浮かぶ島は岩肌がベージュで間抜けです。このイフ島はモンテ・クリスト伯の舞台。そんな歴史より、2016年、欧州サッカー選手権はこの地です。W杯、日本は全敗でも帰国する選手にごくろうさんムードですが、フランスは8強でもすこぶる不満。特にここはジダンやカントナを生んだ町であります。
マルセイユは20年ぶりなのですが、前回はコルシカ島に向かうトランジットで立ち寄ったのみ。じっくり訪ねるのは初めて。
4年前にラ・ロシェルの島を訪ねた際、「『冒険者たち』-36年の宿題」というブログを書きました。中学生のときに見た映画のシーンをジジイになってたどってみた記録です。
http://ichiyanakamura.blogspot.fr/2010/08/36.html
マルセイユに踏み込んだのも、そんなジジイの映像追憶。
ミッシェルはマルセイユで車を盗んでゴダール「勝手にしやがれ」は始まります。「気狂いピエロ」のフェルディナンが爆死するのもマルセイユとカンヌの間、ポルケロール島なんですよね。リュック・ベッソン「Taxi」の舞台もマルセイユ。最近では、レア・フェネールという女性監督の驚愕の初作品、「愛について ある土曜日の面会室」がマルセイユでした。
しかと歩きまわりました。でも、ミッシェルやフェルディナン、どっちもジャンポール・ベルモンドですが、どちらもクルマが大事なアイテム。あやかってクルマで繰りだそう。
エクサンプロヴァンスからアビニョン、ポンデュガール。光に満ち、熱が降り注ぎ、水があふれる地。ローマ時代から中世を経て、文明を継いできた地。 --- アビニョンの橋って、狭くて踊りにくい。
ローマ水道ポンデュガールは、いつの間にか観光地になっていました。子どもたちが文明の発掘と水流とを学ぶワークショップ会場。遺産を学習に転化するのは正しいね。
プロヴァンスからコートダジュールへ、海岸線を東に進みます。ニースです。光が強まった気がするのは、エクサンプロヴァンスのセザンヌより、ニースのデュフィの印象がぼくには強いからかもしれません。デュフィのことは長くなるので、別途。
でもマチスもシャガールもルノワールも、光を求めたからこそコートダジュールに居ついたわけで、その光のおすそ分けはいただきます。
ニースから少しカンヌに向かえば、カーニュ・シュル・メールにルノワールの庭があります。ジル・ブルドス監督「ルノワール」の舞台になった場所ですね。知らぬ間にずいぶん美しい美術館に変身していました。
そこから山に向かう。サン・ポール・ド・ヴァンスはシャガールが住んでいた村。天国に近づきます。
ニースのシャガール美術館は、ほぼ天国です。
さらに山に向かうと、マチス礼拝堂のあるヴァンス。ここはデュフィもたくさん描いています。より天国に近い。
これもニースにあるマチス美術館は、ほぼ天国です。
逆側にアクセルを踏む。すぐにイタリア国境だ。その直前、やおら斜面に高層の建物群が現れたと思えば、眼下の港に突っ込む道路は急なスピンを求める。こえ〜。モナコです。モンテカルロのGPコースです。一周のコースには19のコーナーがあり、レーサーは4000回のシフトチェンジをするとか。あり得ない。
目的地、モナコ海洋博は、他のどこにもない、光と装飾の粋でありましたが、そこに行き着くまでの過程は、ほんのり死を覚悟させました。だけどモナコのGPで死亡事故はわずか2件と現地人は胸を張る。まぁ、張っていいのかもしれない。
「勝手にしやがれ」のミッシェルも「気狂いピエロ」のフェルディナンも、ぶざまに死にます。そしてぼくらに残ります。このあたりでは、年老いた画家が光を浴びるならいいけど、若いのが暴れるのはまずいのかもしれません。
以上、報告まで。
輝度が大事だって言うんです。精細度より。アメリカの会社の人が。あたし、そんなこと思ったこともなくて。だって、そうでしょ。HDとか。4Kとか。ううん。となりの奥さんなんか、宅はもう8Kよ。なんて。くやしいじゃないですか。それなのに、キドなんて。
って宇能鴻一郎で始めてみましたが、そうなんです。輝度を高めた映像は、精細度を上げた映像以上に鮮明で、驚く視覚効果を得ます。そんな映像会社のプレゼンに接し、うなっておりました。日本は精細度を競い、地デジから4K8Kへと突進する勢いですが、映像の進化はこのままタテに進むのがいいのか、ヨコはどうなのか、ちょっと冷静に考えてみたい。
ということもありまして、もっと光を、とのゲーテ最期の言葉、人類の見果てぬ思いではありましょう。もっと光を求めて、南フランスのプロヴァンスとコートダジュールへ、来てみました。旅日記です。
マルセイユ。濃紺の海、濃紺の青。間にぽっこりと浮かぶ島は岩肌がベージュで間抜けです。このイフ島はモンテ・クリスト伯の舞台。そんな歴史より、2016年、欧州サッカー選手権はこの地です。W杯、日本は全敗でも帰国する選手にごくろうさんムードですが、フランスは8強でもすこぶる不満。特にここはジダンやカントナを生んだ町であります。
マルセイユは20年ぶりなのですが、前回はコルシカ島に向かうトランジットで立ち寄ったのみ。じっくり訪ねるのは初めて。
4年前にラ・ロシェルの島を訪ねた際、「『冒険者たち』-36年の宿題」というブログを書きました。中学生のときに見た映画のシーンをジジイになってたどってみた記録です。
http://ichiyanakamura.blogspot.fr/2010/08/36.html
マルセイユに踏み込んだのも、そんなジジイの映像追憶。
ミッシェルはマルセイユで車を盗んでゴダール「勝手にしやがれ」は始まります。「気狂いピエロ」のフェルディナンが爆死するのもマルセイユとカンヌの間、ポルケロール島なんですよね。リュック・ベッソン「Taxi」の舞台もマルセイユ。最近では、レア・フェネールという女性監督の驚愕の初作品、「愛について ある土曜日の面会室」がマルセイユでした。
しかと歩きまわりました。でも、ミッシェルやフェルディナン、どっちもジャンポール・ベルモンドですが、どちらもクルマが大事なアイテム。あやかってクルマで繰りだそう。
エクサンプロヴァンスからアビニョン、ポンデュガール。光に満ち、熱が降り注ぎ、水があふれる地。ローマ時代から中世を経て、文明を継いできた地。 --- アビニョンの橋って、狭くて踊りにくい。
ローマ水道ポンデュガールは、いつの間にか観光地になっていました。子どもたちが文明の発掘と水流とを学ぶワークショップ会場。遺産を学習に転化するのは正しいね。
プロヴァンスからコートダジュールへ、海岸線を東に進みます。ニースです。光が強まった気がするのは、エクサンプロヴァンスのセザンヌより、ニースのデュフィの印象がぼくには強いからかもしれません。デュフィのことは長くなるので、別途。
でもマチスもシャガールもルノワールも、光を求めたからこそコートダジュールに居ついたわけで、その光のおすそ分けはいただきます。
ニースから少しカンヌに向かえば、カーニュ・シュル・メールにルノワールの庭があります。ジル・ブルドス監督「ルノワール」の舞台になった場所ですね。知らぬ間にずいぶん美しい美術館に変身していました。
そこから山に向かう。サン・ポール・ド・ヴァンスはシャガールが住んでいた村。天国に近づきます。
ニースのシャガール美術館は、ほぼ天国です。
さらに山に向かうと、マチス礼拝堂のあるヴァンス。ここはデュフィもたくさん描いています。より天国に近い。
これもニースにあるマチス美術館は、ほぼ天国です。
逆側にアクセルを踏む。すぐにイタリア国境だ。その直前、やおら斜面に高層の建物群が現れたと思えば、眼下の港に突っ込む道路は急なスピンを求める。こえ〜。モナコです。モンテカルロのGPコースです。一周のコースには19のコーナーがあり、レーサーは4000回のシフトチェンジをするとか。あり得ない。
目的地、モナコ海洋博は、他のどこにもない、光と装飾の粋でありましたが、そこに行き着くまでの過程は、ほんのり死を覚悟させました。だけどモナコのGPで死亡事故はわずか2件と現地人は胸を張る。まぁ、張っていいのかもしれない。
「勝手にしやがれ」のミッシェルも「気狂いピエロ」のフェルディナンも、ぶざまに死にます。そしてぼくらに残ります。このあたりでは、年老いた画家が光を浴びるならいいけど、若いのが暴れるのはまずいのかもしれません。
以上、報告まで。